《圧壊》――クラッシュ・オブ・バインド・フルハーネス

 注射器アンプルを放り捨てた老人は、ゆっくりとアキハルに視線を向けた。


「糸を張り巡らすのが私の仕事なのだよ、アキハル」


 テキーラ・バーに轟く阿鼻叫喚ストリーミング・パニッシャーッッ!!

 なんの前触れもなく現れた黒縄ブラック・ワイヤーが、瞬く間に店内を埋め尽くすッ!

 それは意志を持つかのように、次々と人々を拘束していくッッ!!


「情報屋に身を置いたのも、五芒星唱会ポエム・ペンタゴンに仇なす敵をいち早く察知するためだ」


ロバの耳ドンキーヤー……このfake野郎が……!」


「分かっているなら真の名トゥルーネーム私を呼び給えコールミー、と」


 アキハルは全自動掃射砲ガトリングガンを構えたが、全身に黒縄ブラック・ワイヤーが絡みつき身動きが取れなくなるッッ!!


異能奥義ラストエヴォルヴ漆黒禁華牢獄ブラック・ローズ・ガーデン……悪く思うな。私の異能チカラを知られている以上、確実に殺すには不意打ちしかなかった」


くそファッ〇ュー。この狭い店内じゃ超ド級最終弦楽鈍器ドヴォルザークは振るえねェ)


 打開策を探るアキハルの脳裏に、迷える子羊ロストユーの言葉が蘇る!


『圧壊のフルハーネスは、自分の髪を自在に伸ばす異能チカラを持っています。金剛石ダイヤモンドすら粉々に砕く力で圧殺されますから、絶対に捕まってはいけませんよ』


愛しい子羊フレンド・シープのアドバイスは役に立ったかね? アキハル」


 黒縄ブラック・ワイヤー凄まじい圧力が加わるプレス・ウルトラ……!

 と同時に、店内に響き渡る断末魔デス・ボイスッッ!!


「グオワーーッッ!?」


 バーテンダーや客たちが、耐えられず次々に圧壊クラッシャー……! 店内は血の海に染まった!


「やれやれ。相変わらず加減が効かない異能チカラだ」


 老人は悠々と席に座り、音楽プレーヤーを耳に装着した! 余裕の仕草ッッ!


「まぁ、気にすることはない。私は君の新作をじっくり楽しませてもらおう。遠慮せずゆっくりと死んでくれ給え」


気遣い無用ノー・プログレム


 アキハルの眼に妖しい光が灯るッ!


「すぐ終わらせてやるよ、fake野郎ッッ!!」


 その瞬間、彼は凄まじい速度で振動を始めるバイヴレーション・ソニック・ナウ……!


 光速の上下運動アップダウン・エクササイズによる陽炎ヒートヘイズが発生、その姿シルエット幻影に揺れるファントムダンスッッ!!


「……まさか、アキハル!」


 老人はその意図に気が付いたが、もう遅いッッ!!


くたばりやがれファイヤァァァァッッッ!!」


 摩擦によって生じた火花が、黒縄ブラック・ワイヤーに触れ過たず発火ボンファイアリットッッ!! 次々と連鎖シリアル・チェインした火種が、あっという間に老人を包み込んだッッ!!


「……見事だ、アキハル。打つ手なしチェックメイトだ」


 老人は何の抵抗も見せず、席についたまま不動……!


「お前の勝ちだ。まさかこんな方法で私の異能チカラを打ち破るとはな」


「……簡単にアッサリ負けを認めるじゃねェか」


「私は役目を果たした。時間は十分すぎるほど稼いだからね」


「――なんだと?」


「最高にいい気分だよ、アキハル。お前の3rdアルバム「致死毒嵐キャサリン」――素晴らしきレクイエムと共に死んでいけるのだから」


ロバの耳ドンキーヤー、テメェ……」


「私は昔からずっと、お前の歌が好きだったよ。それだけは噓偽りのない本当の気持ちさ。……最後に一つ、言い残しておきたくてね」


 老人は炎に包まれたまま、ニコリと微笑んだ。


「ところで――そろそろ、愛しい子羊フレンド・シープの所へ行ってやらなくてもいいのかね?」


 その言葉を最後に、老人の肉体は炎の中でボロボロと崩れていった。


「――やれやれ。メランコリーだゼ」


 老人の暗喩が示唆するところを読み取ったアキハルは焼け落ちるテキーラ・バーを去り、夜の闇ミッドナイト駆け抜けるオーバーラン……!


「俺の楽団衆バンド・メンバー誘拐テイクオーバーするたァ上等だ。お望み通り真っ向からブッ潰してやるゼ五芒星唱会ポエム・ペンタゴン……!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る