それを捨てるなんてとんでもない!〜童貞を捨てる度に過去に戻されてしまう件〜おまけに相手の記憶も都合よく消えてる!?特殊スキルで無双出来るけど構いませんね?
第18話 ep2 . 「訳有り令嬢と秘密の花園」 童貞卒業の相手
第18話 ep2 . 「訳有り令嬢と秘密の花園」 童貞卒業の相手
は?
童貞を捨てたって俺がか?
何を言ってるんだこの女。
知らんし。
絶対やってねぇし。
寝ぼけてるのか?
俺は小泉の顔を見た。
真顔である。
とても冗談を言っているような顔ではなかった。
いやいやいやいや、そう簡単に捨てられるなら誰も苦労せんだろうが、と俺は呟く。
小泉は座卓の上の帳面をめくってある箇所を指で指し示した。
『三年目。昭和九十五年。十月三日。相手 花園リセ。結果。過去ニ戻ル。』
筆で書かれたような文字。
「は!???」
俺は思わず叫び声を上げる。
花園リセ!?
いやいやいやいやいや…………
それはない。絶対にない。
俺は首を横に振る。
絶対にこれだけは無い。
前回と同じパターンだと言うのか?
そもそも前回だって本当かどうかなんて怪しいものだ。
絶対に違う、と俺はハッキリと小泉に断言する。
「絶対に花園リセにはあり得ない、花園リセでなくてもあり得ない」
俺は力を込めてそう言った。
小泉は真顔のままだった。
「これを書いたのは私では無い」
だが、これは間違いなく私の字だ、と小泉は眉ひとつ動かさずに言い放つ。
何を言っている?
じゃあ誰が書いたって言うんだ?
しかしそんな事はどうでもいい。
俺は花園リセに対して何もやっていない、と重ねて小泉に言う。
「ここは神社だろ?神に誓ってもいい。絶対にそれは無い」
指一本でも針千本でも飲んでやるよ。
俺は小泉の顔を凝視して啖呵を切った。
本当に針千本飲んでも構わなかった。
絶対に俺は何もしていないんだからな。
そうか、とだけ小泉は静かに言うとそれきり黙った。
少しの沈黙が流れた後、再び小泉は口を開いた。
「じゃあ、それを証明してくれないか?」
どうやって?と言う俺のポケットを小泉は指差した。
「佐藤、あの缶をまだ持っているな?」
あれを開けてみてくれ、と小泉は言った。
缶。
約1ヶ月前に小泉から渡された缶。
確かに学ランのポケットにずっと入れっぱなしになっていた。
あれから一回も開けていなかった。
その存在すら忘れていたのだから。
「ああ」
俺はポケットから缶を出した。
簡単な事の筈だった。
どうだ、出来るだろう?と小泉は俺の目から視線を逸らさずに言う。
簡単な事の筈なのに。
缶を開ける動作が恐ろしく難しい事のように思えた。
簡単だ。開ければいいんだ。
ちゃんと中身は入ってる筈なんだ。
俺はゆっくりと缶の蓋を開けた。
中身は入っている。
俺は少し安堵した。
「数を数えてくれないか」
小泉は静かに言う。
大丈夫だ、ちゃんと数は揃っている。
俺は一つずつ中身を数えていく。
1……2……3……
ちゃんとある。
4……5……
5個。
缶の中身の個包装のパッケージは5個だった。
5個?
渡した時は6個入りだったな、と小泉は静かに呟く。
は?
嘘だろ?
は?
減ってる?
そんな筈はない。
俺は断じて使ってなどいない。
動揺した俺は思わず缶を床に落としてしまう。
缶は畳の床に跳ね、中身も床に散らばっていく。
畳の上のカラフルな個包装。
何度数えても中身は5個だった。
「いや……ほら、これオシャレパッケージだろ?多分後輩の概史に1コやったりしたんだよ……」
自慢がてらに、と俺はなんとか可能性を模索する。
「言うほど自慢か?」
小泉が静かに言い放つ。
後輩に1コやったりした記憶なんて全くなかった。
心当たりもない。
どこかに落としたかな?と平静を装って取り繕う。
きっとそうだ。
どこかに落としたんだ、
そうに決まってる、と俺は力無く言う。
「缶入りの中身を一個だけどこかに落とすなんてあり得るか?」
小泉は的確に指摘してくる。
自分でもわかっている。
落とすなんてあり得なかった。
だがこの状況をどう説明する?
小泉は黙って一冊の本を取り出し、座卓の上に置いた。
古びた文庫本だった。
また本か、いい加減にしろよと思いながらも表紙を見る。
『蜜と罰』
というタイトルの古い小説のようだった。
なんとなく嫌な予感がした。
まさか、と俺は声にならない声を上げる。
そのまさかだ、と小泉は伏目がちに呟いた。
「お前が花園リセで童貞を捨てた過程が書かれている」
その前後も、と小泉はハッキリと言った。
え?
何を言っている?
俺が花園リセで童貞を捨てた過程?
また“俺と同じ名前の登場人物”が出てくる小説だって言うのか?
は?
絶対にない。
絶対にあり得ない。
出鱈目に決まってる。
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