桃太郎

きこおみものお







昔々、と言ってもそれほど昔でもないあるところに、おじいさんとおばあさんがいました。


お爺さんは近所に麻雀をしに、お婆さんは最近行き始めたお料理教室のある高田馬場に、お婆さんが料理教室を終えて帰ろうとすると、神田川から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。驚いたお婆さんですが、好奇心旺盛なお婆さんはその大きな桃を家のある巣鴨新田まで持ち帰りました。お婆さんが家に着いた頃、ちょうどおじいさんも帰ってきていて、お爺さんちょっとこれを切ってみてくださいよ。そう言って台所から出刃包丁を持ってきて渡すお婆さん。少し時間はかかったけど、開いた桃から出てきたのは、なんと男の子。実はお爺さんとお婆さんは子宝に恵まれず、この腕に我が子を抱いたことはなかったのです。

お爺さんとお婆さんは迷いました。自分たちで育てるか、それとも施設に送るか。とってもとっても悩みました。でも、お爺さんは気付いていました。お婆さんの目が、この子を育てたいと言っていることに。無責任なことだってことはわかってる。いつまで生きていられるかわからない自分達がこの子を育ててもいいのか、一度も命をその腕に抱いたことのない自分達がきちんと育てられるのか、不安でした。

お爺さんとお婆さんは男の子に「桃太郎」と名付けました。

「桃太郎、ごめんね。私たちは、あなたの事を育てます。」

やがて月日が経ち、桃太郎は20歳になりました。

そして、桃太郎が歳をとるごとにお爺さんとお婆さんは若返っていきました。桃太郎が20歳の時、お爺さんとお婆さんは60歳でした。

ある日、桃太郎は飲み会に呼ばれました。

桃太郎は自分のことが知りたいと言われ、これまでの事を話しました。そうすると、周りは桃太郎に心無い言葉を浴びせました。桃太郎は家に帰りお爺さんとお婆さんに、怒鳴りました。

「どうしてあの時施設に送ってくれなかったんだ」

「なぜ勝手に、無責任に僕のことを育てたんだ」

桃太郎は怒りました。やがて桃太郎は自分の部屋に引きこもるようになりました。

桃太郎の心の中には鬼がいました。とても恐ろしい鬼が。

「殺せ。心無い言葉で自分を傷付けたあいつらを殺せ。勝手に育てたあいつらも殺せ。殺せ殺せ殺せ」桃太郎は悲しくなりました。何故こんな事を思ってしまったんだろう。こんなの、自分を傷付けたあの人達と同じではないか。悲しくて悲しくてしようがなくなりました。

20歳まで育ててくれたお爺さんとお婆さんにこんな酷い感情を抱いてしまうなんて、なんて親不孝者なんだろうか。


桃太郎は死にました。

最後に、鬼退治をして。


立派に戦ったのです、

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桃太郎 きこおみものお @honmayuri

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