第2話
彼女のほうから、近寄ってきた。
自分はべつに、彼女を眺めていられればそれでよかった。好きでもきらいでもない。視界に入ったときだけ、なんとなく、ぼうっと眺める。それだけ。無理して視線を送るとか、そういうカロリーの高いことはしたくない。
彼女を見て、彼女の無地の服を見て、なんとなく眺める。それだけ。ゲームセンターで、自分がいつもやっているゲーム、の、隣の全く知らないゲームを眺めるみたいな。そんな感じ。興味はあるけど何かアクションを起こすほどではない、ぐらいの。そんな感じの。
だから、彼女が近付いてきたときは、少し離れようかなと思った。
視線に気付いたときの彼女の笑顔は好きだったけど、べつに言い寄られても困る。
近寄ってきた彼女は、自分の上に乗ってきた。
自分の。
上に。
乗ってきた。
「なんで?」
椅子に座っている自分の上に、こう、自分の腰を彼女の脚が挟むようにしてて、なんというか、近い。顔がよく見える。そして近い。
彼女。笑顔。
顔が近い。
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