親と縁を切る。

「おかえり。友達を連れて来たの?。」

 額の十字架が、バレないように、目深に、フードを被っている。

 「ごめんなさい。」

 恋は、謝った。

 「どうして、どうかしたの。」

 華憐は、心配そうに、目を見つめる。

 「えっと、額に十字架のある、子供を助けちゃって・・・。思わず、迫害している奴らを殴ってしまって・・・。」

 すると、父親の、ベルクが、其れを聞いて、立ち上がった。

 脅えていると、

 思いっきり殴られた。

 グーパンチで。

 玄関から、部屋の壁を通り抜けて、奥のソファ迄、吹き飛ばされた。

 「馬鹿が。御前の、軽はずみな行動で、一家の全てに疑いが、掛かるんだぞ、分かっているのか。」

 「すいません。」

 「御前、まさか、其の子が・・・。」

 ベルクは、驚愕の色を露わにした。

 華憐は、ヒステリックに泣いていた。

 「やってくれたな。我が息子よ。」

 華憐は、気を失っていた。

 「此れが、現実だよ。」

 恋は、そう言って、両親を、見た。

 「実の親でさえ、額に十字架は、嫌悪すべき対象なんだね。」

 「そうさ。其れが、自分の子供とも、なれば、この一家も、迫害の対象になる。恐ろしい事さ。ま、兎に角あがんなよ。御前は、もう、死んだ事にしよう。」

 「やだよ。御父さんと、お母さんは、酷い拷問を毎日受けている。家族を放って、自分だけ助かるなんて、できないよ。」

 社は、両親の身を案じているらしい。

 「お前も、大人に成れば、更に酷い迫害の目に遭うさ。其れに、子供の御前に何が出来る。親から、しても、御前の幸せを願っている事さ。御前は、人生をやり直すべきだ。そして、何時か、革命を起こすんだ、其れが、この一族の役目なのだから。」

 恋は社の肩に両手を乗せ、想いを思念で、送る。

 社は、恋の想いを受け取っていた。

 「其処迄、する理由は、何だ?。」

 「友達が交通事故で、死んだからだ。それだけだ。何だか、偽って生きるのが、厭になった、人助けでも、してみようと、思った、なんとなくさ。なんとなく、世界の歯車は、動いていくものなのさ。そうは、思わないかい。」

 社は、そんな、恋の事を、よく分からないやつだ、と思った。

 けれど、何処か、人を、惹きつける何かを持っていた。

 未熟さ、かもしれないし、単に、大きな希望と、やけに説得力のある、理論かも知れなかった。

 「親と、縁を切るよ。」

 「そうする事だな。この一族であるというだけで、迫害の対象となるのだから。仕方の無い事だ。何時か、革命を起こして、その時、両親も浮かばれる事さ。」

 「浮かばれる?。」

 「ああ、なんせ、御前の両親は、恐らくだが・・・。」

 そう、恐らく、監獄行きになるだろう。

 恋は、見ていた。

 こいつの両親が、酷くいたぶられている様子を、御金が払えなくなっている様子を、

この国じゃ、この一族にだけ、法外な、税金が掛けられている、それと、同時に、貢金という、物があり、月に一度、一人10万円を払わなくては、ならない。払えなかったものは、監獄所で、一生、ただ働きをさせられるのだ。

 未だ10歳にも満たないであろう、この男には、その事は、親から知らされていないのだろう。

 「御前、何歳だ。」

 「7歳。」

 「御前の親は、連れていかれる。」

 「何処に。」

 「監獄だ。御金を払えなかったからだ。御前の分の十万を払わなくて済むだけ、まだ、ましさ。本来だったら、今日の、徴収日で、金が足りず、連れていかれて居たさ。来月には、もう、駄目だろうね。」

 「徴収ってどういう意味?。ねえ、もう、駄目なの。御父さんと、お母さんは、どうなちゃうの。うわああああん。」

 うるさい餓鬼だ。泣いてやがる。こっちが、どれだけのリスクで、こんな糞餓鬼を助けたと、思っているんだ。

 「煩い!!!。黙れクソガキ。張り倒されたいか!!!。」

 其の剣幕に、社は、泣き止んだ。

 「徴収ってのは、政府の連中が、御金を取りに来る日の事さ。その日までに、御金を払えなきゃ、監獄行きなのさ。御前の両親は、御前を心配させまいと、隠して、来ていたんだろうがな。」

 「両親が、御金を没収されていたのは、知っていたが、出来ないと、監獄に連れていかれるなんて、知らなかった。」

 「そうだろうな。一般人でさえ、知らない事だ。」

 そうやって、徐々に、この一族の、人口は、減ってきているのだ。

 

 

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