銃士達の邂逅 p.3

 執務室に呼び出された四人は、呼ばれた理由が分からないままヴィクセントの前で整列する。


「おーし、集まったな。メリッサ、シャム、ジーク、リーエン。お前ら四人に任務を与える」


 行儀悪くヴィクセントは机に足を乗せ、四人を眺めながら酒を飲み続けていた。


「任務?」


 さきほどの会話の流れから何か嫌な予感がし、メリッサは静かに訝しむ。


「あぁ、とある施設の防衛任務だ。だが、この任務が失敗に終わったらお前達四人を強制的に訓練所へ叩き戻すか、組織から抜けてもらう」

「は? どういうことだヴィン」


 先刻までメリッサとヴィクセントが行ったやりとりを、ジークが再現する。


「ん? え? なになに? どゆこと?」

「……」


 シャムは困惑して目を何度も瞬きし、リーエンは押し黙ってことのなりゆきを傍観する。


 するとヴィクセントは「ふぅ」と酒臭そうな息を吐いてサングラスを外し、威圧感のある目つきで四人を見据える。


「メリッサは度重なる命令無視と単独行動。ジークはチームの指揮で横暴な命令をし、隊員を窮地へ追いやったミス。シャムは持ち前の落ち着きのなさから暴走して護衛施設を倒壊。そしてリーエン、任務へのやる気のなさから戦線離脱。どれを取っても前線に立たせるに値しない所業ばかりだ」


 それぞれが犯した行動をありのままに並べられ、メリッサを含め誰も言い返せず、全員が口を閉じる。


 ヴィクセントは席から立つと、テーブルの端に置いていたリモコンを拾ってボタンを押す。


 すると、部屋の照明が落ち、部屋の壁にかけられているスクリーンにプロジェクターの光りが映る。


 そこには森林地帯を衛星から撮った写真が映し出されていた。

 広い森の中心に、ぽつりと灰色の建物の屋上が表示されている。


「ここは随分前に放棄された組織の拠点だった場所だ。今は実践訓練所として使われている」

「え? こんな施設あるの知らなかった」


 スクリーンに映されている写真を見てシャムは呟き、メリッサも内心同意する。


 訓練時代にいくつかの実践訓練を行い、その際に世界中に点在している訓練所も共有されていたが、この施設については知らされていなかった。


「そりゃそうだろうな。この訓練所は獣狩りへ現場復帰する者や、お前たちみたいに実践経験がありながら、戦闘員として適正が怪しくなった奴らを再試験するために使われてる」


 実際に使われるのは十数年ぶりだがな、とヴィクセントは付け加える。


 そもそもこの処遇自体がそうそう起こることではないのか、とメリッサは思いつつも、どうしても不服に思うことがあった。


「ヴィン、一つ良いかしら」

「おいヴィン、一つ良いか」


 メリッサが手を上げると同時、ジークが一歩前に出て同じセリフを吐く。


 邪魔をするなと言わんばかりにメリッサはジークを睨むが、ジークもまたメリッサを睨み返す。


「あー、なんだ?」


 面倒臭そうに聞くヴィクセンに、メリッサとジークは互いを指さしあう。


「これと組むのだけは願い下げよ」

「こいつと組むのだけは願い下げだ」

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