第24話 言い訳
私は、淳と別れた後、家で連絡を待っていた。食事をしてTVでも見ていれば、すぐに淳から連絡がくる。明日も会う約束しよう位に考えていた。
だが、十一時を回っても連絡が来ない。必ず連絡するって言っていたしと思うと、ベッドの上でもう少し待つことにした。
TVも見るものがないので、机の上の読みかけの本を取るとベッドの上でごろっとしながら待っていると、いつの間にか上の瞼と下の瞼がキスをした。
「淳、ありがとう。今日は、楽しかった。じゃあね」
玄関の門を開けて中に入ると
「あっ、明日は」
「瞳、うん、いいよ。じゃあね」
タクシーで家のそばまで送って貰った竹宮さんは、後ろ髪を惹かれるようにして玄関の中に入って行った。
瞳、後姿を見ながら、心の中でそう呼ぶと淳は、タクシーに戻り、
「用賀まで」
と言うと目をつぶり、さっきまでの事を思い出していた。
「山之内君、瞳って呼んでいいよ。でもプライベートの時だけね。会社では無理だから」
「当たり前だよ。瞳も淳って呼んでいいから。プライベートの時」
わざとらしく言うと竹内さんの唇に優しく自分の唇を付けた。彼女の肌は柔らかく気持ちよかった。
胸は、見た目より大きい事が分かった。それと奈緒の時とは明らかに違った感じが有った事も。
「もう、十一時過ぎている。帰らなきゃ」
「そうだね」
「シャワー、一緒に浴びる」
「ふふっ、だめ」
と言うとベッドから抜けてサササッとシャワールームに行った。
何もまとわない竹内の後姿は素敵だった。
やがて、バスタオルを巻いた竹内が出て来て、
「淳もいいよ」
と言うと、一瞬面倒だったが、このままではと思いシャワーを浴びることにした。
ホテルを出る時だけ、周りを気にしたが、誰もいないことが分かるとさっと入り口を出て、何もなかったかのように二人で歩いた。
僕の左手と瞳の右手はしっかりとつながれている。そして道玄坂に出てタクシーを拾ったのだ。
「お客さん、もうすぐ二四六ですが、どの辺ですか」
その声に目を覚ますと
「二四六を抜けて、東名インターを過ぎた一つ目の交差点を右に行ってください。近くになったらまた、教えます」
車の通りが多い。外の景色を見ると思い出したようにスマホを手にした。まずい、奈緒に連絡入れてないそう思いながらももう、十二時を回っている。いいか。朝一で連絡しよう。
あっ、さっき瞳と……。そう思うとどうすればいいか考えた。
僕は、日曜日、朝八時に目を覚ますとすぐにベッドの上でスマホを手に取った。
えっ、奈緒から連絡が入っている。昨日はなかったのにすぐにメッセージを見ると
『淳、連絡なかった。これ見たらすぐに電話して』
奈緒らしいメッセージに少しほっとしながら電話を掛けようとして、今日、竹内と会う約束をしていることを考えると
スマホの奈緒の電話番号にタッチした。少しの呼び出し音の後、
『淳、昨日連絡くれるって言ったじゃない。ずーっとずーっと待っていたんだから』
いつもの甘えに
『ごめん、久々に飲みすぎて。仲間とカラオケ行ったら、十二時回ってた。もう奈緒に悪いなと思ってしなかったんだ』
『十二時過ぎまで起きてたよ』
本当は十一時で眠りについていたが。
『分かった。じゃあ、今日は三時から会う』
『何で三時なの』
『午前中ダウン。二日酔いで頭が痛い』
少しの無音の後、
『もう、淳のばか。知らないんだから……。じゃあ三時ね。いつものとこ。いいよね』
『分かった。じゃあ、もう一度寝る』
『お休み淳』
そう言って切れると急いで竹内さんにメールした。
『今話せる。今日の事』
少しして『いいよ』と帰って来たので竹内さんに電話することにした。
私は嬉しかった。昨日はああいうことになったが、母親には、何も言っていない。母親と朝食を取っていたところに山之内君から電話有ったら、実際のところ、まだまずかった。
母親との朝食を切り上げ、自分の部屋に戻るとすぐに山之内君から電話があった。
『瞳、昨日別れ際に行ったことだけど』
私は、一瞬考えた後、
『今日会うって言った事』
『うん、時間決めてなかった。何時が都合いい』
私は、嬉しかった。昨日の事もあったが、何とは無しに口にしたことを覚えておいて、朝早く電話をくれた事に。
『そうね、今、八時半だから十時、いや、九時半なら渋谷まで行ける』
『分かった。じゃあ、九時半に渋谷。ハチ公前交番でどう』
『うん』
と言うと瞳は電話を切った。
顔がすぐほころんだ。一階に降りて
「お母さん、今から出かける。昨日みたいには遅くならないから」
母親がふふふっと笑うと
「そうね。昨日みたいに夜遅く、石鹸の匂いしながらさっぱりとした姿で帰るのはね」
私は、心にぐさっと来た。やばい、完全にばれてる。
「瞳、いつ合わせてくれるの。昨日夜まで一緒に居た人」
「えーっ、まだ、まだ」
顔の前で右手を振りながらも振った。
「まあいいわ。行ってらっしゃい」
嬉しそうに言う母親にお母さん、彼が出来るのを待ってたのかなと思いながら急いで歯を磨き始めた。
九時半に瞳と会った僕は、昼食時に
「瞳ごめん。今日は、三時には家に帰らないといけない。だから二時四五分まで」
「えーっ、今日も遅くまでと思ったのに」
と言って下を向いて寂しそうな姿をすると
「本当にごめん」
手を顔の前に当てて、謝る淳に
「分かった。許してあげる。でも毎週必ず会いたいな」
「勿論。今日だけ特別」
そう言う淳を見ながら良かった。昨日みたいな事今日は出来ないし。早く帰ろうと思ったところに淳が行ってくれたそう思っていると
「あれ、何か変」
「あっ、あははっ、やっぱり」
「何か違う。言っている事と頭の中。そうでしょう」
「ばれたか。実言うと」
と言って、今日の朝の出来事を話した。
「ばれたか」
「当たり前でしょう。それに」
と言うと、口元を淳の耳のそばまで持って来て。
「まだ、あなたがあそこにいるみたい」
淳は、顔を真っ赤にして下を向いた。その姿に結構素直だな。うんと思うと自分の彼になった淳を嬉しそうに見た。
―――――
これで良いのかな?
良くないと思うんだけど山之内君
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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