5「夏でプールやで。何も起こらないわけないやろ」
「ふんっ!!!」
「きゃあああーー!!」
「あーゆーむーくーん!次、わたしねー」
「はいっ!よろこんで!」
サイコーだなー。最初は悲しくも男子だけで遊んでたんだけど、更衣室のいたずらのこともあって悪ノリでキミヒコを投げ飛ばした。でも『チカラ』をそこそこ使ったからか思った倍くらい飛んじゃった。
『おい、5メートルは飛んでなかったか!?』
『人間の身体能力じゃねぇ……』
『神だ。肉体に神が宿ってやがる!!』
先輩たちの信奉度が増した。全力で投げ飛ばしてください、という変態のような先輩たちのお願いを聞き入れていると女の先輩にもお願いされるようになった。
「でもいいんですか?投げるときに腰のあたりを持ちますよ?」
「大丈夫だよ」
一番最初にお願いしてきた比嘉先輩は僕に抱きつくように身を寄せてきた。
「あっ」
「……」
「ふふっ」
女の先輩を投げるときにはライフルがギチギチいっていて、ついそれを押し付けてしまう。女の先輩たちはそれを込みでこの遊びを楽しむエロくて最高な人たちだった。近くに寄れば一発で僕のライフルが水着なんかで隠せないほど元気なのが分かる。
コレは引き締まったカラダと凶悪なライフル、アピールした方がいいんとちゃう?
「大人気だね」
「如月さんがお願いしてくるなんて意外だね」
「いやープールだし、楽しみたいかなって」
彼女は胸はそこまでじゃないが黒のビキニが白い肌を引き立てている。僕のえっちな目線に気が付いたのか彼女は胸を手で隠した。
「えっち」
そんなことかわいい感じで言われてもなぁ。如月さんの目線が僕の反り返ったライフルに移った時、顔が真っ赤になり目が釘付けになったようだ。
何人もの大胆な先輩たちのあとに恥ずかしがる彼女の反応は新鮮だった。僕は初めて女の子を恥ずかしがらせる悦びを知った。ちょっとだけ腰を動かして彼女の視線が揺れるのがまた良い。
「よっ」
「ちょっ、えっ!」
僕は彼女を抱きかかえて思いっきりライフルを背中に当てた。戸惑う如月さんの声にそそられる。
「じゃあ投げるね、いい?」
あくまで彼女を気遣う言葉を投げかけるが、身体はそうではない。
「……早く投げてよ」
如月さんは恥ずかしそうに小さい声でそう言ったので僕はあえて聞こえないフリをする。
「まだ怖いかな?大丈夫、次の人はいないからね」
「はーやーく、なーげーてー!」
「はーい」
サービスでポーンと高めに彼女を宙に放り投げた。
「えっ?……きゃぁあああああああああ!!!」
どぶ~ん!と大きな飛沫が上がった。もちろんすぐにプールから上がってきた如月さんから怒られた。ポコポコと僕を叩く彼女はとても可愛くつい僕は呟いてしまう。
「かわいいなぁ」
「!!……ばか」
夏、プール、水着、特殊なシチュエーションだからか普段じゃ考えられないようなことや行動をしてしまった。この日から如月さんやプールで投げ飛ばした女の先輩たちとの距離が縮まるといいな。
恥ずかしさよりもあの時の興奮と今後の期待に顔が緩む。
* * * *
「プールかー。いーなー」
「1年生はプールを使った授業ないもんね」
この学校には一般的な水泳の授業や水泳部はない。一部の生徒に防具を付けた状態で水中を移動する訓練やプールトレーニング、うちの部のように水中にいる要救護者を助ける訓練をするなど特殊な目的でプールを使用する。
「遊びで使用するにしても部活単位での訓練じゃないと申請の優先順位が下げられちゃうのもネックだよねー」
「そこは代々プール掃除をしてきたうちの部の特権ってことだな」
「……」
「それはそうと歩夢は相当はしゃいでたよな」
「ま、まあね」
はしゃいでいたというか特権乱用で女子にセクハラというか。当事者以外にバレてないよね?
「はしゃいでたってなにしてたの?」
「いつもクールな歩夢くんがはしゃいでただなんて、僕気になるなぁ」
「先輩たちをボールみたいにプールサイドから投げ飛ばしてたんだ」
「えぇええ!?」
「ボールみたいだなんて大げさな。人はそんなに飛ばないでしょ?」
「控えめに見ていちばん飛ばされた男の先輩は8メートルは飛んでたぞ」
「は?」
「すげぇ……」
「ちょっとおかしいでしょ?普通にジャンプしても3メートルも跳べないのになんでそんな距離が出るのよ?」
「それは歩夢だからとしか言えないなー」
「はぁーつくづく人間離れしてるわね」
僕は実は有名人らしい、眉唾モノの逸話がうわさとして流れてくるらしく。今回のプールのことでそのいくつかに信憑性が出たという。ちなみにそういう話って本人にはあまり回ってこないんだよね。
「歩夢くん、前から聞きたかったんだけどダンジョンについていい?」
「なに?」
「D級ダンジョンを回ったんだよね?どんなモンスターがいたの?」
「どんなのってゴブリンとオーク以外は大きいだけのただの動物や虫だよ?」
「へーそうなの?」
「やっぱりモンスターはC級からかなり凶悪になるらしい、想定外の動きにやられるからC級ダンジョンになるらしいんだけど」
「ドラゴンとかスライムとかいるのかな?」
「流石にドラゴンとか出てきたら人間じゃ勝てんだろ?」
「その辺はいるかどうか知らないけど、OBの人が言うには見たこともないような虫や鎧のような体のライオンのような獣がいるらしい、僕も股聞きだけど」
「へーそうなんだー」
「ところでもし歩夢くんに向かって牛みたいな大きい獣が突っ込んできたらどうするの?」
「えっ?そんなの殴って倒せばいいじゃん」
「「「えっ?」」」
「えっ?いや、普通にD級ダンジョンに潜るとボコボコ出てくるよ?」
「いやいや!おかしいだろ!?」
「おかしくはないよ。狩り方は違うかもしれないけど赤牛はあのダンジョンだと……」
「歩夢君、そういうことじゃないから」
「……」
「突進してきた牛を殴り倒すってどんだけ人間離れしてるんだよ?」
脳筋先輩たちのせいだろうか、僕は毒されていたようだ。
「う~んでも立ち回り次第でなんとかD級自体は攻略できるらしいよ?」
「なわけないでしょ!?」
「世の中にはいろいろな人たちがいて、無能力者だけのパーティのダンジョン攻略の実験が行われたらしい」
「で、それが成功したと」
「そうだね。1体と5人ならC級まで勝てたらしいよ」
「でもそれって歩夢君が人間離れしてることとは無関係だよね?」
話を逸らすのには失敗した。
歩夢たちは教室で話をしていたが杉本はそれに聞き耳を立てていた。彼がよからぬことを考えたのはこのひとことがきっかけだった。
「ところで慎吾ならD級ダンジョンでも通用するんじゃない?」
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