科学者 カーネル・ブラウドの伝説
カーネル・ブラウド。
死末 終が話す事によると、教科書に出てくる、彼のいた存在濃度の世界で知らないものは殆どいないとされる程、有名な人物。生れた時からの奇行。生き物を殺して解体する、八歳の頃、好奇心から両親を殺し、遺体を解剖した。
遺伝子、細胞、DNAを調べた。
だが、捕まらなかった。
当初は哀れみさえ、されて居た。
親を子供が殺すはずが無い。証拠も不思議な事になかったのだ。
彼が何度も犯罪を繰り返す様になり、漸く事件の真相がわかった。
実験の為に物を盗んだ。
一時期は、人を殺す事に嵌っていたらしく、殺せばどうなるのか疑問に思った人間を殺したり、国家の重要人物を殺して、世界がどうなるのかと、好奇心から、世界中の人間を虐殺した。
世界政府は、ブラウドを特定危険人物として登録した。
ブラウドは、一通りの殺しをすると、殺しに飽きたらしく、研究に没頭する様になった、どうして、ブラウドが犯罪者であるのに、捕まる事なく、研究が出来ていたのか、理由は簡単だ、整形外科技術が優れていたからだ、人を殺し解剖するにつれて彼は、自分の身体を整形する為、足が付かないのだ。
更に、遺伝子やDNAを残さない為に、開発したウイルス、ドグマ003によって、遺伝子を変異させた、彼は自分の遺伝子を自在に操る事が出来たという。
故に、証拠が見つからなかったのだ。
監視カメラは電磁波で壊される。
彼を見た者は、電磁パルスで、丸焦げになって生きてはいられないのだ。
一度、ブラウドは、大学に通っていた事がある。
殺しを辞めていた時に、研究の為に、通っていたのだ。
彼が死んで30年後に分かった事だ。
優秀な生徒であったらしい。
まさか、教授たちも生徒も、、彼が、30歳を超えた男とは思わなかった、18歳の青年に思えたといった、更に、まさか、彼が凶悪な犯罪者ブラウドであるだなんて、想像だにしなかったのである。
彼は、数学、化学、物理、あらゆる分野にわたって研究をしており、評価されていた。卒業後の行方は分かっていない。
彼は大学を卒業後、ロケットを自作して、無人島から宇宙に飛んだ。
適当な人工衛星を星から何度も飛ばし、宇宙に住処を作った。
科学者は、謎の知的生命体が宇宙にいるのだと勘違いし、信号を送ると、近づくと殺すと、脅されたという。
宇宙研究所で研究していたのである。
ロボットと人工知能により、自動化されたシステムで、彼の研究は彼自身で完結していた。
宇宙に研究所を作るのは大変だ。
莫大な金が掛かるし、不可能だ。
工場も必要だ。
彼は、国に対して核兵器で脅しを掛けていた。
バラス荒野の川の付近に、研究所はあった。
世界政府に対して反発的な国家と繋がり、取引をし、研究に必要な機材を買い揃えていた。
人工知能や、人造人間による、兵隊は研究所を守っている。
手の付けようがないのだ。
周辺国家のものは、彼を畏れ、神のように敬った。
先進国家よりも優れた技術を持つ、勢力が存在する。世界政府がバレてはならない真実。政府は事実を隠蔽した。
ブラウドは、研究の中で遺伝子に物理の法則、重力、電磁気力、強い力、弱い力には無い、未知の力が働いているのを発見し、意力と呼んだ。
意力は、人間の願いや祈り、念によって、働く力らしく、運命という確率を変える事ができるらしい。
意力の研究をするにつれて分かった事は、生命の意識であった。
生命の意識、何処へ向かっているのかはブラウド博士でさえ解明されなかった、が確かにあるのだという。
宇宙に意識はある、生命にさえ、あらゆる物質、物体、は、収束し終わる。
生命は一つの形態だ。孰れ別のものへの生贄となる。
生命の意識の研究から、願いや念を発する時、粒子が発生する事を発見した、粒子は時間や空間、重力、電磁気力、強い力、弱い力の干渉を受けない、更に、先に起こる未来を捻じ曲げ、運命を変える事が出来る事が分かった。
運命の分岐がある事を発見し、ミルノ粒子は世界を構成する粒子である事が分かった。
存在濃度の存在が明らかとなった。
額に十字架のある一族の存在が明らかとなり、世界から迫害され始めた。
人間の収斂進化の成れの果てなのだという。
ブラウドは500年生きた。
死んだのは10年前だ。
実験の途上、事故に遭って死んだのだというが、真実は分からない。政府が隠しているだけかも知れない。
「天才科学者だな。」
科学とは、何なのだろうと、考えた。
素晴らしい、人類の奇跡、叡智だと考えて居た。
たった一人の科学者が、世界を変えた。あったのは知的好奇心だけだ。
ブラウドは人を殺した、然れども、大発見をした、成果は命以上の価値があったのかも知れない。いわゆる表彰ものだったのかも知れない。
世界から悪と見做されているが、彼がいなければ、ミルノ粒子の事も額の事も、存在濃度の事さえ、分からなかったのである。
「ああ、間違いなく天才さ。何を考えて居たのか分からん天才さ。額の一族が迫害され始めたのは、ブラウドのせいではない、世界政府のせいだ。存在濃度を操れる、額の一族を恐れた政府は。迫害を始めた。ブラウドは実験で負傷して動けない状態だったらしい。」
「もし、仮にブラウドが生きていれば、額の一族はブラウドの実験動物になっていただろうか。」
「どうだろう、もし仮にそうなったとすれば、ブラウドは犯罪者だ。差別ではないにしても、好奇心から、実験の為に、額の一族を利用するだなんていうのは、許されない。只、奴がいなければ、額の十字架の意味も分からない儘、普通に過ごしていた事だろう、何の疑問も抱かず、暮らしていただろう、博士が書いた論文に額の十字かについての考察が書かれていた、一族は理解したのだ、額の使い方を存在濃度の操り方を、しかし、その犠牲に数十人の額の一族の人間は、実験動物にされていた事が論文から明らかになっている。
額の十字架を解剖し、遺伝子との相互作用を調べたのだ。
十字架の移植や複製にも成功しているらしい。
が、真の能力は、生まれ持ったものであり、才能や、経験が重要だとの事であった。
「ブラウドは、危険だ。」
私は、終をみた。
終は、思考した後、言った。
「ブラウド、一度会ってみたい人物だ。奴に、真実を話してほしい。額の一族とは何なのか。」
危険だと思った。ブラウドに会うのは危険すぎる、何を考えて居るのかが、分からないのだ。天才だからこそ危険なのだ。狂気なのだ。
「ま、死んで終ってるかも知れねえし、会える確率は低いだろうよ。」
「まあ、ね。」
「話している内に着いたみたいだ。」
麻羅宇遺瓦礫駅だった。
麻羅宇遺は、火山地帯であり、温泉が多くある、地熱発電所もある。観光スポットとして有名だ。鉱石もよく取れる。
麻羅宇遺の、瓦礫市から、十キロ程離れた処に、火山地帯が或る。
火山に向かって走っている軽トラックを見つけると、荷台に飛び移った。
火山に着くと、飛び降りて、敬礼した。
「便利なもんだな。姿が見えない、認識されないっていうのは。」
終は、苦笑いしつつ言った。
「ああ、確かにね。」
何処か皮肉めいてきこえた。
軽トラックの運転手は、車から降りると、ピッケルを持って火口へ向かった。
「鉱石の採掘に来た人らしいね。」
良く見ると、鉱夫のものと思われる、トラックや、軽トラックが数十台停められていた。
足元には所々にマグマが流れている。
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