第4話

走って逃げること数分。

ここまでくればさすがに追いかけられるなんてことはないだろう。

しかし......あの人も魔法が使えるなんて、少し驚きだった。

というかこの世界にいる人は、魔法が使えて当たり前みたいな感じなのか。

だったら俺も......って訳にはいかないんだよな。

「はぁ、この世界はどうなってんだか」

悲鳴は聞こえるわ魔法は放つわ人は消え去るわ......どうなってんだか分からなくなってきた。

この世界に居続ければそれが普通ってことになるんだろう。

......慣れというは怖い。

そんな事よりも、段々と日が暮れて暗くなってきた。

ということで、ロイから貰った紙を取りだし、それに記されている目的地まで移動することにした。


歩くこと数分。

空はすっからと暗くなり、街灯がちらほらとつき始めてきた。

「ここか......?」

ロイの家と思える場所に着いたが、その家は他のの家よりも少し大きい感じだった。

日本で言う所の、屋敷みたいな感じ......?ちょっと違うか。

とりあえず俺は、その家の扉をノックしてみる。


――バタバタバタ......。


家の中が少し騒がしくなった気がする。

「――いらっしゃーい!」

扉が開いたと思うと、そこにはあちこちが発達しているロイが出迎えてくれた。

「あ、どうも......」

「さっ、入ってー」

「お邪魔します......」

家の中に入ると通されたのは、少し広めのリビング。

リビングには、普通に日用品が揃っていた。

そしてソファには、なぜかクマのぬいぐるみが置いてあった。

「......これは?」

俺はそのクマのぬいぐるみを手に取る。

「ああ、それは、日本人からもらったものだよー」

......やっぱり、俺以外にもこの世界に日本人はいるらしい。

いや別にいいんだけどさ......もしその日本人に会ったとき、なんか気まずい感じがするというか......まあそんなのどうだっていいか。

「これ何の動物?」

ロイはそのぬいぐるみを指さして言う。

「えっ?ああ、これはクマっていう動物だよ。日本では、けっこう危ない動物として認識されてるけどね......」

「えーそうなんだ!でも、クマっていう動物は危険な感じはしないけどねー」

それはぬいぐるみだからだろとツッコみたくなった。

「それはそうと、明日からどうするー?君が良ければ、あたしがこの街を案内してあげようか?」

「あー、たしかに......じゃあお願いします」

この世界に来た初日はこの街を探索したが、そこまで全部探索したわけではない。

だから、この街の人に案内してもらうのがいいだろう。

もしかしたら、新しい発見とかあるかもしれない。

「ああそれと、祐樹くんも魔法はひとつくらい覚えた方がいいよ」

「それはどうして?」

「この街では魔法を持つのが当たり前のこと。それなのに魔法を持たなければ簡単に死ぬし、モンスターにやられるっていうのもあるしねー」

「モンスター?」

やっぱりこの世界は、魔法を持つのが当たり前らしい。

「うん。祐樹くんが元々いたところにはクマみたいな動物がいるでしょ?ここでは、動物じゃなくてモンスターが生息している。そのモンスターによっても危険度は違うけど、まあこの街ではあんまりモンスターは出ないけどね」

そう言ってロイはソファに身を投げ出す。

会った時もそうだが、この子はいろんなところが発達している。

発達しすぎという訳ではなく、ちょうどいいぐらいに発達しているというか......って、ロイの体を描写してどうするというんだ俺は。

「ふぁぁ、あたし疲れちゃったー」

ロイはそのままソファに寝転がった。

「えっ、あの......ロイはなにも食べなくていいの?」

そう、俺が気にしているのは食生活の事。

「んー?ああ、ご飯の事?あたしは、別にお腹空いてないよー」

いやそういう事じゃないんですけどね......。

「祐樹くんはお腹空いたのー?」

「まあうん......」

この世界に来てからというもの、そこまでろくに食べていない。

食べてないけど、なんか微妙にお腹が空かないというか......。

それでも、お腹は空いている。

「それじゃあ、お金あげるから好きなの食べてきていいよー」

「えっ、ちょっ......」

そう言って渡されたのは、カラフルな色の石。

この世界の通貨は石なのかよ......まあ仕方ないか。

「それで大体......2万リースくらいかな。多分、食事代ぐらいは全然余裕だと思うよー」

「あ、ありがと......」

俺はちょっと動揺しつつもロイにお礼を言った。

......そう言えば、ここに来る前に食事処的な店があったような......。

まあとりあえず行ってみますかね。





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