第35話 通じる心


 お風呂を出ると二階に上がった。淳への疑いが、自分の勘違いだと分かった奈緒は、心が穏やかだった。


 髪の毛をバスタオルで綺麗に拭いた後、ドライヤーで髪の毛をブローするように乾かした。

 完全に乾く前にドライヤーを送風にしてブラッシングをすると髪の毛が輝くように綺麗になった。


 今の流行の様な色は付けていない。純粋な黒髪は少し重い感じもするが、そういうことはしたくなかった。


 ドレッサーに映る自分の姿に少しだけ微笑むと、ベッドの上に横になり、ヘッドレストの上に置いてある本を手に取って読んでいるといつの間にか上の瞼と下の瞼がキスをした。


 いつの間に眠ったのだろうか。意識が少し戻ると、お風呂に入った後、それまでの事が勘違いだったと思うと急に疲れが出たのだと思った。


 目を薄く開けてベッドのヘッドレストにある時計を見ると、まだ二時半だ。

まだ一杯眠れる。明日は日曜日そう思うと眠りにまたついた。


 何となくうつつの中で、自然と右手と左手が胸の下に行った。両腕が添うようにしている。やがて右手が、自然に自分の左胸の下にゆっくりと動いた。柔らかな胸が指に触れる。


 そのまま、ゆったりとした胸の下から上に手のひらが上がって行くと、和らか中に少しだけつんとしたところがあった。


なにも考えずに手のひらを覆うようにそのまま持って行った。

淳。初め何気なく頭の中で彼と一緒に居るように感じながら、触るとなぜか気持ちが良かった。


 下から上に手のひらで覆うようにしながらトップを手のひらで触り、優しく撫でていると気持ちが良かった。


 頭の中は、半分寝ている。何故か左手が下に降りて行った。自然にそのままにしていると左手が、お腹に触れた。


 柔らかい感じだ。軽く触りながら更に下に行くとパンティのゴムに指が当たった。一瞬躊躇したが、そのまま、少しだけ指でゴムを上げて、左手をゆっくりと入れた。


更に指を伸ばすと、するっと入る自分のそこが湿っていた。初めて自分で触れた。お風呂で洗う感覚ではない。


 淳が、してくれるように中指を進めるとプチッとしたものが有った。クリ・・自分でも分かっていた。

「あん」


 自分でしながら一瞬声がでた。少しだけ中指でゆっくりと触っていると気持ちがよくなって来た。右手で触る胸も段々強くトップだけ触るようになっていた。


 中指だけでなく何となく人差指も一緒に入れながら更に奥に入れるとぬるっとした感じが有った。


 初めての経験に興味を持ちながら淳がするように抜き差ししてみた。気持ちが良かった。更に指を深く入れながら、上の方に強く擦るようにするとたまらなかった。


「あん、だめ、だめ。こんなこと。だめー」

思わず声が漏れた。更していると


「気持ちいい。淳。来て」


 そう思って激しく指を動かすともう我慢できなかった。二本の指が自分の一番感じるところを激しく擦っている。更に右手で激しく胸を揉みながら左手で激しくそこを擦った。


「あーっ、淳。来てー。我慢できない」


 たまらなかった。やがて感情が頭の先からつま先まで貫くと、そこの奥から熱い物が出て来た。足が緊張して固くなる。そのまま意識を失った。


 カーテンから陽の光が差し込んでいた。あっと思うと、まだ手がパンティの中だった。


 淳。会いたい。


 心の中で呼びながらパンティの大切な部分が当たる所を触ると濡れていた。


 ちょっと悪戯に、もう一度そこを軽く触ると何となく気持ちよかったが、朝だと思うともう止めることにした。


 私ってエッチね。ふふっ。でもいいの。淳がいるからと笑うとそのまま起きた。


「今日は、何しようかな。淳とは会えないし。吉岡さん・・やめとこ。やっぱり淳がいい。昨日の事は、私の勘違いだったんだから」


 独り言を言いながら家着の短いショートパンツとTシャツを着ると階下に降りた。


『淳』


頭の中に奈緒の声が入って来た。


 ゆっくりと頭の中が覚めると目覚まし時計を見た。七時半だ。そろそろ起きるか。

 何で奈緒の声が聞こえたんだろう不思議に思いながら、着替えると顔を洗う為に階下に行った。

 洗面所で顔を洗いながらやはり気になった。朝食は、瞳と一緒に食べることになっている。渋谷なら家からで三〇分あれば十分につけることを考えると、もう一度部屋に戻った。


スマホを手に取ると

『おはよう。良く眠れた』

と入力すると送信をタップした。



 着替えて、ダイニングで食事をしているといきなりスマホが震えた。誰と思いながらスクリーンを見ると淳と映し出されていた。


「淳」


 つい声を出した後、タップするとメールの中身を見てふふっと笑った。


『おはよ。どうしたの。メール嬉しいけど』

『奈緒の声が聞こえたみたいで』


そのメールに舞い上がるほどに嬉しくなった奈緒は、


『分かった。心で淳の事呼んだの。会いたいって。奈緒、嬉しい』


奈緒からのメールに心が揺れた。今日は瞳と約束していると思うと


『とても会いたいけど、仕事だから仕方ない。奈緒の事、思いながら出張して来る』

『嬉しい。金曜日ね』

『うん』


 最後のメールに僕は、心が揺れた。

奈緒の心の言葉が聞こえるそう思うと自分自身の呵責に心が揺れた。

いつの間にか。八時を過ぎていた。


娘の昨日とは違う表情に

「どうしたの。奈緒子」

「うん、淳に会いたいって心で言ったら、通じたみたいで。彼がメールくれたの」

「そう、良かったわね」


 やはり昨日の態度は恋する乙女の一瞬かと安心すると奈緒の母も笑顔になった。


「今日は、会わないの」

「うん、明日からシンガポール出張だから準備で忙しいんだって」

「そうなの、大変ね」

「仕方ないわ」

そう言うと嬉しそうにコーヒーを飲んだ。




 八時過ぎまで奈緒とメールをして、少し遅れ気味なった僕は、急いで着替えると用賀駅に向かった。

 電車がホームに入ってくる音がする。急いで階段を駆け下りると電車に飛び乗った。


 渋谷のホームに電車が入ると急いで階段を昇り、左に回ると瞳が交番の前で立っていた。

 今日は、白いブラウスに少しオレンジ色の爽やかなスカートに白いローヒールの靴を履いている。しっかりとお化粧してとても綺麗に見えた。


 ゆっくりと歩いて行くと視線が合った。急に彼女の顔が輝いた。近づいてくる。


「待った」

「ううん。今来たばかり。それにまだ、九時前」

笑顔のままに言うと


「朝食どこにしようか」

「そうだな。昨日見た映画館の二階に素敵なコーヒーショップがあるからそこにしようか」

「うん」

頷きながらそう言うと左に並んで歩き始めた。


「昨日、お母さんどうだった」

「どうだったって」

「家に挨拶に行って、その後、九時過ぎには、帰ったでしょ。お母さんどんな反応したかなと思って」


「なにを期待しているの。普通だったわよ」

「そうか。じゃあ、やっぱりあの時間に帰ったのは正解だったんだ」


 意味が分かった瞳は、下を向いてコーヒーカップを手に取った。何となく、会話の方向がまずいと思った僕は、


「瞳、国立新美術館に行かない」

ちょっと不思議そうな顔すると


「色々な作品が置いてある。建物も総ガラス張りの曲面の素敵な作りをしている」

「国立新美術館」


「…いいよ。淳が、行きたいなら」

 さっきの言葉で昨日の件が、頭に戻った瞳は、取りあえず他の事をするならと思った。


「初めてだけど、素敵なところね」


一階にあるレストハウスの外でコーヒーを飲みながら言うと

「うん、結構いいでしょ」


 その後の言葉が続かなかった。ただ、黙ったままに瞳は目の前にある公園を見ていた。


 僕は、分からなかった。

昨日までは、間違いなく瞳と体を合わせたかった。でも、今日の朝、奈緒の言葉が体には入った時、そして何気なくメールした。その何気なくは事実だ。


 奈緒が自分を呼んだ。そしてそれが自分自身の体の中に聞こえた。間違いなく奈緒の声。それは、初めての経験。生まれた初めてだった。奈緒は、自分自身。


 そんな思いが、心の中に芽生えた。瞳の魅力は、確かに引き込まれそうにある。でも奈緒は、あの時、自分を信じて素直に時を流れてくれた。どうすればという思いが有った。



―――――


淳、どうするの?


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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