第2話 鯨よりも深く

 私は忌引き開け学校に行った。まちこに会いたかった。それなのに、がっかりだ。その席には転校生のポロトスという異星人がいた。まちこは転校していた。驚かない。全然普通だ、へっちゃらだ。みんな突然親の転勤やら何やらでいなくなる。


 初めて異星人をみた時は驚いたけど先生も親も普通にしてた。ほとんどが地球の暮らしが長く話ができる。ポロトスはカタコトだったが人懐っこかった。


「歩路戸巣、っと」


「かん字難しいよね、書きやすいのにしたら?ひらがなもカタカナもあるし」


「面白いでス、ほら魚には魚がつきまス。ポも表現できるのスゴい!」


「たしかに!」


 ぴちゃん


 彼の体から何かのえき体がおちる。サッと拭き取るポロトス。何かと聞くと説明が難しいと。ずれるメガネをかけ直す。4本指に水かき。足は3本、大きくて上履きを履けないからヒタヒタという足音でやってくる。


 そうそうまちこは変わった子だった。意見をはっきり言い過ぎてよく先生から叱られていた。隣でなんで叱られるのがわからないんだろうと思っていた。だけど可愛いものが好きで、見知らぬクジラのキャラのチケットを持っていた。昔、それで夢が買えたという。


「お金で買える夢ってなに?」


「さあ?なんだろうね、可愛いから持ってるんだ」


 クジラはほろんだ。ほろぶとはもういないということ。うみの底でどんな夢を見ているんだろう。クジラの肉が好きだったお母さんとおばあちゃんは、可愛そうにと言ってたっけ。

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