第5話 鯉よりも高く

 格子窓の向こうで時折起こる戦闘も、おばあちゃんみたいに田舎町にいなければほとんど被害はない。一体みんなどこに引っ越したの?

 だけどそれもしょうがない、戦争も、何かがなくなるのも増えていくのも。

 ポロ君がスパイなのもしょうがないことなのだ。

 

 屋根より高いこいのぼり。屋上でマル君に抱えられてる。どしゃ降りの中で空を飛んでる。


「え?」


「危ないところだったナ、彼に取り込まれるところだった」


 私はフリンジのような翼をもつマル君に助けられた。


「あなたのところも同じでス」


 ポロ君が雨の中からぬるっと現れる。


「空の人を取り込…」


「おっと、おしゃべりは終わりだぜ」


「やめて!」


 どこか知らないところでやって。だんだんマル君につかみ取りされている気分になってきた。そりゃ私なんか簡単に捕れて塩でも振られて焼かれるのかもしれない。あさはかな人間が悪かったのかもしれないけど。私は関係ないと言いきってやる。


「一緒にいれないの?」


「だって気持ち悪いだろ、よくわかんないのと並んで授業なんて」


「そんなのいつもだよ」


「ハナ、仲良くしよう」


 ぼやっとポロ君の顔がまちこになった。そんな気がした。


 雨にうたれながら唐突に納得がいった。私たちは餌なんだ。学校なんて嘘、簡単な授業ばかりするようになって、未来や将来の話などしなくなった先生。ずっと感じていた違和感の正体。


「いやぁあ!!」


 暴れると、あっさりと彼は手を離した。私は雨と一緒におちていく。

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