エリナから念が送られてくる

芸術への、昇華だった。

 大した力も、御金も、権力もない、私は、何かをいった処で、相手になど、されなかった。

 憤慨し、憤り、激高できたのは、あの頃の話だ。

 私は、激高していた。

 苦しんでいた。

 考えてもみる。

 その気力さえ、なくなってしまったのだ。

 

 あの頃の、私ならば、確実に、噛みついていただろう。

 尖っていた。

 だから、決して、許さなかっただろう。

 其れが、この様に、落第してしまった。

 原因は、全て、私にある。

 

 小説を、書き始めた理由は、御金だ。

 印税を貰って、自立出来ればと、思っていた。

 他人に、保護される、生き方に懲り懲りしていたのだ。

 私は、書いた。

 兎に角、書いた。

 書く事で、許された気になっていた。

 失敗も、現実も、出来なかった事も、全て、幻想の世界の中に、表現する事で、私は、生きて居られると、思っていた。

 

 けれど、所詮は、素人の書く、純文学にも、ライトノベルにさえ、成りきれない、失敗作の、連続でしかなかったのだ。

 

 物語の、書き方を、勉強した事もあった。

 あれは、何の役にも立たなかった。

 私は、三幕構成を知り、シド・フィールドとか、いう、米国の、柊の森で、有名な、脚本家の、理論を知り、それを、見習い、その通りに、物語を作ってみたが、行き詰った。

 結局、そういう事だ。私は、碌な物語も、書けないで、いるのだ。

 

 頭の中に、こびりついて、離れないのは、110ページの脚本の中で、10ページ迄に、主要な登場人物を出し、12ページ迄に、何かを起こし、主人公を悩ませ、15ページに、主人公を決意させ、次の展開に進む、25ページで、更なる転換期、こなれた横文字を使えば、ターニングポイントなどと言う、ものが来るのだ。その後30ページから、50ページ迄は、サブポロなどという、実に、くだらない、日常の安らぎの休憩タイムが入り、55ページを迎えた、ページの半分で、最高の盛り上がりを見せる、そして、75ページで、第二ターニングポイントを迎え、75ページから、85ページで、死人が出たり、主人公にとって、不都合な、事が、起こるのだ。主人公は、其れを解決する、方法を、其れ迄のページで、経験し、成長しているのだ、そして、残りの85ページから、110ページのエンディングとフィナーレを書くのである。

 よくある話だ。

 誰だって、書ける、よくある話だ。

 其れを見習い書いていて、思ったのだ。

 限界が、あると。

 私は、限界だった。

 何を書いても、同じになった。深みも無ければ、面白みもない、平凡でいて、何の真理も得られない、凡庸な、何処にでもありそうな、文章しか、書けなくなった。

 

 典型的に、頭の悪い大人達が、周りにいると、思う事が、ある。

 この人達は、知らないんだな、どうして、何も知らない儘で、のんびりと、過ごしていられるのだろうな。と。

 その人達は、低知能で、低賃金で、昇進しようとも、せず、勉強をしようとも、しなかった。

 どうでも、いい可哀そうな、日常の中で、バカの様な、詰まらない事を繰り返していた。

 

 どうでも、いい話だ。

 平和だ。

 ありふれている。何処にでも、ない。寂れた日常。

 其れが、のんびり、だと、彼等は、信じている。

 

 悪い事では、ない。

 役に立たない、意味のない、単調な、仕事が。

 知能の低い、可哀そうな、農民が、街の寂れた様子が、悪い訳では、ないのだ。

 この街が、どうなろうが、私にとっては、知った事では、ない。

 彼等が、寄せ集まって話そうが、何をしようが、私は、無駄な事だと、知っている。

 景気が、悪いのだ。

 もっと、金を使えばいいのに。

 こんな事を嘆いて、何になる。

 何にも、ならない。

 彼等、彼女達の目は、絶望している。

 どうでも、いい会話が、きこえる。其れが、絶望のノイズに聞こえるのは、私だけ、だろうか。

 誰も、現実など、見てはいなかった。彼等は、楽観的に、理想郷を信じていた。目の前の人に情を覚え、会話を楽しみ、其れが、生き甲斐になって終っている。こうなっては、もう、見込もないのだ。

 コミュニケーションだけで、終わるのだ。

 何も出来ない儘、死んでいくのだろう。

 其れは、悪い事では、ない。それも、人生なのだ。

 ふと、思う事が、ある。

 日光を、一年以上浴びていない、私には、分かりかねる事で、あるが、人間は、日の光を浴びないで、いると、どうなるのだろうか、昼夜の逆転している、私には、図りかねる事が、ある、人間は、その生活を続けていると、どうなるのだろう。

 私は、味の濃い、ものしか、食べない。

 私は、私を私とさえ、何時しか思わなくなった。

 名前を名前と認識しないように、なったのは、もう、三年以上も、前の事だ。現実を受け入れきれなかった私は、私を、第三者の誰かに見立てる様に、なったのだ。

 それからと、いうもの、私は、私を、誰かとして、見るように、なった、誰かが、何かを言っていると、認識するように、なった。

 架空の登場人物を造り、私は、その人物を操り、其れを、実験し、人間心理を、探究していた。

 頭の中で、会話が、思い浮かぶのだ。

 存在しな、科学技術が、浮かび、ありえない、魔法や、存在しない、生物、怪物を、地図にない、街や、宇宙、星々を、造り出し、其処で、物語は、確かに、始まっていた。

 其れは、誰の物語だったのだろう。

 どうして、そのような、壮大な、物語を書けたのか、書けていたのかが、今では、もう、分からない。

 想像力は、消えてしまったのだろうか。

 

 死んで。

 しまおう。

 念力を送られる。

エリナだ。

 私が、誰かも知らない。娘だ。

 漢字で、画理奈と書く。

 エリナは、家に、魔法の瓶を届けに来る。

 中には、死神の命が、入っている。

 エリナは、死神を食料にする、一族の生まれなのだ。

 この世界では、人間以外の知性のある、生き物が、存在する。

 エリナは、聖神という、種族で、死神を食べる種族だった。聖神は、死神しか、食べる事が、出来ないのだ。

 だから、食べる。

 私は、人間だ。

 人間は、死神の命を、売って、御金にしている。

 死神の命は、人間を造る、材料の一つなのだ。

 人間は、死神の命と、太陽の欠片から、生まれる。

 だから、私は、其れを集めている。

 太陽の欠片は、聖神の命だ。

 私は、エリナを殺すのだ。其れは、人間が、この世で最も、偉いからだ。

 エリナは、働かされている。

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