第6話 二階層


 ゴブリンが居た第一階層とも呼ぶべき地点とは打って変わって、階段を下った先である第二階層には今までとは一風変わった上位種とでも言うような魔物が生存していた。


「ゴブゴブ」


 これは柊さんの鳴き声では無い。

 敵としてもホブゴブリンが出現したという事だ。


「えいや!」


「カカカ!(えいやー)」


 けれど、スケルトンアームズである俺が柊さんに装備されたモードアームズ状態であれば、ホブゴブリンにも引けを取らない戦闘能力を有する事ができた。


 俺の身体を剣に変形させる事で、柊さんのスキルであるスラッシュやブラストが使用可能となっている。

 その威力は今までの攻撃の比では無く、素手のホブ相手であれば容易く殺しきれる威力を持っていた。


「レベル上がったって!」


「カカカ(取り合えず貯めとこうか)」


 スケルトンアームズになった事で骨の形状変化がよりスムーズになり、骨で文字を形成する事に成功している。

 これならいちいち地面に文字を書く事無く、柊さんに言いたい事を伝える事ができる。


「おっけー。てか彼氏君や、これってどうみてもハグだよね?」


「カカカ(嫌だったら止めるけど……)」


「ん~にゃ、全然嫌じゃ無いよ?」


 ゴブリンのつぶらとは言い難い瞳が、俺が作った文字を見つめていた。


「失礼な事考えてない?」


「カカ(かかか、考えてないです)」


「文字がブレるって相当失礼な事考えてたんじゃないの? あ、分かったえっちな事でしょ!」


 そう言って、醜悪な顔のゴブリンが上目遣いで俺が描く文字を見つめた。

 うん、可愛い要素は一つも無い。きっと、前世の人間だった柊さんなら俺なんて慌てふためいて喋れなくなるほど美人だった事だろうけど、今は見る影もないと言う奴だ。


「カカカ(それよりレベリングしようよ!)」


「まあいいけどさ……私だって女の子だっつーの……」


 ふてくされた柊さんはそれはそれは強かった。

 俺の身体が変形した剣を片手にモンスターたちを薙ぎ払っていく。

 第二階層にはホブゴブリンや、ハイスケルトンの様な上位種の魔物が多く居たが、それでも柊さんと俺の敵では無かった。


 経験値もガンガン獲得し、レベルもガンガン上がって行く。


 なんと、レベル10まで到達した。



―――――

種族レベル『21/30』

技能樹スキルツリー

【スケルトン10/25】

【スケルトンアームズ0/25】

【異世界人5/25】

【知的武装20/25】

保持スキルポイント『1』

スキル【骨格変化】【初級言語翻訳】【初級収納】【初級鑑定】【装備者伝心】【装備者補助・回復】【ボーンスラッシュ】【ボーンバレット】【自動骨再生】

―――――


―――――

種族レベル『15/30』

技能樹スキルツリー

【ホブゴブリン20/25】

【異世界人0/25】

【知的武装使い10/25】

保持スキルポイント『0』

スキル【恐怖耐性】【スラッシュ】【ブラスト】【武器技能】【防具技能】【器用】【エンチャントブレード】

―――――


 これが今の俺たちのスキルツリーの状態だ。

 レベルも結構上がって来た。

 ただ、やはり水や食料の確保の目途が立って居ないのが問題だ。


 噴水の様な場所が他に有れば水分は補給できるし、モンスターの肉で食料も確保できる。

 柊さんには悪いけど、主食はモンスターの焼肉という事になりそうだ。

 いや、火を起こす手段も無いし生肉になるかも。


 幸い鑑定で毒の見分けは付くし、水さえあればって感じだな。


 俺も異世界人のスキルじゃ無く、戦力アップのためにスケルトンの方にスキルを振る事にした。

 アームズの方に振るのはスケルトンに振っていないとできないらしいからな。


 俺は柊さんの武器となる道を選んだ。

 なら、俺も強くなくちゃだめだ。


「グォォォオオ!!」


 そうすると、突然洞窟内で咆哮が響く。

 その音はかなり近く、ダンジョンの通路の角から一匹のモンスターが現れるのが見えた。


 その見た目はどうみても……


 身体から魔力的な何かが抜けるから使わなかった力、【装備者伝心】の力を発動させ俺は柊さんに危機を伝える。


『ミノタウロス! 俺たちよりランクが上の魔物だ!』


 鑑定を使えばその存在の現在レベルと最大レベルを確認する事ができる。

 ホブゴブリンやハイスケルトンの最大レベルは30。けれど、ミノタウロスの最大レベルは50だった。

 こいつは恐らく、俺たちよりも進化を重ねた上位のモンスターだ。


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