7「マグナムが過去イチやる気を出しました」

「オトコの筋肉はオンナのおっぱいと一緒。本能で見ちゃうし、触りたくなっちゃう」


「お前もカリナと同じ人種か?」


「……」


 昨日のカリナセクハラ事件について慎吾が秋田さんに話した。しかし期待に反し彼女はカリナの欲望を肯定してしまう。秋田さんもそういうキャラなら身近にいる女子は……


「同じタイプかと言われればちょっと違うかな、例えば」


「……」


「ねえ、歩夢くん……あたし、歩夢くんのことが……」


「あ、秋田さん?」


「ねえ……愛美って呼んで」


 上目遣いで僕を見つめた秋田さん。彼女の細い手が肩に、左手は腕から指先に撫でるよう触れた。その攻撃に童貞の下半身は一気に血を集めて臨戦態勢になってしまう。


「どうして目を逸らすの?あたし悲しいなぁ」


「やめんか!」


「しんごーいいところでー」


「歩夢を弄んで堂々と触るのをやめろ!説教している最中に歩夢の乳首をまさぐるな!」


「……あうっ」


「でも歩夢君は嬉しそうだよ?ウィンウィンの関係ってやつ?」


「そういうのはちゃんと付き合って人の見えないところでやれ!」


「……」


 頭がおかしくなりそうだった。ただ顔のあたりがすごい熱くなって、表情をつくれていないことはわかる。お願いです、誰か童貞を貰ってください。


「……」


 授業中や放課中、秋田さん以外の女子からも向けられたことのないような視線を感じた。さっきのやり取りは少なくとも気持ち悪さじゃなく彼女たちの性欲を刺激するものだったらしい。

 下半身さえ暴走状態じゃなければ彼女たちに話しかけてグッと距離を縮めることができたかもしれないのが残念だ。今は一刻も早くトイレでコレを鎮めなければ。

 彼女がいるリア充になりたいなぁ。


「要ぇー川原先生が放課後にまた来いって呼んでるぞ」


「あ、はい。わかりました」


「部活動の方には連絡してあるからなー」


「はい」


 昨日相談したばかりの川原先生に呼び出された。



     *     *     *     *



「で、なんで呼び出されたん?」


「……身体測定と体力測定を一通りやってきた」


 僕は部活に戻ってきた。周りはすっかり体型の変わった僕に慣れたようだ。


「おつ!」


「……」


「おい、歩夢どうした?」


「マズいことになったかもしれない」


「なにが起きた?」


 空気を察してか慎吾とカリナは真面目な表情になった。


「身体能力が上がりすぎて戦闘訓練をすることになるかもって」


「は?」


「こっちがなにが起きたか聞きたいよ!なんだよ、戦士職と遜色ないって!」


「落ち着けって!お前には職業選択の自由があるはずだ!」


「それが今日僕を呼んだ川原先生はかなり発言権のある先生らしくて担任やこの部の先生にも根回し済みらしいんだ」


「歩夢、もしかしてハンター科に行ちゃうのか?」


「今はわからない。でも訓練の内容次第では2学期からそうなるかもって」


「ハンター科の生徒としてちょっといい?」


 僕たちはカリナがいるのを忘れていた。ハンター科に対しての偏見を彼女の目の前で漏らしたことは僕らの表情を凍らせた。


「知らないかもしれないけどスペシャリストと呼ばれるC級以上のダンジョンを攻略するハンターは日本に3000人もいないよ」


「えっ?」


「それ以下は攻略だけを専門にする人はいない。つまりあなたたちのイメージするハンターはこの学校からほとんど出ないってこと」


「ハンター科って名前がついているのに?」


「ハンター科の生徒なんてほとんどは一般人と変わらない。背が高いとか早く走れるとかその程度って考えたら?必要以上に物事を大きく見て、恐れるなんて馬鹿らしくない?」


「ごめん」


「俺たちがバカだった。よく知らないのにビビってて変なとこ言っちゃって」


「別に怒ってないよ。ただこの部でも言われたでしょ?とりあえずやってみろって」


「ふはっ!そうだな!」


「変な思い込みなんてバカらしいか」


「で?やってみるの、みないの?」


「やってみるよ。やるだけね」


「おーがんばれよ」


 僕たちは3人でこぶしを合わせあった。


「そういえば明日どこかに顔を出してもらうかもって言われたな」



     *     *     *     *



「やあ、君のち〇ち〇触らせてくれない?」


「……」


 僕は川原先生に言われて身体能力強化研究ゼミに来たはずだ。でもなぜか背の低い白衣を着た美少女にセクハラされている。

 一瞬困惑したがむしろこれはチャンスでは?あちらはセクハラしたい、僕はセクハラされたい。需要と供給は見事に合致してい……


「このアホっ!!!!」


 美少女は後頭部に強烈な張り手を喰らう。その一撃を加えたのは背の高い女の子だった。


「ごめんねー。うちはそんないかがわしいゼミじゃないから」


「あっ、はい」


 部屋の奥から更に女の子が現れた。途中で止められたのはとても残念だ。


「担任の先生はいるけどこのゼミはうちら3人で活動しているよ」


「この白衣を来たのが北上、あたしが高坂、こっちが野村ね」


「……1年の要歩夢です」


「いきなりだけど歩夢君は興味深いスキルを持ってるって聞いてるけど説明してくれない?」


 3人とも女子だが研究者気質なようで世間話を挟まずにいきなり本題を切り出してきた。


「先生には話したのですが僕には4種類の『チカラ』が見えるんです」


 僕は3人に川原先生にしたように説明をした。


「なるほどなぁ。それはわがバフ研にとって協力してもらいたいものだね」


「バフ研?」


「ああ、強化全般をバフとも言うのだよ。自己強化以外にも野村のように魔法で他人を強化することもできる」


「数値を記録して様々な面から効果を検証するんだけど見てみるのがいちばんかな」


 高坂先輩が握力計を持ってきて僕に見せる。


「これは?」


「まずなにも強化していない状態で測るよ」


 目の前で先輩が力を入れて握力計を握るのはちょっとドキドキした。もうすでに勃起している、慣れない空間で既に緊張状態だったようだ。


「んっ!……29キロ。次、強化使うよ」


 高坂先輩から漏れる力の入った吐息混じりの声はたまらなかった。少し間をあけ、高坂先輩は再び握力計を握った。


「……67キロ」


「いつもどおり大体2.3倍ね」


「なるほど、強化ってこんなにも違うんですね」


「魔法だと1.5倍、両方重ね掛けだと大体3.2倍になるわね」


「世間でいう研究ってのは地味にデータを取って、そこからどういう結論を得れるのか考えることだよ。そこに君が来た」


「えーと?」


「最近頭打ちでね、やれることに限界があったの。要君の能力ならもしかして新たな発見があるかもしれないわ。協力してくれたらうれしいなぁ」


 野村先輩は僕の手を握ってきて上目遣いで僕を見つめてきた。僕の身長が高いから顔を見ると誰でもそういう風になるんだけど、先輩は必要以上に近づいている気がする。

 メガネをかけて地味な印象の先輩だったけど角度をつけてよく見ると、大きな胸がアピールしていた。


「せっ、先輩近いです!(マグナムが当たっちゃう!)」


「わたしたちには君が必要なの、それに……」


「……」


 野村先輩は僕が動揺しているのをわかってか、更に距離を縮めようとする。絶対これは計算してる。

 でも策略だって分かってるのにハマってしまう。先輩のおっぱいと手の柔らかさ、上目遣いは反則だ。ドキドキすると先輩はとてもかわいく見える。

 こんなのうんと頷くしかないじゃん!


「……先輩たちに協力します」


「ありがとう」


 野村先輩は嬉しそうに僕に抱きついてきた。周りの2人がそこまで慌ててない様子なのでここも彼女の作戦らしい。

 先輩が抱き着くと突き出したマグナムが当然ぶつかる。僕のマグナムはここぞとばかりに力強く女の子のお腹を押し返す。そんな彼女は驚いた声を漏らし、ゆっくりと僕から離れて微笑む。そしてつぶやく。


「硬くて大きいんだね」


「……(イキそう)」


 もちろん今晩の夢には胸の大きな野村先輩が出るだろう。

 このバフ研の方々はどれだけ僕のマグナムを硬くさせようとするのか?

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