第4話 二人だけのお泊り2


エレベータで五階に上がり、右に曲がると二つ目の部屋の入り口の前で

「こちらでございます」


挿入型のカードキーをドアのノブの下のスリットに入れるとガチャという音がしてドアのロックが外れるのが分かった。


仲居さんが、先に入り荷物を部屋の隅に置いた。淳が先に入り、奈緒が後から入ると、すぐに窓際に近付いて、


「うわーっ、綺麗」


窓の外に思い切り広がる海と空が見える。横に内湯型の温泉が付いている。景色を嬉しそうに見る奈緒を見ながら視線を仲居に戻すと、部屋の説明や食事の事、温泉設備の事を説明し始めた。


やがて、仲居も部屋の外へ出ると奈緒が、じーっと淳の顔を見た。そして

にこっと笑って、

「淳、温泉行こうか」

嬉しそうに言う奈緒に


「うん、そうしよう」

そう言うと洋服かけの扉を開いた。


LとMサイズの男物とMとSサイズの女性用の浴衣と洗面セットが入っていた。

男物は、浅黄色とやや灰色をベースとした柄物、女性は黄色系とピンク系を基調とした浴衣だった。


バスタオルは、横に二つ置いてある。

淳は、Lサイズの浅黄色の男物と洗面セット、それにタオルを取ると

「奈緒」

と言ってテーブルの側にあるふわっとした座布団に座っている奈緒の顔を見た。


奈緒が、ふっと笑顔にして立ち上がると自分もMサイズのピンク系の女性用浴衣と他の物も取った。


「淳、行こう」


一瞬だけ躊躇して、洋服かけにかけてあるジャケットの右内ポケットから長財布、左サイドポケットから小銭入れを取り出すと


「ちょっと、待って。金庫に貴重品入れていかないと」

そう言って、金庫の中に入れた。奈緒も自分の財布を入れた。


仲居の案内だと、一階にあると言っていた。奈緒と一緒に一階に降りると仲居さんが立っている。まるで目的が分かっているかのように


「お風呂は、あちらでございます」

と言ってほほ笑んだので言われた通りに、エレベータを右に回り込む様に歩いて少し行くと左が男湯、右が女湯と書かれたのれんが下っていた。


ここかと思うと、

「奈緒、出たら、そこの待合で待っている」

そう言うと奈緒が微笑みながら

「うん」と言って中に入って行った。


お風呂場は、広かった。大きなお風呂場と外には露天風呂が三か所ある。更に内側にサウナ室もあるので淳は、嬉しかった。最初に外の露天風呂に行くと目の前が思い切り開けた海と青空の景色が広がっている。


うわーっ、これはいいやそう思いながら、手を付けると少しだけ熱い。最初、湯船の側にある、洗い桶を使ってゆっくりと足と手、体の順番で湯の暖かさをなじませると足先からゆっくりと湯船に入った。


気持ちいいなー、奈緒の事が、一瞬だけ頭から消え、湯のぬくもりを感じていると

「お兄さん、どこかの来たのかね」

初老の男性が、気持ちよさそうしながら話しかけて来た。


「東京からです」

「そうかい、私は、会社の旅行でここに来たのだが、もう何回も来ている。いいところだよ、ここは」


そう言って両手で、顔に湯をかけると嬉しそうな顔をした。


僕は、少しの間、体を温めると今度は、サウナに入った。

サウナは、結構好きだ。ドアを開けると、四人ほど先客がいる。結構広い方だ。テレビまである。


最初だからだろう少し熱いなと思いながら、最初は、五分と思って、体から出る汗を手で落としながらテレビを見ていると、さすがに我慢できなくなって、サウナの外に出た。


すぐ目の前に水風呂がある。温度計が二四度を示している。まあまあかなと思って、手と足を水につけた後、胸の部分にも水をつけて、ゆっくりと足先から入った。


ひゃーっ、これだよ、これそう思ってなるべく水が動かないようにして入った。体が水の冷たさに慣れてきている。やがて、頭をすぽんと水風呂に潜らすと、数秒我慢してから出た。

水風呂から出ると、またサウナに入る。今度は一回目より長く入っていられる。


結局、三回ほどサウナに入った後、体を洗って出た。体が火照って、とても暖かい。温泉効果かなと思いながら体を拭いて、ドライヤで乾かすと、脱いだ下着を備え付けの袋に入れて、お風呂の外に出た。


 奈緒が、待っているかなと思ったが、待合にはいないので、マッサージチェアで座りながら待っていると、五分ほどしてドアが開いた。

右手で、女湯と書かれた薄赤な色ののれんを右手でたくし上げながら、微笑んでいる感じに見える。

 淳は、一瞬どきっとした。頬が上気して、いつも透き通るような肌が、ピンク色に染まっている。ほとんど化粧しているようには見えない。可愛いなと思いながら奈緒を見ていると、


「淳、待った」

微笑みながら言ったので


「ううん、さっき出たばかり」


マッサージチェアから立ち上がると奈緒が自分の側に近付いて来た。ほんのり暖かさを感じる。何も言わないままに二人で部屋に戻った。夕飯は六時に食べれるように依頼してある。

時計を見ると五時四〇分。まだ二〇分ある。淳は、タオルをタオル掛けに干した後、冷蔵庫からビールを出した。中瓶なのでちょうどいいと思って


「奈緒、ビール飲む」

「うん、ちょっとだけ」


冷蔵庫の上にあるグラス入れからグラスを二つ取ると、テーブルの上に置いた。

栓抜きで抜くと、奈緒のグラスに半分、自分のグラスには、グラスの縁まで一杯注いだ。奈緒が手を伸ばし、グラスを取ったので淳もグラスを取ると


「楽しい旅行に乾杯」

「うん」


二人でグラスを軽く合わせると、僕は、一気に三分の二を飲んだ。

ちょっとぐふっとしたが、温泉の後の乾いたのどには最高だ。コップの残りをもう一度飲むとグラスをテーブルに置いた。


 奈緒が、もう一度グラスに注いだので、

「ありがとう」

と言うと奈緒が嬉しそうに微笑んだ。いつの間にか、夕飯まで一〇分を切っている。


「行こうか」

そう言って立ち上がると二人で部屋を出た。


奈緒の顔が、アルコールでほんのりとピンク色に染まっている。別館の一階にあるバーのカウンタで、二人で食後の時間を過ごしていた。九時を少し回っている。


カウンタの中には、五〇才前後のバーテンが、二人に干渉しないように他の客のオーダーを作ったり、グラスを拭いたりしている。

 目線をカウンタのバーテンから左横に座る奈緒に視線を向けると、奈緒はグラスに入っているペパーミントとソーダの入った液体を眺めていた。


視線をグラスの中にある液体に落としながら、何を考えているのか、ほんの少しだけ疲れている様子が有った。


多分、今日は朝からの遠出と緊張のせいだろうと思いながら、横顔から視線を少し落とすと旅館に備え付けの浴衣の胸元が少し開けて透き通るような肌と可愛いピンクのブラが少しだけ見えていた。


「淳、部屋に戻ろう」


いきなりの声にふっと少しだけ酔った頭を戻すと、ピンク色に染まった頬を見せながら言う奈緒に頷くと、カウンタの中にいる男にチェックをした後、

「このグラス持って行っていいですか」

と聞くと

「いいですよ」

と言ったので、奈緒とジャックダニエルのオンザロックの入ったグラスを手に持って部屋に戻った。


―――――


素敵な温泉と食事。そしてお酒と楽しんだお二人です。

後は???


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。



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