5「友達100人できるかな?このまま彼女もできるかな?」
「あゆむー、メシ食おうぜー」
「うん、ミキヤも一緒にどう?」
「おっ、いいぞー」
僕は慎吾以外のクラスメイトとも仲良くなっていた。とはいえ女子で気軽に喋れるのは未だに秋田さんだけなのだけど。
「あーさっき早弁したからか足りねーな。売店で菓子パンでも買うかな?」
「太るぞ?」
「大丈夫だって。成長期だから」
「ミキヤ、そんなこと言ってお腹の辺りヤバくない?」
「マジかよ!?このくらいならすぐ戻らねーの?」
「背が伸びない限り難しいんじゃない?食べ過ぎを続けてたら」
「ギャハハハハ」
「笑うんじゃねーよ、ヒロキ!」
やっぱり男子同士だと話しやすい、宿題を教えるというちょっとしたことで距離が縮まった。最近慎吾とずっと一緒に居なくてもクラスの男子ならば普通に会話の輪に入ることはできるようになった。
「ちょっとあの先輩、ちょっと苦手だよね」
「わかるー。真面目に他の部活にしようかなって俺考えてるもん」
クラスメイト同士の会話は愚痴のようなものもある。僕たちはクラスメイトという同じ境遇の仲間を得たからこそこういう話ができる。ただし杉本はその輪に入れないでいるようだ。
「そういや杉本ってヤツって昼休みになるとすぐに教室から出てくよなー」
「そりゃあ、あのスキル自慢のせいだろ?」
「それだけじゃないだろ?あいつなんかやっちまっても絶対謝らねーもん、そんなヤツとみんな喋りたくないよなー」
他の席で杉本の話題が出た時、僕は思わず黙ってしまった。杉本が僕に絡んできたのはあのときだけ。そのときのことを覚えているのは慎吾くらいだろう。
「どーした歩夢?食わねーの?」
「おい、ミキヤ。さっき太るって言われたのに歩夢の弁当に箸を伸ばすな」
「おっと。はやく食べないとミキヤに弁当食べられちゃうね」
「ちっ、今日のところは勘弁してやるか」
「ミキヤ、お前は何様だ?」
僕の高校生活は極めて順調だ。あとは女の子と仲良くなって彼女ができたら最高なんだけどな。
* * * *
「すぎぃーもとぉーーーーー!!!!!」
「ひぃぃぃぃぃっ!」
「なん!どっ!腰に力を入れろと言わせるんだ!?」
槍術部の練習場で体格のよい男子が杉本に練習用の槍を向けている。当の杉本は汗だくで地面にへたり込んでいた。
先輩が失望の目を向けグラウンドの方に親指を向けた。杉本はその指示に素直に従い走り込みに行った。
「全く情けない。この1年ですっかり腑抜けになっちまって」
「ふふっ。川本先輩、杉本は元からああですよ?」
「変わっちまったのは俺の方ってことか?」
「両方じゃないですか?ここの訓練に比べたら中学なんてまだ甘さがありますからね」
「普通にその訓練についてくるお前が言ってもなー」
「俺はこれでも必死ですよ」
そう言いつつもこの男はまだ余裕がありそうだと川本は確信していた。
「で、そこまで杉本に強くなってもらいたい理由はなんだ?」
「俺はただ友人として彼には自信を取り戻してだけですよ」
川本は目の前の男を胡散臭そうな目で見る。たしかに杉本がクラスで浮いていることは事実だ。だからといって武力で自信を付けさせるのは違うと思った。
ただ川本は2年生だ。下手に自分がしゃしゃり出てもろくなことにならないと確信していた。とりあえず目の前のこの男が変なことを企んでいないか疑うことしかできない。
「わかった。ついでに根性も叩き直してやる。後輩のためなら憎まれ役くらいいくらでも引き受けてやるさ」
* * * *
「うわぁああああああああ!?」
「!!!??」
ドンッ!っといきなり突っ込んできた麻木さんが僕にぶつかる。
「いったぁ~」
硬ぁーー!!!!?
思わず声に出そうになっちゃったよ!
状況を整理しよう、部活で準備運動をしている最中、麻木さんがふざけて走り回っていた。調子に乗った彼女は足をもつれさせてかなんかでバランスを崩し、叫びながら僕の方に倒れこんできた。僕が振り返った瞬間、彼女が僕の胸に飛び込んでくるというラッキースケベだった。
だけどどうしてこうなった!?
小柄な彼女はとても可愛らしい。確かに童貞性欲魔人フィルターという呪いが僕には掛かっているから僕の評価は女子に対して大幅にプラスに働いていることだろう。しかし女の子が初めて胸に飛び込んできた感想が硬いってなんだ!?
「歩夢、大丈夫かよ?」
「……ちょっと驚いただけだよ」
「ごめんねー歩夢くん」
「お前、はしゃぐならせめて周りくらい気をつけろよ?」
「だからごめんって謝ってるじゃん。次からは気を付けるし」
「ホントに気を付けろよ。それと別に先輩が用事があるようだぞ」
「ぎゃあああああああ!せんばいーあたま、あたまはつかまないでー!」
「……ホントに反省しろ」
「……」
麻木さんはこういうことをしょっちゅう起こしていた。まだ部活が始まって10日も経っていないのにすっかり麻木さんの起こすトラブルが部の名物になっていた。
「ところで慎吾、さっき気づいたんだけど」
「なんだ?」
「麻木さんって相当鍛えてるね」
「ああ、そうだな」
「慎吾は気づいていたの?」
「ああ、あいつがふざけてるように見えることの大半は相当な身体能力がないと無理だぞ」
「……そうなんだ。そこまでスピードが出てないからそんな風には見えなかったな」
「俺もそこまで詳しくないがな」
でもおっぱいまで柔らかさの欠片もないってどういうこと?もしかしておっぱいのすぐ下は胸骨だった?
高校生活も順調でいろいろな面で充実していた。それと相変わらず僕は毎日夢精をしている。
『スキルレベルが上がりました。おめでとうございます』
このスキルが僕の人生の大きな転機になるとはこのときは思いもしなかった。
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