《密告》――ダーク・ナイト・インフォメーション

 迷える子羊ロストユーの情報は、アキハルにとって有益なものばかりだった。


異能開花エヴォルヴァー摂取しキメた人間の大半は、進化の促進エヴォルヴに耐えきれず死ぬ――ですが、ごく稀に適応できる人間もいます。それが五芒星唱会ポエム・ペンタゴン幹部エライヤクザたちです。


『風拳のランスター、圧壊のフルハーネス、血牙のブラッドレイ、鎧袖一触のガソリンイーター。そして首魁ビック・ボス五芒星ごぼうせい歌麿うたまろ……。


忠臣蔵ちゅうしんぐらを焼き払いランスターをった以上、彼らはあなたを殺しに来る。逆に言えば、異能者エヴォリッシャーである彼らを殺せば、五芒星唱会ポエム・ペンタゴン崩壊オワコンも同然です。


『彼らの異能チカラはさっき教えたとおり。異能者エヴォリッシャーは副作用で体のどこかに五芒星ペンタゴンが浮かんでいますから、気を付けて――』


五芒星ペンタゴン、ねェ」


 アキハルは一人呟きソロ・ツイート、テキーラ・バー「伊能忠敬いのうただたか」の扉を開く。

 そのまま奥端のテーブル席へ向かい、新聞紙に顔を埋めた老人の対面に座った。


調子はどうだヨゥ・メーンロバの耳ドンキーヤー


 上撰じょうせん第六天魔王ノブナガ」の一升瓶をゴトリとテーブルに置くと、老人は億劫そうに口を開く。


「いくらお前さんの頼みでも、五芒星唱会ポエム・ペンタゴンの情報は安くない」


「分かってる」


 アキハルは胸ポケットからCD-ROMを取り出し、「第六天魔王ノブナガ」の横に並べた。


「俺の3rdアルバム「致死毒嵐キャサリン」。アンタが最初のリスナーだ」


「フン。最初からそうすればいいんだ」


 ロバの耳ドンキーヤーはCD-ROMをひったくると、代わりに古ぼけたノートを放り投げる。


「幹部の異能チカラ特徴フィーチャー異能開花エヴォルヴァ―副作用デメリット……どれも愛しい子羊フレンド・シープが言う通りだったよ。期待外れの結果かね?」


「いいや期待通りさ。、な」


 アキハルは席代チャージ代わりに持ってこられた安酒チープ・テキーラのジョッキを一口で空けた。


「肝心なのは、迷える子羊が一体どこから来たのか? ってことさ、ロバの耳ドンキーヤー


「それは情報屋ではなく、神にでも尋ねるべきだな。私とて、この街のすべてをっているわけではない。だが……」


 老人は再び新聞紙を手に取り、文字の壁で顔を覆った。


「英雄は色を好む。愛人関係ワン・ナイト・ラブ――首魁ビック・ボスとの間に生まれ、そして闇に消えていった子供が、この街にどれだけいると思う?」


手短に頼むゼプリーズアンサー


淡い黄昏色パステル・カーネリアン――異能開花エヴォルヴァ―の開発者も同じ髪の色で、メリーと名乗っていたらしいな」


 心臓ハート早鐘を撃つクイックドロウ


 手は自然と、壊れたペンダントブロウクン・アミュレットを握りしめる。


「思い出すかね? 湾岸戦争バトル・オブ・モンゴルウォー時代にお前が失った、想い人の面影を」


「いいや。もう忘れちまった」


「自分には嘘を吐けないはずだ」


余計なお世話だゼシャラップ情報屋ドンキーヤー


「アキハル。もしお前に真実を知る勇気があるのなら、首魁ビック・ボスと会って直接話をすべきだろう。もっとも――」


 ロバの耳ドンキーヤーは新聞紙を置き、アキハルに手をかざして見せた。




 その掌に、五芒星ペンタゴン瞬いていたトゥインクル




「ここで私に殺されなければの話だがね」

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