第4話 鯖よりも青く

 砂ばくのようにカラカラで、かつて青かった星はもうどこにもない。

 ああ、ポロ君に見られてしまった。詩とイラスト入りのスパイ手帳。


「チュウニでごめん」


「…何て?」


「ああ、ごめん、えっとこう、全部諦めて?世界の仕組みに私だけが気づいて特別ーみたいな、その年頃独特の病気よ」


「あー、なんとなク」


「わかったの?すごい」


「帰らないんですか?」


「あー親が迎えに来れないから先生待ちかなあ」


「そっか、みんなぬれるの嫌がりますもんね」


「そう、みんなハジッコ持ってるけどね。あ、知ってる?」


「ええもちろん。僕の星の調査で」


「そうなの?すごい!…あ、ごめんね」


「いいんでスよ、ここの人たちの役に立つなら」


 ポロ君は表情豊かで、よく笑う。


「あれ?研究してハジッコできたんでしょ?いつもポロ君びしょぬれじゃない?はじけてないよね?」


「水が好きなので」


 ずれていたメガネをかけ直す。


「ごめんね!よくわからないのにいろいろ聞いて」


「いいんですよ、なにも悪くない」


 ポロ君の声はすこし低い。周りの男子よりずっと大人だ。ふいに聞いてみた。


「じゃあ質問してもいい」


「なにでス?」


「その、魚なの?」


「違いますよ、哺乳類でもない」


「そうだよね変なこと聞いた」


「僕の星にうみはありません、しょっぱくなくて広くなくて、水はありまス僕らのまわりに常に」


「だからぬれてるんだ!」


「ふふ、ハナは僕らが気になるの?」


「そりゃね」


「素直。僕らもハナ、興味ぶかい」

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