銃士達の邂逅 p.4

 さっそく組織が用意したヘリに乗せられたメリッサ、ジーク、リーエン、シャムの四人は予定通り訓練施設へと運ばれた。


 ヴィクセントが言っていた通り、長いこと施設は使われていなかったらしい。

 二階建ての施設内には何の家具もなく、部屋の隅には苔や雑草が生えている。

 メリッサは割れたガラス窓から施設を囲む森を眺めていた。


 眼下に広がる森は一見穏やかな空気が流れているが、野生の動物の気配が一切ないことを感じ取れた。


 施設の周りには幾つかのドローンが飛び回っており、ドローンに搭載されたカメラがあちこちを写し回っている。


 自分たちがどう任務を遂行しているのか本部で監視しているのだろう、とメリッサは宙を舞うドローンを目で追いかけながら思う。


 すると、部屋の中心に立っていたジークがポケットから黒い端末を放った。

 端末は床に落ちると青色の光を放ち、部屋の中心にホログラム映像を映し出す。


「そろそろ時間だ。ブリーフィングするぞ」


 億劫そうにジークが言い、メリッサはホログラムの近くへと歩く。


『……了解コピー

『分かったー!』


 メリッサの耳に付けた通信機からリーエンとシャムの声が聞こえてきた。

 現在部屋にはメリッサとジーク以外に人は居ない。

 シャムとリーエンはメリッサ達がいる位置から施設の反対側で待機している。


 宙に映された映像には狼のような獣が映し出されており、背中からいくつもの触手が生え、先端の鋭利な棘がその獣の危険性を際立たせている。


「ターゲットはこの雑魚だ。時間が来たらこの施設に避雷針リードランスが送りこまれ、異界を展開して獣をおびき出す」

『わあ、犬みたい。可愛いのに、この子も獣なんだよね』


 通信越しでシャムが感想を漏らすが、他三人が無駄口を叩くタイプではないため、淡々とブリーフィングだけが進行する。


避雷針リードランスが破壊されたら任務は失敗。俺様達が異界内に入った獣を狩りつくせば任務達成だ」


 簡明に説明すると、通信越しにシャムがむむー、と唸る。


『内容だけ聞くと簡単そうに思えるけど……ジークは戦闘にあまり関われないんだよね?』


 シャムの懸念通り、ジークの膝に装備されているホルスターには、いつも収納されている銃はない。


「あぁ、俺様はチームへの命令と邪術の使用のみが許可されてる。ヴォルフの使用が禁止されている以上、俺様以外の奴が獣にトドメを刺す必要がある」


 リーダーとしての適正が試されてんだろ、とジークは苛立たしげに窓の外を飛ぶドローンに向けてボヤく。


 獣は通常兵器で傷をつけられても、無限の再生能力で傷を癒やしてしまう。


 だが、特殊な方法で製造されたスリンガーの標準武器、ヴォルフであれば獣の再生能力も阻害することが出来、さらにコアを撃ち抜けば討伐も可能となる。


 従って、ヴォルフを封印されたジークは指揮とサポートに専念せざるを得なくなる。


「俺様とメリッサはα地点で避雷針リードランスを防衛、シャム、リーエンはβ地点から獣の捜索及び討伐をする。以上だ。状況は逐一俺様に報告しろ」

『はーい。メリッサもジークも、仲悪いのにペアを組めて偉いよぉ』

「うるせぇぞシャム。任務遂行にやる気のねぇリーエンと銃を持ってない俺様じゃ獣が来た時太刀打ち出来ねぇ。消去法でこの組み合わせにしただけだ」


 そう言い残してジークは通信を切る。

 途端に静寂がその場に戻り、メリッサは黙ってジークに背を向けると部屋の外へと向かう。


「てオイ、どこ行く気だテメェ」

「獣を狩りに」

「アァ? テメェは俺様とここで避雷針リードランスの防衛つったろ。勝手にどっか行くんじゃねぇ」

「私一人で討伐しても結果は同じでしょ。貴方は後ろで控えてて」


 唐突に二人の間で険悪な雰囲気が流れ出し、その様子を眺めていたルーズが吹き出す。


『おぉ、ミッション開始前にもう仲間割れかよ』


 ルーズは無邪気に茶化すが、二人の間を飛び交う火花は収まる事を知らなかった。

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