連れてきちゃった

 驚きすぎて結愛とクランは顔をお魚みたいに口をぱくぱくさせている。それが可笑しくて、ふふっと笑ってしまう。


「びっくりするよね。私もめちゃくちゃ驚いたんだ。いきなりこんなになっちゃって」


 私は二人の小さな子どもと手を繋ぎながらヨウと一緒にナグカルカにきた。一人は黒い角の男の子。もう一人は白い角の女の子。


「あれ? 前に見た時この子達、赤ちゃんだったよね」

「うん」

「今は……三才くらい? このくらいの身長だと」

「どうだろう? わかんないや」


 赤ちゃんだったティーとリリーは急に大きくなって赤ちゃんじゃなくなり、子どもになった。私が大きくなってねって言ったりしたから?


「か、可愛いですわぁ!!」


 そう叫びながらイソラは二人にいきなり近づいて頬擦りを始めた。


「あ、イソラ、まって……」


 まあ、言った時にはすでに遅かった。リリーがティーにくっつくイソラにがぶりと噛みつく光景が繰り広げられている。


「痛いですわぁぁぁ、でも可愛いぃぃ」

「ティーに触っていいのは私かヨウだけなんだよー。他の人が触るとリリーがすごく怒っちゃうの」

「なるほど、嫉妬かぁ」


 納得したように麻美がうんうんと頷く。


「え、まさか」


 こんなに小さいのに?

 リリーを見ると不服そうにイソラに頬擦りされている。ティーから離れたから噛みつきはなくなったけど。


「すず、りりー」


 今度はティーが私の袖をひっぱる。


「はいはい、イソラ、ティーもやめて欲しいみたい」

「えぇぇぇぇ、もぉー、こんなに可愛いですのに」


 そう言いながらもイソラはそっと離れてくれた。


「はぁ、次に見たらまた成長してしまってたりしませんかしら」


 少しだけ名残惜しそうにしながら。


「どうなんだろう。一番最初の魔王達の記録って残ってないみたいで、この子達の事も全然わからないことだらけなの」

「記録されてたのはもうあの姿だったからね――」

「そうなんだ」

「っつか、魔王様を他国に連れてきていいのかよ!」


 驚いてた結愛達がさっきのやりとりの間にこっちに戻ってきた。


「私が行きたいなって言ったらね、この子達がむぎゅってヨウを離さなくなっちゃって、もう時間だし……私達がいれば大丈夫かなぁと」


 ふふふと麻美が笑う。


「こんな小さいのに賢いわね、この子達」

「まだまだいっぱい困る事もあると思うけど、成長が楽しみなんだー」


 かなり早い成長になってしまいそうだけれど。

 あ、まって、成長がはやすぎると私達、わーーーー!

 大変な事に気がついてしまい、私は心の準備を始めようと心に決めた。


「ヨウ、いいか?」

「あ、あぁ、すずめ。任せていい?」

「はーい、いってらっしゃい」


 私達はヨウとクランを送り出す。

 クランの姿がテトと重なる。

 スズが連れていかなかなったらあそこに立ってたのは兄と弟だったかもしれない。だけど、それはもう見ることはないだろう。


「私達は学園にお散歩に行きましょうか。今日は休日で人は少ないはずですし」

「うん、行きたい」


 私はティーとリリーに角を隠すように言うと二人はこくりと頷いて魔法を使った。


「わ、もう魔法が使えるんだ」

「うん、ヨウの使う魔法はもうほとんど全部マスターされちゃって、ちょっと凹んでたなー」

「あはは、すごいねー」


 そんな会話をしながら私達は鏡を通り抜けて、学園に歩きだした。

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