第88話

(ダメ…これも効かない)


頼みの綱である亜空間ロックが容易く破壊されてしまう。エナジードレインも試したが効果は全くなかった。

こちらの体力もそろそろ限界に近い。



「そろそろ限界ですかねぇ。

頑張った方だとは思いますが、所詮リリス如きがこの裁冠である私、シュプリールに敵うわけありませんからねぇ」


私が今いるのは円形のホールのような場所

そして、右手には扉がある。

だが、さっき攻撃した隙に扉を開けようとしたがびくともしなかった。

私がその扉を気にしていることに気づいたシュプリールが笑う。



「ふふ、あちらの扉ですか?

確かに貴女の考え通りお仲間のところへ通じておりますよ。

ですが、気にする必要はありませんよ。私を倒さない限り決して開くことはないのですから。

そして、貴女に私を倒すことなど不可能、、、ですからねッ!」



シュプリールが飛び上がり翼をはためかせると同時に無数の刃が空中に現れた。


(これは避けきれない…ご主人様、、、)


絶望感に打ちひしがれた私の表情を見てシュプリールが歪んだ笑いを浮かべた。


「ああ、その表情ですよ私が見たかったのは。さて、これで終わり、、、

なんですか!?この煙は…まさか毒!!?」


シュプリールが刃を降り注がせる直前にもうもうと紫の煙が辺りを包んだ。



「麻奈ッ!右だ、こっちへ走れッ!」


(日本語!それにこの声はご主人様!)


だが、毒は敵だけでなく私にもその効果を及ぼしている。ほんの少しの距離なのにそれがこんなにも遠いなんて。

私は最後の力を振り絞ってご主人様の声の方へと駆けた。



「くそっ!!どこの言葉だ…それにこの毒、、、こんな毒などすぐに解毒して…」

煙の隙間から一瞬見えたのはシュプリールの翼が少しずつ毒に侵食されていく姿



そして、体力の限界で倒れ込んだ私の髪を優しい手が撫でた。うっすら目を開けた先にはぼんやりとだが優しい笑顔が映っていた。


「よく頑張ったな、麻奈

解毒剤だ。飲めるか?」



だけどその時の私には解毒剤を飲む力すら残っていなかった。

どんどん意識が遠のいてゆく。


「し、、仕方ないな。緊急事態だからな…」


その言葉のあと私の唇に何かが触れる感触

そして、口の中に解毒剤が流し込まれた。

その途端、身体の中が浄化され朦朧としていた意識も覚醒した。



私はこの機を逃すまいと手足で体をガッチリロック!と同時に舌を滑り込ませる!

至福のひととき



「んんーんーんんっ!!ぷはあっ…って

回復したんならさっさと離れろ!」

そう言って頭をおもっいきり殴られた。


「もう少しこのままでも良いじゃないですか?なんならこの先も…」

私は唇をとんがらせて抗議した。


「アホか!!戦闘中だぞ、時と場合を考えろ!」


(言質とったったった!!!)


私は「じゃあ、時と場合を考えればいいんですね?」と微笑んだ。



顔を真っ赤にしたご主人様が私から顔をそらし煙の向こうにいるシュプリールの方を見て言った。

「とにかくだ!ヤツを倒す。

作戦は……………だ。いいな?」



「絶対ダメです!!そんなことをしたらご主人様が……」


「今は時間がない。この方法しか思い浮かばないんだ」



そのときちょうど煙がはれてゆく。そして、解毒の終わったシュプリールが怒りの表情でこちらを見下ろしていた。


「やってくれましたねぇ、貴方は楽には死なせませんよ。私の刃で全身切り刻んで切り刻んで細切れにしてから殺して差し上げます」



次の瞬間、ご主人様は走りながらハンドガンを相手に撃ち込んだ。

だが、翼によって全て防がれてしまう。


「麻奈、やれっ!」


(でも…………)

しかし、私は未だに決断できずにいた。


「これは【命令だ】」

そう告げられた瞬間、私の意志とは無関係にエナジードレインが発動される。

シュプリールは余裕の笑みを浮かべていた。


「それは先程で無意味だとおわかりになりませんでしたか?

全くこれだから地界の者は…」


だが、エナジードレインの狙いはシュプリールではない。ご主人様だ。

一瞬驚いたシュプリールだったが笑い声をあげた。


「ふ、ハハハッ!!

そんなことをすれば数の優位が無くなるというのに全く下等な生物の考えることはわからないですねぇ!」



エナジードレインを受けたご主人様は膝をついた。そして、そのエナジーが私に収束してゆく。



「わかってないのはシュプリール、あなたです」

漆黒の大鎌を携えた私はシュプリールへと突きつけながら言い放った。




※えっ?麻奈が下品すぎるって?

私の好みの一つには合致してるので全然大丈夫だと思いたい!!

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