第3話
はじめて彼女が上に乗ってきた日。なぜかその流れで彼女と一緒に帰った。
彼女は、喋れないのだろうか。何も言ってこない。
そのかわり彼女は、自分にからだをくっつけることで意思表示をしてきた。言わんとしていることは、ぜんぜん分からない。でも、彼女が笑顔なので、それをとりあえず眺めた。
その日は何事もなく帰った。
夜、自分の上に乗ってきた彼女のことを思い出して、ちょっと眠れなかった。何を伝えようとしてきたのか。
次の日、普通に登校して。普通に椅子に座って。なんとなくぼうっとしていたら、また彼女が寄ってきた。そして座る。
「なんで?」
「見て」
彼女の視線が、周りを差す。自分も、周りを見回す。何も起こってない。何もない。
「誰もわたしたちを見ていない」
「うん。そうですね」
みんな携帯端末とか見るのにいそがしいもの。
「すごい」
何がすごいのか、正直分からなかった。
でも、彼女が笑顔なので、それを眺めていた。彼女の脚が挟んでいる腰のあたりと座っている重みの当たる部分が、暖かい。
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