《終着》――ノット・フィクション・トゥルー・デイズ

 銃声ガンショット悲鳴デスボイス轟音BOOM、そして嘲笑ハイ・ラフター――


 粗悪な睡眠薬クロロホルムの見せる悪夢ダーク・ライが霧散し、現実リアルが像を帯びてゆく。


 少女は頭痛に顔をしかめながら、ゆっくりと目を開けた――

 視線の先に広がるのは、地獄絵図ヘルズアートッ! 地を埋め尽くす累々の死体メニー・メニー・ナムアミダブツッッ!!


 その中にはなんと、五芒星唱会ポエム・ペンタゴン最強の戦士、鎧袖一触のガソリンイーターの生首も転がっているではないか!?


(こんな無茶苦茶が出来るのは、彼だけ……)


 そう、時は決戦――舞台フィールド時と鐘の城キャッスル・オブ・タイムベルが天守閣!

 今まさに、激闘を繰り広げる二人の姿が在りッッ!!


「ホッホッホ、諦めよアキハル! く死にたもれ!」


 白黒モノクロ狩衣マロ・スタイルに身を包み、黄金エルドラド烏帽子キャップ戴く者クラウニー――

 五芒星唱会ポエム・ペンタゴン首魁ビックボス五芒星ごぼうせい歌麿うたまろであるッッ!!


まだノーまだだゼノー・サレンダー……」


 もう一方は、V字サングラスの奥に不屈の闘志を秘めた、半裸ハーフ・ネイキッド黒頭巾ブラック・フード――アキハル。


 その肉体には夥しい傷が刻まれ、全身が血に塗れ、フラフラと揺れながらなんとか立っている有様だった。


「余の異能奥義ラスト・エヴォルヴ陰陽オンミョウキネシスを喰らっても死なぬとは不敬罪ギルティ・ギルティぞ! 君、死にたもれィィッッ!!」


 歌麿うたまろが手をかざすと妖しげな五芒星ミスティック・ペンタゴンが浮かび上がり、アキハルへ放たれたッッ!


「ナ”ア”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ッ”ア”ッ”ッ”!!」


 摩訶不思議かつ鈍重トリッキー・アンド・ドープ効果音エフェクトに包まれたアキハルは悶絶ッッ!


「ホホーーッ! 異能開花エヴォルヴァーによって覚醒アウェイクした平安貴族ヘイアン・ブルーブラッド五行細胞サイキック・パワーは無敵じゃァ!!」


 凄まじいpsycho powerサイコ・パゥワーによる蹂躙……!

 アキハルは反撃に転じるどころか、その場から動くことすら出来ないッッ!


 それもそのはず、連戦に次ぐ連戦でアキハルの疲労は限界に達していた!


 いかな魂で立つ男アンストッパブル・モンスターとて、いつ成仏サヨナラしてもおかしくない……!


「もうやめて! 早く逃げて!」


 少女の呼びかけに、アキハルは不敵な笑みを浮かべる……!


「よォ、待たせたな迷える子羊ロスト・ユー。話は全部そこのクズから聞いてるゼ……お前がどこから来たのかも、お前の目的も、全部……」


 アキハルの口から、ボタボタと血が零れる。


「最初から思ってたんだ。俺とお前はよく似ているニアリー・イコール……。

 根源とするものルーツ寄る辺とするものマイルストーン……。なにもかも似た者同士ミラー・イマジン……。

 大切なものサウンドリリック感情エモーション……同じ形をしているから、よく分かる……」


「いいから逃げてください! いまのアナタでは勝ち目が……!」


構うなノー・センキュー。いい大人が、癇癪かんしゃくを起しているだけサ」


 アキハルは超ド級最終弦楽鈍器ドヴォルザークの矛先を歌麿うたまろへと向けた。


「そういうワケだ。俺は諦めねェゼノー・サレンダー史上最悪クソ野郎ファッキ〇ビックエモーショナルマザーファッ〇ー


「やかましい! 辞世の句サヨナラ・ポエムむのじゃ!」


 妖しげな五芒星ミスティック・ペンタゴンが打ち出され、もはやこれまでと思われた瞬間――アキハルは地面を転がっていたッ!


 迷える子羊ロスト・ユーが彼を突き飛ばし、身代わりスケープ・ゴートになったのであるッ!


「ぐううぅぅぅぅーーーッッッ!!」


馬鹿なファッ……!? なにしてやがる……!」


 ボロボロの体を引きずり、全身ズタズタに引き裂かれた少女を抱き寄せる。


「オイ! 大丈夫か!」


「……人の心配をしている場合じゃないでしょう、あなたは」


 アキハルの傷だらけの掌に、暖かい光が灯る。


「この活力に満ちた光バイタル・ライトは……」


異能奥義ラストエヴォルヴ名前のないうたメモリーズ――気休めみたいなものですけどね。傷の完治は無理でも、一発くらい全力で叩き込める力なら、あげられます」


 少女は血を吐きながら「私がこんな異能チカラを使えるなんて、驚きましたか?」と笑う。


「ふふ……おかしいですよね。なにもかもブッ壊してやろうって決めたのに、与えられたのは人を回復させるだけの異能チカラなんて……なんて皮肉な話。でもそれだけが、母の遺してくれたものだったんです……」


 口調が少しずつ弱々しくなり、アキハルにかざされた光も消え去ろうとしている。


「もう疲れちゃいました。こんなもののために十二年も振り回されて、馬鹿みたい。私は一体、なにがしたくて生まれてきたんでしょう……」


 少女はゆっくりと目を閉じて、最後に少しだけ血を吐いた。


 アキハルはまだ温もりの残された掌を、やさしく握りしめた。


「――どんな才能チカラを持って生まれたかじゃなく、どんな風に生きたかライブ・ア・ライフ、だゼ」


 己が両足で立ち上がり、そして超ド級最終弦楽鈍器ドヴォルザークを握りしめる。


「お前は生きた。例えどんな日々であろうとも、力の限り――だからお前が生きてきた日々は、決して無かったことにはならないノット・フィクション・トゥルー・デイズならないんだよノット・フィクション迷える子羊ロスト・ユー


茶番は終わりかしらけたのォ~? 手籠めにしようと思っていたメスガキもくたばりおってからに、興ざめじゃ!」


 歌麿うたまろはアキハルにトドメを刺すべく、妖しげな五芒星ミスティック・ペンタゴン召還したサモン・ナウ……!


「何度かかってこようと無駄じゃ! 今度こそ死んでたもれェェェ!!」


「くたばるのはテメェだ、クズ野郎ッ!」


 飛来する妖しげな五芒星ミスティック・ペンタゴンに、超ド級最終弦楽鈍器ドヴォルザークが激突ッッ!!


 凄まじい衝撃波が飛び、火花が散るッッ!!


「バカな!? 余の陰陽オンミョウキネシスを真芯で捉えたというのかジャスト・ミート!?」


「ダァァァラッシャァァァッッ!!」

 

 渾身の雄たけびワイルド・クライと共にドヴォルザークが振り抜かれる! ピッチャー返しカムバック・ライナーッッ!!


 BGYRRRRRSH!! 響き渡る痛恨の旋律メロディアス・クリティカル・リザウンドッッッ!!


 時速三億光年スーパーソニックで打ち返されたpsycho powerサイコ・パゥワーが歌麿の胴体を直撃、

 粉砕・玉砕・爆裂四散メチャクチャになったッ!


因果応報Karma is go around完了finisher――」


「バカな……! 余は五芒星ごぼうせい歌麿うたまろッ! ヒトを異能開花エヴォルヴァーによって新たな時代へ導く、新世界のゴット……! それがこんな結末を迎えるなど! これは夢だ、悪い夢だッッ!」


その通りザッツライ。夢だったのサ、なにもかも」


 アキハルは十二mgの幸運ルーシー・ストライク三本でキメながらトリプル・ドライブ、決断的に歩み寄る。


異能開花エヴォルヴァーも、人には過ぎた異能チカラも――みんな、麻薬過剰摂取者オーバードーザー悪い夢ダーク・ライあるはずのない技術エラーテクノロジー元どおり跡形も無くなるフューリー・ロスト、それだけ話サ――」


「や、やめろ! 渾沌カオスの時代はまだゴッドを必要として――」


神は死んだアーメン


 アキハルの正拳リアル・フィストが歌麿の顔面を捉え、彼岸花が咲いたブラッディ・ブロッサム


「――やれやれ」


 頭部を失った首魁ビックボスが、壊れた人形のように崩れ落ちた。


「メランコリーだゼ」


 アキハルもまた、血に塗れた己の手をじっと見つめながら、ゆっくりと地面へと倒れていった。

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