赤いゲヘナを通り、地底へやって来た。
時風 来 は、死末 終の空間移転魔法により、赤いゲヘナの道を通っていた。
「どういう原理なんだ。」
赤いゲヘナの道を通りつつ、私は、死末 終に話しかけた。
「存在濃度の操作によって、空間を飛ばして、亜空間に移動したのさ。」
赤い空間、渦巻きが見える、空は紅く、地面は紅い。
「道は、分かるのか。」
「地底を知っているのは、御前だろ。来。」
確かに地底に、文明があると、湊川 翔の奴は言っていたけれど、何処にあるのか迄は聞いていなかった。
「場所迄は、訊いていなかった。」
「そうか。存在を辿っていくしか無かろうな。地下で、地底人ともなれば存在も掴みやすいだろう。見えるか、存在の帯が、無数の存在が、灯が輝いているのが見えるか。」
終は、目を瞑って意識を集中させている。
私は、終を見習って、意識を集中させた。
しかし、何も見えなかった。
「存在を掴んだか。」
「いいや、私には、未だ何も。」
「最初は、そんなもんだ。地底の場所が特定できた。こっちだ行こう。」
赤い、空間の中には、風が吹いている、樹木が立って居る、建物が立ち並んでいるが、命はなく、形だけだ。
終の後を付いていく。
何処に進んでいるのか、私には、全く分からなかったが、終は、存在を気配を見て、どんどん、進んでいく。不気味な程に静かな場所であった。
聞こえるのは、歩く足音と息遣いだけだ。
「赤の空間の中では、目的の場所へ行くのに、空間を圧縮する。存在の認識が、濃ければ濃い程に、移動距離は短くなる。」
体感で言えば、三十分くらい経った時だろうか、終は、立ち止まった。
「うん。此処だ。人間とは違う気配を感じる、ずっと下の方で、感じるんだ。」
終は、右手を振るう、すると、赤いゲヘナが、目の前に現れた。
「さあ、出るぞ。」
終は、赤いゲヘナに、右脚を乗り出した。
私は、終の背中を見ていた。
終が、ゲヘナを通り過ぎた時、後に続いて、外に飛び出した。
外に出ると、岩山だった。
「岩山か。地底じゃねえじゃねえか。」
終は、落胆した様子であった。
岩山。何処なのだろう、全く知らない所に来てしまった。
「洞窟があるぞ。入ってみるか。」
終が、洞窟を見つけたようである。
洞窟の中に入ると、入り口の辺りに、仮面を被った男がいた。
「こんな処に、人間か。珍しいな。」
仮面の男は、私達の事をまじまじと、見た。
「この洞窟に用か。」
仮面の男は、私達に話しかけた。
「ああ、地底人に用があるんだが、あんた、知らないか。」
終は、ぶっきらぼうに、仮面の男の質問に答えた。
「ああ、おめえ達、地底人の存在を知ってんのか。まさか、地底を荒らすつもりじゃあ、ねえだろうなあ。」
地底の事を何か知っていそうだ。地底人と繋がっているのかも知れない。
「地底を知っているのですか。」
「知っているも何も、俺は、地底生まれの地上育ちだ、名はサマエルという。」
相手は、地底人らしい。
サマエルというのは、湊川 翔の言っていた地底の住人の一人だ、倒れていた湊川 翔を助け、地底に連れて行った張本人であった。
「私は、時風 来 、湊川 翔の友人だったものだ。」
サマエルは、厳か
に、感慨深く、私を見た。
「なるほど、其れで、そちらの方は。」
サマエルは、死末 終を見て、尋ねた。
「私は、死末 終。彼の連れだ。」
サマエルは、少しの間、思案した後、言った。
「湊川 翔は死んだんだったな。付いて来いよ、お前等に話のある人が居る。」
サマエルは洞窟へ入っていった、私達は、後を付いていく。
洞窟は、薄暗かったが、ドラマカライト鉱石や金色に輝くノルドイド鉱石、漆黒に輝くマカベス石が、辺りを照らしている。
「珍しい鉱石だ、核爆発の衝撃に耐える鉱石、ドラマカライト鉱石は、貴重で、高価なものだ。」
終は、鉱石を見て、驚嘆していた。
「何千年も昔、この世界のこの星に隕石が落下した、残骸が地下に埋まってんのさ。宇宙からの飛来物だね。」
サマエルは、答えた。
湊川 翔も、確か、同じような事を質問したと、言っていた。
下向きに傾斜の続く洞窟を、十分程歩くと、階段が見えた。
階段を、更に数十分降りると、地底へ続くという、エレベーターがある。
エレベーター迄来る道のりは、迷路であった。入り組んでいる。岩山の頂上付近の洞窟の奥に、まさか、文明があるとは、誰も考えないだろうと思った。
「さあ、乗って、地下5000Mへ行くよ。」
エレベーターに乗って、十分程すると、広い空洞のある処に来た。
「地下のマグマの熱エネルギーを吸収する、エルドラド鉱石の効能で、地下1万メートル迄は、平均気温20度前後に保たれているのさ。マグマのエネルギーが日光の代わりにもなる。」
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