第10話 ある人族の組織の機密会議と猫。
「これより会議を開始する。」
「さて…今回の議題だが…勇者の件だ。」
「勇者…?ああ。あの実験体か。」
「ああ。勇者につけた洗脳魔法が解けた。」
「ふむ…?たしかあの魔法は解除の条件がない禁忌の魔法を使っていたはずだよな?なら、勇者が死んだってことだろ?良かったじゃないか。」
「うむ。しかし…戦闘が激しかったのか魔王城が爆発。我らの調査部隊が確認。そして、遺体と所持品の捜索をした。が…」
「が?」
「聖剣ヴィレルナルの行方がわからなくなっている。」
「なんだと!?所持する5本の聖剣の中で最強のあの聖剣が!?追尾魔法のための目印があったはずだろ!?」
「魔王と勇者…化け物と化け物の戦いのせいであたりの魔力が荒れ狂っていて魔王城付近から探知することはできなかった。」
「ふむ…なら、ここから探知したのか?」
「もちろん。ですが…やはり魔力の波長を捉えることはできませんでした。おそらくですが、戦いの中で巨大な魔力と魔力のぶつかり合いのせいで吹き飛ばされてしまったのかと。」
「むう…そうか…他の聖剣の適合者は?」
「微妙なところです…洗脳は完了していますが、いかんせん戦闘力が…」
「そうか…うまくはいかんな…」
「勇者自身にも装置は埋め込んでありましたが…こちらも信号が途切れています。」
「ふむ…損害は大きいが魔王を葬れただけでも良しとするか…魔王軍の状況は?」
「現在魔物の攻勢が激しく防戦一方ですがNo.3『賢者』を援軍として送りました。」
「なるほど…広範囲殲滅力に特化したやつか…」
「そちらは問題ないでしょう。次は…」
男たちの会議は進んでいく。それを聞いているものがいるとも知らずに…
そして、会議が終わる寸前。
「にゃぁ〜」
猫の声が聞こえた。
「うん?猫の声…?」
「猫…?おかしいですね…小動物すら通さないほどの硬い警戒網があるはずですが…」
と、参加者たちが困惑していると…一人の男が青ざめだした。
「猫……?思いだした…」
「どうした!何を思い出した!」
「もしかしたら嘘かもしれないが…ある噂を耳にしたことがある…」
「噂…?」
「ああ…猫の声が聞こえるとき…その組織は破滅だ…って、噂だ。」
「たまたま…ということはないんですか?」
「それは…無いだろう。俺の友人の組織が何個も壊滅しているんだが…全員が言うんだ。『表に出せない会議の時に猫の声がしたら…諦めろ…奴らには勝てない…たとえ、遠いところに逃げたとしても…』とな…」
全員が嘘だと笑い飛ばすことはできなかった。彼らも友人の組織が壊滅していることを知っている。
「……奴らとは誰なんだ。俺たちですら勝てないのか…?」
「ああ…なんたって大国に比べて米粒程度の土地しか統治してないのに最強と名乗る国だからな…」
「「「まさか…」」」
全員が理解する。勝てるわけがない…と
「ああ。世界最強の軍事力を誇るイリア王国だ。」
――――――――――――――――――――――
男たちが青ざめている頃、ある路地裏で猫が歩いていた。
「…ご主人様に言われたことは全部終わったかな…早く帰って撫でてもらわなきゃ…」
猫であるはずなのに人の言葉で独り言をつぶやくとそのまま闇の中に消えた。
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この世界は共通言語とそれぞれの言語が多数あります。基本は共通言語です。
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