第5話 ホブゴブリン


「カカカ(本当にごめん……俺が身体を操ったからかなりきつかっただろ?)」


「なんか、落ち込みながら地面に棒で文字書いてるの笑えるね」


「カカカ(仕方ないだろ)」


「まぁ、そうだけどさ……。うちをレベルアップ? させて回復させるって目的だったんでしょ? 結局気絶しちゃってそれも叶わなかった訳だけどさ…… でも、うちを助けるためにうちを疲労させるなんてよくやる勇気があったよね。普通じゃないね、キモいね!」


 うぐっ!

 鋭利な何かが心臓に突き刺さったような気分になった。

 まぁ心臓無いんだけど。


 柊さんもレベル上限に達した事で、ホブゴブリンというモンスターに進化した。

 130cm位だった身長が150くらいまで伸びて、少しだけ声が高くなった。

 まぁ、まだ全然重低音だけど。


 身体付きも太った子供みたいだったのが、ちょっとだけ大人びだ体系になって胸が少し出て来た。

 まぁ、相変わらず顔は人間とはかけ離れているし肌は緑だからエロさは無いけど。


「なんか今失礼な事考えてなかった?」


「カカカ(考えてないです)」


「だったらいいけどさ」


 柊さんは自分の身体を抱きしめる様な姿勢で少し下がった。

 あ、その仕草はちょっと可愛いかも。

 でもゴブリンだったわ。


―――――

種族『スケルトンアームズ』

種族レベル『11/30』

技能樹スキルツリー

【スケルトン1/25】

【スケルトンアームズ0/25】

【異世界人5/25】

【知的武装20/25】

保持スキルポイント『0』

スキル【骨形変化】【初級言語翻訳】【初級収納】【初級鑑定】【装備者伝心】【装備者補助・回復】

―――――


―――――

種族『ホブゴブリン』

種族レベル『0/30』

技能樹スキルツリー

【ゴブリン15/25】

【異世界人0/25】

【知的武装使い0/25】

保持スキルポイント『0』

スキル【恐怖耐性】【スラッシュ】【ブラスト】【武器技能】【防具技能】

―――――



 これが今の俺たちのステータスだ。

 進化した事でステータス外の身体能力値も相当上がっていると思われる。


「それにしても、摘希はどうやってそんなにレベルを上げたん?」


「(普通にモンスターを倒してだよ。やっぱり奥へ行くほど強力なモンスターが出るみたい)」


 このダンジョンはアリの巣のような迷路になっている。

 俺たちが最初に進んだルートである勇者遭遇ルートはもう行かない。絶対行かない。

 他にも道は幾つも有ったので、俺はその中の一つを選んで進んだのだ。


 そうすると階段があった。

 それを下ると、ゴブリンよりもずっと強い魔物が跋扈していた。

 あの時はアドレナリン出まくりで、柊さんを助ける事しか頭になかったからセルフ恐怖耐性が発動してたけど、今にして考えると良く勝てたな俺。


「なるほどね、じゃあやっぱりうちらってそっちに行くの? ちょっと怖いね」


 それは考えた。

 このダンジョンが入り口と出口の二つの方向があると仮定すると、階段とは逆方向に行けば入り口がありそれを目指す方が安全だと思う。

 しかしそれは、俺たちが人間だったらの話だ。優也たちが俺たちに問答無用で攻撃してきた様に、外に出た瞬間討伐なんて事になったら笑えない。


「カカカ(そうだね、俺たちが討伐対象だったら一巻の終わりだし可能性は五分五分としか言いようが無いけど、もし柊さんだったらダンジョンからモンスターが出て来たらどう思う?)」


「怖いかも……」


「カカ(って事で前進あるのみかな)」


「まあしょうがないね。それじゃあ進もっか……」


 俺が辿った下の階層への階段を下りるという事で話は纏まった。

 レベルアップ、今更だがこの言葉に興奮しないオタクは居ないだろう。

 スケルトンやゴブリンになったのは予想外だが、ゲームと違って勇者が必ず勝つなんてシナリオが用意されている訳でも無いだろう。

 優也の野郎とその一行は普通に許さないが、他のクラスメイトと出会った時の参考にはなった。

 俺たちと同じようにモンスターになっているタイプの奴なら話が通じるかもしれないが、亜人系の見た目の奴は剣を振るってくる可能性があるって事だ。


 取り合えず人間とはできる限り接触せず、モンスターには声を掛けてから、襲って来た奴とだけ戦う様にしよう。


「凄いよねオタクって、こんな状況になっても落ち着いてるし。キモいくらいの妄想力だよ」


 まぁ、異世界転生とか妄想してた類の人間である事は間違いないけどね!

 それを言われると苦しいよね! 心臓が! 心臓無いけど!


「カカカ(柊さんもモンスターハントとかのゲームの一つくらいやった事あるでしょ? そういうの考察するの楽しいじゃん)」


「そう? うちがやった時ゲームが壊れてて剣が弾かれ続けて辞めた記憶しか無いんよね」


 それ切味不足や。

 仕様や。


 うん、ゲームを殆どやった事がない人間というのも現代には存在するらしい。

 俺からしたらそっちの方が珍獣だよ。


 俺たちはそんな軽口を叩きながら第二階層へ移動した。

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