第18話 淳のストレス2


すみません。続きです。


――――


ふーっ、やっとついた。

僕は、ポケットからスマホを取り出してアドレスリストから店名をタップすると数回の呼び出し音の後、


「今から二人、予約したいんですけど」

「そうですか」

「はい、一〇分位で行きます」

「はい」

スマホをオフにすると


「竹宮さん。大丈夫だった。ちょっと歩くけど」

「ありがとう。山之内君凄いね。電話一本で予約できるところ知っているんだ」

「いやっ、前に行った時、結構良かったからスマホに登録しておいたんだ」


私は、彼に言葉は返さずにそのまま付いて行った。


センター街の十字路を四つほど抜けて右に曲がると東急ハンズの下に抜けた。パルコ方向にちょっと上がった左に階段がある。


「この上」


 僕が先に昇ると竹宮さんも付いて来た。

狭いが砂利が敷かれ簡単に打ち水がしてある。引き戸を開けるとガラガラと音がした。



へーっ、洒落たところ。そう思って彼の後に付いて中に入ると仲居が待っていた。


「山之内ですけど」

「お待ちしておりました」



 今では珍しく、きちんと着物を来て、丁寧な対応をする仲居に

凄い。友達と行く安居酒屋とは違うな。感心しながら二人のやり取りを見ていると


「どうぞこちらへ」

と言って仲居が歩き出した。



 安い居酒屋なら、靴を下駄箱に入れて、素足で上がらせるが、そんな無粋な事はしないことに私はちょっと感心していた。


 仲居に付いて行くと障子毎に仕切られた和室が両サイドにある。突き当りを右に行き、左にある部屋に案内された。

どう見ても四人は楽に座れるスペースだ。それに大したローテーブルが置いてある。


「こちらです。今、おしぼりとお品書きをお持ちします」

仲居が下がると


「山之内君、凄いじゃない。こんなところ知っているなんて」

「いや、言う程じゃないよ」

「でも、素敵だわ。この前一緒に行ったところとは大違いね」


そんな話をしていると仲居が、おしぼりとお品書きと膳のセットを持ってきた。


「決まりましたらお呼びください」

そう言って下ると


私は、おしぼりを手にしながらお品書きを見た。

えっ、何この値段。この前のお店よりはるかに高いじゃない。

心配そうな顔になった私に


「竹宮さん、今日は僕が誘ったのでご馳走します。好きなものをオーダーしてください」


やったあと思いながら

「えーっ、悪いよ。割り勘にしよ」

「いいですよ」

「じゃあ、ありがとう。ごちそうになります」


ふふっ、嬉しいな。私じゃ入れないそう思いながらお品書きを見ていると


「取りあえず、最初の飲み物たのもうか。僕は取りあえず生中」

「うん、私も」

そう言って、にこっとした。



僕は、側に有るボタンを押すと、少しして仲居が来た。


「生中二つ。その間にオーダー考えます」

「ありがとうございます」


仲居が下がると

「刺身の盛り合わせと焼き鳥の盛り合わせ。二人で食べましょう。竹宮さんも頼んでください」

「うん、サラダ系がいいな。板前さんのお任せ頼もうか」

「じゃあ、決まり」


 彼は、側に有ったボタンを押した。仲居が来て、生中を二人の前に置くとオーダーを聞いて下った。


僕は、生中を持つと

「久しぶり。そしてお疲れ様」

「お久しぶり。お疲れ様」


僕は、三分の一程、一気に飲むと

「うーん。やっぱりいいね」

と言ってジョッキをテーブルの上に戻した。


彼女も女性らしく五分の一程飲むと

「美味しいわね」

そう言って微笑みながらジョッキをテーブルに置いた。



私は、彼の顔をじっと見ると

「山之内さん、やっと二回目だね」

「えっ、二回目って」


あほかこいつは。もう少し汲みなさいよと思いつつ


「うん、こうやってデートしたの」


……少しの間の後、


「あっ、そうか。そうだね」


ごまかし笑いするような顔をする山之内君に


「それも山之内君から誘ってくるなんて。あっもしかして、彼女となんか有ったんでしょ」



「……えっ、そんな事ないですよ。そもそも彼女いないし」

胸に一抹の苦しさを感じながら言うと


「そうだったわね」

ジョッキを手に少しだけ口に含むと、彼をまたじっと見た。



 やがて仲居が、注文した料理を持って来て置き始めると、僕は何とは無しに奈緒を思い出した。


 最近の出来事で心に溜まるものが有った僕は、それをちょっとだけ横に置きたくて竹宮さんを誘った。

だが、奈緒の事を思い出させられて、あの時のことが思い切り甦ってきた。


「山之内君」

「えっ」

「えっじゃないわよ。仲居さんが料理を置いた後も目が焦点合っていなかったよ」

「あっ、ああ、少し最近仕事が忙しくて、疲れたのかな」

「もう、大丈夫」

「大丈夫、大丈夫」


頭を切り替えようとして、しっかりと彼女を見ると


「どうしたの。何か私に付いている」

「えっ、いや。食べようか」

「おかしな山之内君」


ふふっと笑いながら、頼んだ板前さんのお任せサラダを山之内君の皿と自分の皿に取り分けた。



―――――


むむっ、これはどう解釈すれば?!


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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