第3話 鰯よりも弱く

 ポロ君が来てから一ヶ月が過ぎた。彼について分かったことがたくさんある。水の星生まれ、育ちはほとんど地球。 彼は体育に出ない。身体そく定は出る。身長は185センチ、まだまだ成長期。バスケ部が狙っている。おはしがまだ持てない。ご飯は普通のお弁当。時々パン、どうやらクリームパンがお好き。


 私はいつもの手帳に異星人の情報と、詩を書いていく。


 群れをなすイワシのような私たち

 まだ子どもだ、とても弱い

 世界がほろんでしまうから

 大人になることはできない

 大人になりたくない



 異星人の子どもたちは私にとって友だちだった。そりゃはじめはいじめるガキ大将もいたし、怖くてなき出す子もいたけど。それにそういった子たちは次々と転校した。


 ここは都会の数少ない学校。異星人の子どもたちへ教育をしたい大人は、私たちのことなんて一切考えていない。私は彼らをいじめるなんて気にはならない。もう私たちの方が弱いことを知っているから。もうこの星に未来がないことは分かっているから。お母さんみたいなお気楽な人だけ。上の人の話を信じているのは。


 だけど私は子ども、何にもできない。彼らの情報を紙に書いては、昔はやったスパイごっこをしてるだけ。まちこはごっこじゃなかったんだろう。だから転校した。でももうふかく考えないことにした。


 ふう、まずはこんなもんでしょ。


「何がですか?」


「ひゃあ!!」


「スいません驚かせて」


 一心不乱にペンを走らせていた私は飛び上がる。

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