第2話 スキルツリー
どうやら、この世界ではスキルと名前のついた特殊な能力をスキルポイントというレベルアップ時に貰える得点で習得できるらしい。
まるで、ゲームのスキルツリーの様なシステムだ。
俺が扱えるスキルツリーは二つ。
柊さんも二つだったからこれが全てか、初期はこの数になるのだろう。
「うちゲームとか知らないんだけど、これってどうすればいいの?」
「カカカ(ゴブリンのスキルツリーって開示できる?)」
「中身確認する奴? できるっぽいよ」
『スケルトン』というスキルツリーは、所得する事なく何ポイント振ればどんなスキルが手に入るか予め分かる。
1、骨形変化。
3、ボーンスラッシュ。
5、ボーンシュート。
10、自動骨再生。
これがスケルトンのスキルツリーの中身になる。
恐らくゴブリンと戦った時に無意識にスキルポイントを割り振った事でスキルが発現したんだと思う。
「うちのスキルはこんな感じだよ」
勿論、ステータス画面は他人には見えないので彼女が指し示してくる指の先を見ても何も見えない。
「カカカ(口頭でお願い)」
「あ、そっか。1ポイントで恐怖耐性、3ポイントでスラッシュ、5ポイントでブラスト、10ポイントで武器技術……だって。良く分かんないね」
恐怖耐性か、正直柊さんには必要無さそう。
思いっきりゴブリンの事ぶん殴ってたし。
とは言わない。俺が粉々になってしまうかもしれないから。
「ねぇツッキー、何にしたらいいの?」
「カカカ(そうだね……)」
俺たちにはもう一つスキルツリーがある。
『異世界人』と名のついたツリーだ。
こっちは、
1、初級言語翻訳
3、初級収納
5、初級鑑定
10、中級言語翻訳
となっている。
俺たちが持っているポイントは2ポイントだ。
どうせ3ポイント必要になるスキルは取れない。
「カカカ(でも、柊さん自分でスキル決めた方がいいよ。俺だってなんでも分かる訳じゃないし)」
「え~、でもうち分からんし。ツッキーが決めてよ、文句言わないから」
そういうなら俺が決めるか。
考えるべきは相性だ。
女の子である柊さんに戦闘スキルは似合わないけど、この世界じゃ一番必要なのは自衛の力だと思う。でも異世界人は補助系って感じで戦闘能力が上がるタイプじゃなさそう。
「カカカ(取り合えずゴブリンの方に1ポイント振って、ポイントが溜まる度にゴブリンの方に振っていく感じで良いんじゃないかな)」
「おっけ~」
流石ギャル、返事が軽い。
鼻歌交じりにスキルを振り割った柊さんを後目に俺も余っていたポイントを使う。
初級言語翻訳の習得だ。
もしも、文字が読めなければ先に進めない様なトラップがでたら詰むから。
情報所得系はTRPGじゃ必須の基本技能だし。
それに筋肉が無いから戦闘力を上げても高が知れている気がする。
「恐怖耐性? ってのが習得できたって」
「カカカ(了解。それじゃあもう少し進んでみようか)」
ゴブリンを倒したとは言え、やはり最初の目的である飲み水の不足は何ら解決していない。
水を探さなければ眠りに付く事も難しいだろう。
後は食料だが、肉があっても火が無いと腹を壊しそうだ。そうじゃ無くてもどんな病原菌が居るのか分からないし。
殺菌は出来得る限りはしていた方が良いに決まってる。
炎、水、食事の所得。
これが今日の目的だ。
暇があれば拠点になりそうな場所も探そう。
「グギャ……」
ゴブリンは俺の骨が伸びた針に差されて死んだ。
これで俺たちは7匹程のゴブリンを倒した事になる。
「このゴブリンっていうの? こればっかだね」
「カカカ(柊さんを仲間だと思って寄って来たんじゃない?)」
「はぁ?」
怖っ……
「カカ(ごめんなさい)」
「次言ったら殴るから」
「カカ(はい。もう言いません)」
怖すぎる。
カースト最下位しか知らない俺では魔王なんかよりよっぽど驚異的な存在だ。
とはいえ、やはり魔物を倒す事での経験値所得システムの様で俺たちは幾つかレベルアップした。
スケルトンとゴブリンという種族は最大レベルが10らしいので、スキルポイントを10ポイントしか入手できないっぽいのが心配だな。
経験値の分配方法がどうなっているのか知らないが、今の所全く同じタイミングでレベルアップしているので均等に分配されているっぽい。
「スキルポイント5になったよ。これゴブリンにふっちゃっていいの?」
「カカカ(うん、俺は異世界人の方に振るから)」
「りょうか~い」
柊さんが『スラッシュ』『ブラスト』を習得した。
しかし、どうやら武器が必要なスキルらしく今は柊さんじゃないゴブリンが持っていた石と木で作られた質素な武器しかない状態では、その真価は発揮できそうもない。
俺の方は初級収納を取得した。
インベントリの様なスキルだ。
ここに物を入れておけば重さを感じないし、好きな時に取り出せる。
中の時間は動いてるっぽいので腐敗防止とかは無さそう。
けど、初級ってついてるだけあって全部で30kgの総量までしか収納できない。
それでも全然ないよりマシの便利スキルだけどね。
俺たちはその後も、何匹かのゴブリンを倒しながら道を進んでいた。
「ねぇ見てよツッキー! 水がある、うち喉カラカラだよ」
一目散に柊さんが走っていく。
その方向を見ると確かに水があった。
所々老朽化しているが噴水みたいだ。
「カカカ!」
「ん、どうしたの?」
書く余裕が無かったから肩を掴んで柊さんを止める。
って、力強すぎでしょ。
ちょっと引きずられたよ。
いや、俺が軽いのか。
「カカカ(初級鑑定を習得したから飲めるか確かめてみるよ)」
「鑑定? よく分らんけど分かった」
これも初級と着くだけあって鑑定した対象が生物なら、その種族名とレベル。それ以外ならそれが人体に対してどういう影響を与えるかしか分からない。
『少しの魔力が入った水:喉を潤し、魔力を少しだけ回復してくれる』
どうやら飲んでも大丈夫そう。
「カカカ(飲んでいいよ)」
「はぁ、やっと飲める~」
そう言って柊さんがさっきと同じ速度で走って行った。
俺は飲み水とか必要無さそう。そもそも飲んでも垂れ流しだし。
でも魔力ってなんだろ。
スキル使うとそれを消費するのかな。
それから数十分程その噴水の広間で休憩していた。
すると、足音が幾つか聞こえた。
「おい、噴水があるぞ」
「げ、ゴブリンも居んじゃん」
「倒して水を確保しよう!」
「のどカラカラだわ」
虎っぽい獣人、竜人、エルフ、吸血鬼。
そんな多種多様な、けれど美しい顔立ちの四人の人物が現れた。
そして、俺と柊さんはその顔を知っていた。
それは、霧宗優也を中心としたトップカーストに位置する四人の元クラスメイトだった。
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