その男の名は、カルドレア
万物を調べ上げてはいたが、宇宙までは、知らなかった。エテナの目は、あくまで、地球上のあらゆる場所を知っているにすぎない。
欠陥だらけの、目だ。
エテナの目は、物語製作に於いて、ある種のチートなのだ。
過去の回想の時、これ知ってるわ、となるのだ。
かつての、歴史で、だとか、忘れられた記憶で、というのが、通用しないのである。実に厄介な能力である。
エテナは、私の肉体を使って、秘密結社を創設した。
エテナ教だ。
全ては、ここから、始まった。エテナ教の、創始者は、エテナ・ヨルク、2021年前、この地球に現れた隻眼の女だったという。
エテナ教は、創始者が死ぬと、次の司祭が、現れる、司祭は、決まって隻眼で、数日後に、エテナの目を持って現れ、全てを知るのだという。
エテナ教は、よくも悪くも、合衆国を創った。
エテナ教は、世界中で、信仰されている。
エテナ教は、人間に、倫理を教え正しさを教えた。
しかし、人間は、バカな生き物だ。エテナ教は、悪用され続けた。戦争の大義名分に利用され、御金儲けに利用された。
歴代のエテナ教司祭は。何もしなかった。その様子を見て、愚かな人間だ。と、人間を見捨てた。
エテナ・ヨルクは、どうして、エテナ教を創始したのか、其れは、わからない。見れるのは、映像だけだ。気持ち迄は、くみ取れない。所詮、エテナの目とは、その程度の目でしかないのだ。
かつては、この眼であれば、エテナ教の司祭として、直ぐに、祭り上げられていたらしいが、今では、迫害の対象だ。気色の悪い目の持ち主。といって、石を投げつけられるのだ。
だから、私は、親にも、親戚にも、従兄にも、友達にも、誰にも、この眼の事を曝した事は、なかった。
額に十字架の呪を受け生まれた、あの子が、革命の為に死んだのは、衝撃だったのだ。
彼は、死んだしかし、その意志は、死んではいなかった。
彼の志は、革命の意志を生み出し、現在進行形で、世界の革命を行っている。
姫彦 社は、知っていた。
処刑の日。
私は、彼を見捨てた。
彼は、言った。
私が、死んでも、一族の復興を成し遂げてくれと。
私は、了承した。
屈辱の歴史を繰り返す事は、許されないのだ。
カルドレアという、眼帯を付けた、男が、私に会いに来た。話が、あるのだといった。
2023年 五月七日の時分であった。当時の私は、十一歳であった。
彼は、奥村 恋の従兄なのだといった。
奥村 恋に憧れていたのだという。処刑に感動したらしい。
「あんた、存在率って、知っているか。」
「ああ、知っているさ。世界の法則の一つだ。学校で、勉強する事だ。」
「そうだ。其れが、操れる者が存在するとしたら、どう思う?。」
「不可能さ。現代科学じゃあ。」
男は、そう言って、鼻で笑った。
「只、お前さんは、知っているかも、しれねえが、かつての、額に十字架のある、一族は、其れが、可能だったのさ。かつての大戦で、大敗した、お前さんの祖先は、別の世界に逃亡したと、言われている。」
やはり、この男、何かを知っている。
「詳しいな。歴史学者か。何かか。」
「ま、そんなところさ。」
何処か腑に落ちない部分もあったが、そういう事にしておいた。
「はああ、そりゃ、お偉い学者なんだろうねえ。何て言ったって、あの人の従兄だ。」
「ああ、まあね。」
カルドレアは、落胆していた。
「それで、どうして、知っているんだ。」
「企業秘密さ。その力、開眼する方法、必要じゃあないか。」
どうやら、カルドレアは、人には言えない何かを隠しているらしい。この額と同じようなものだろうか。まあ、いい。
「どうすればいいか、教えてくれないか。」
「ついてきな。ことばじゃあ、伝えきれない。」
彼の後をついていくと使われていないビルにたどり着いた。
「此処だよ。」
カルドレアは、そう言って、ビルの中に入っていった。
其処には、化け物染みたお化けがいた。
「なんだこりゃ。」
黒々しい、お化けだ。
「ああ、そいつは、宇宙で、生まれた、生命の成れの果ての一つさ。放っておいて、構わないよ。」
「はあ。」
その黒々しい、化け物を、尻目に、使われていないビルを登っていく。
屋上に、装置が、あるのだと、言っていた。
実は、協力しようか、迷っていた。だとか、君たちの種族の問題に僕が手を出すのは、おかしいか、とも思っていた。だとか。なんとか、小難しい話をしていた。
ま、でも、僕は、奥村 恋君が、純粋に、人として、好きだった。それだけで、助ける理由には、なるだろう。それに、従兄だ。とか、何とかといって覚悟を決めたようだった。
「ほえええええ。」
其処には、見た事もない、装置が、あった。
巨大な、装置。
丸い円盤。
エネルギー貯蔵の為の、四角い電池。
加速器。
巨大なコンピュータ。
真ん中に、球体が、あり、其処に、エネルギーが送られている。其れをコンピュータが制御している、円盤は、ぐるぐると、回っていた。
「此れが、存在率働装置さ。」
昔、昔、ある病に侵された少年が、いました。
世界中には、問題が、ありました。少年は、世界の問題を解決する方法を考えて病に罹ったのです。
間違いだらけの、この世界で、少年の言う事に耳を貸す人間など、いませんでした。
大人たちは、妥協して、暮らしています。
病に罹っていたのは、国家でした。
誰も、その事を信用しようとは、しませんでした。
国家とは、こういったものです。
繁栄すれば、孰れは、衰弱し、消えていくもの。
宇宙万物については、どうでしょうか。
消えてゆくのでしょうか。
いいえ。そうでは、ありません。
別のものに、変化するだけです。
この世界は、平均して、1なのです。
結局その容量は、変わりませんでした。
失えば、別のものに与えられるだけなのです。
エネルギー保存則。
その原理だけは、変わりません。
宇宙について考察する中で、かつては、四つの力と、素粒子の仮説を信じていました、現在紐が、信じられていますが、どうでしょうか。
万物の根源は、紐、なのでしょうか。
紐の振動が、十一次元の多次元を作り出すのでしょうか。
その次元は、いわば、世界の外側なのです。
丁度、原子の中に、核が、あり、核の中に、素粒子が存在する様に、この宇宙の外側に、其れを包み込む、別の世界が、階層となって存在しているのでしょうか。
其処には、何があるのでしょうか。
分かる事は、重力だけは、外の世界、内の世界を超越して、伝わっているという事だけである。
コンピュータの進化により、仮想現実が、可能になった世界では、我々は、世界の在り方を知る事になるのだ。
世界は、所詮、人間の認識の範疇に過ぎなかったと、いう事を知る事になるのだ。
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