エテナの目

その生物が、奇妙だと、人間は警戒した。

 銀色の、液体の様な、奇妙な、生物で、毒を食べて、其れをエネルギーにしている。

 「気色の悪い、メリッダだ。」

 メリッダ。

 毒液という意味だ。

 メリッダは、電気が流れている。根本的には、地球で、生まれた生物と祖先は、共通の祖先を持つ、しかし、明らかに、地球の生物には、ない奇妙な、形質を獲得していた、メリッダは、生物でありながら、放射線を放出していた。放射性物質でも、あったのだ。身体を構成する、炭素に、ラジウムや、ウラン、ネプツミウムが、結合し、生理現象の一部を担っていた。体内で、核分裂を行い、エネルギーを得た。その、エネルギー発生の器官は、未発見の炭素化合物、オルタで、囲まれている。オルタは、鉛の数百倍の密度を持つ、炭素化合物であり、放射線を完全に遮断し、得たエネルギーを電気に変換する器官だ。

 メリッダの食糧は、ゴミ、であり。排気ガスや、毒物を食べた。

 汚れた星の中では、其れが、メリッダにとって、最も、効率的に、エネルギー活用が、出来る物質だったのだ。

 生物なというものは、所詮、物質の延長線上に過ぎなかったのです。

 物質の結合法則の延長戦に、生物という構造が出来たにすぎませんでした。

 DNA、遺伝子は、自然に偶発的に出来た構造に過ぎず、神経という電気が、心の作用を幻覚させたに過ぎないのです。

 電気は、夢を見せます。

 神経が、痛みを与えるのです。

 私は、純文学を好むのだ。

 空想科学を好み、ライトノベルを嫌った。

 ビジネスに過ぎない。

 アニメは、其処迄好きじゃない。

 ドラマも、芸能も、好きではない。

 けれど、私は、勉強した。

 流行りのものは、確認しておいた。

 どうしてか。

 ビジネスなのだ。

 フォロワーを増やす為であり、登録者を増加させる為であった。

 楽しみなど、なかった。

 私からすれば、ネットは、地獄みたいな、所だ。

 人々の、希望と絶望で、溢れている。

 そして、言っておくが、私は、愚かものだ。

 ちなみに、私の名前を、告げるのを忘れていた。

 親に、貰った名前は、もう、既に、消えた。

 此れは、後に、私をこう呼ぶものが増え、自然と出来た、名前だ。

 カルドレア 其れが、私の名前。

 

 あの事件の事を知ったのは、私が、小学一年の、十二月一日の事であった。

 奥村 恋は、私の兄の子供だ。

 私は、奥村 恋が、この世に生を受けたのが、2012年だったと、記憶している。

 その頃、私は、二十五歳であった。

 兄は、三十歳だった。

 三十歳になった兄は、嫁をつくり、子供を作った。

 生れた子供が、奥村 恋であった。

 恋は、可哀そうな事に、十字架持ちだった。

 隔世遺伝というやつなのだろう。

 兄の子供は、異常だったのだ。

 奴は、化け物だった。額に十字架を持った種族は、忌み嫌われる。革命を起こそうとしていた。おとなしく迫害されておけば、命の危険は、ないというのに、一族を巻き込んで、奥村 恋は、その準備をしていた。

 だが、奴は、まだ、其の頃、五歳だった。

 五歳の時分に革命の準備をしていたのである。

 二年後の2019年、七歳の額に十字架の子供が迫害されているのを見て、助けた奥村 恋は、逮捕され、処刑された、七歳の時分であった。

 2019年に、政府に捕まり、公開処刑にあったのである・

 奴は、呼びかけた、処刑の寸前に言った。

 「私が死んでも、〇〇の意志は、死なない、この額の十字架は、我々の誇りだ。」

 五歳の子供の吐くセリフだろうか。

その言葉が、あの一族にどう響いたのかは、分からない。

 あれから、二年。

 確かに世界は、変容した。

 2021年 二月の時分に九歳となった、姫彦 社 彼が、起こした、革命が、世界を変えた。

 革命は、恋の準備していたシナリオの通りであった。

 額の一族も人間だ。という考えが徐々に民衆の間には広がっていった。

 経済、金融、科学技術に於いて、成果を残していった。

 額に十字架のある種族が、力を持ち始めたのだ。

 徐々に、勢力を拡大させている。

 私は、只の傍観者に過ぎなかった。

 その様子を見て、記録していた。

 記録係なのだ。行動を起こすのは、何時も他人であった。私を其れを見て、記録する事しか出来ないのである。

 全ての事を見て来た、私の右目は、世界中を旅してきた。万物を知る目だ。

 数億年前より、世界中を飛んでいた。

 その眼が、私の眼に成ったのは、生まれつきだ。

 生れた時に、私の右目は、無かったという。

 右目のない子供と、気味悪がられたという。

 生れて、二か月のある日の晩の事、右目が、宿っていた。その時、私は、世界中を旅して、いる、夢を見た。

 朝起きると、右目が、付いていた。

 気味の悪い、赤紫色の瞳の色をしていた。

 世界の記憶を辿ろうとすると、瞳の色が、金色に変化した。

 私は、此のことを畏れた、それから、という物、右目に眼帯を付けるように、なった。

 だから、私は、あの種族が、悪ではない事を、知っている。

 この眼は、見ていた。

 一億年前の、あの戦争を。卑怯な、人間により、堕とされた多くの種族の末路を、かつて世界は、人間だけが、知性を持っていたわけでは、無かった。何種族もの、動植物が、知性を持ち、暮らしていた。

 身体が白く眩く光る 聖人

 光を喰らう 死人

 冥界の使者 犬人

 繁栄を齎す 猫人

 大海原を駆け巡る 魚人

 海の精霊 海人

 空の守護 鳥人

 大草原の覇者 獅子人

 最強の威厳 象人

 悪政を正す者 寅人

 空気の母 樹人

 石の軌跡 石人

 あれらは、一億年前に確かに、存在していたものだ。

 人間に利用され、死んでいった。悲しい種族。

 身体を弱体化させられ、現在の、四足歩行に迄、退化させられた、悲しみの種族だ。

 植物に高度な知性があった。

 魚に高度な知性があった。

 犬に猫に、猿に、狼に、鼠に、蝙蝠に、蛇に、蟲に高度な知性があった。

 人間の巧妙な、話術で、其れ等は、死を選んだ。

 愚かしい事だ。

 全て、人間が、それらを喰らったのだ。

 更に人間は、人間同士で、争い、殺し合った。

 残虐な生き物だ。

 私の右目、エテナの目は、かつて実在したエテナという、錬金術師の目らしい。今でいう所の化学者の事だ。科学者でも、あったらしい。

 エテナは、当時の、科学力を遥かに超えたシステムを構築していたと、記録に残っている。エテナは、世界中の地理や、生物、現象を観察し、記録しようと考えた。そうして、このエテナの目が開発されたのだという。

 エテナの目は、確かに凄かった。

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