第3話 勇者と魔王の戦いは集結し寄り添い合う。

「はぁ…はぁ…」


 僕と魔王の戦いは三日三晩続いた。ほんと辛かった…魔法が多彩かつ巧妙に罠を設置してくるから戦いずらかった…

 そして最後に立っているのは僕だ。


「ふふっ…我の背中を地面につけさせるとは…人間…いや勇者の力量を見誤ったか…さあ、殺せ…」


「いやだ。」


「なぜだ…?お主は人族の平和の…」


「たしかに最初はそうだった。魔王は殺すべき存在…そう言われてきた。」


「なら…そうするべきだろう…」


「でも、貴女を見た瞬間に景色…いや世界が変わったんだ。」


「意味が…わから…ぬぞ…」


「その前に傷を治さなきゃね。【完全回復】パーフェクトヒール。」


 魔王はゆっくりと起き上がると、僕はその目の前に片膝立ちになって話し続けた。


「僕は勇者の印があるからって教会に売られ、飼われてきた。魔族の殺戮機械になるために。そして、たくさんの魔族を殺した。だけど貴女を…魔王を見たときにこう思った。なんて綺麗で美しいんだろうって。」


「なぁ!?」


 顔が赤くなる魔王に僕は気づかずにそのまま話し続けた。


「戦ってる途中でも見惚れてたよ。貴女の魔法の美しさにも、その美貌の美しさにも。それに…なぜか貴女から同じ気持ちって言うのかな…言い表せないシンパシーを感じる気がするんだ。」


 魔王の美しさとその力たる魔法の美しさ。この2つに僕は惹かれたんだと思ってる。


「…そのシンパシーとやらは私も同じような境遇だったからだろう。」


 僕が話し終えると、魔王が少しずつ…綺麗な声で語り始めた。


「私も力が強すぎるとその理由で魔王軍に参加させられた…そこで私を待っていたのは実験…いや、私をさらなる怪物にするための改造を施された。そして先代の魔王を撃破し魔王なった…いや魔王に


 この魔王も他人にいいように使われたってことか…


「そこで私は考えた。勇者との一騎打ちをすれば死ねるのではないかと。そして…まだ私は生きている…いや、敵である勇者に救われた。」


 僕は魔王に死んでほしいわけじゃないからね。結婚したいだけ。ああ…心臓が破裂しそうだよ。顔も熱いし…

 でも、言わなきゃ始まらない。


「…なら、僕と一緒に来てくれないか?」


「本気か?」


「うん。貴女を貰うために戦ったんだから。」


「…そんなことを言われたのは初めてだ。少し胸を貸してくれないか?安心しろ危害を加えることはしない。」


「…?わかった。」


 そう言って僕は胸の前から腕をどかした瞬間に魔王が飛び込んで…泣いた。


「ぐすっ…ぐすっ…ありがとう。勇者…いや、愛しい人よ。」


 僕はその言葉を聞きながら魔王が泣き止むのを待った。


 そんな僕達を見つめるのは月明かりだけ。今だけは誰にも邪魔されずにお互いの時間と体温を共有して寄り添い合う。



 勇者と魔王。相反し合う二人は混じり合う。その影響が世界に大きな波紋を呼ぶことはまだ誰も知らない…

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