第86話
「麻奈っ!!ひばりっ!!奈美!!!」
手を伸ばすが、そこは3人がいた痕跡すら何もないただの地面
「殺すッ!」
ハンドガンを抜き外に出ようとしたところでナターシャに後ろから羽交締めにされる。
「司令官、落ち着いてください。
今出て行っても彼らと同じになるだけです!」
「あアッ!邪魔をスルナッ!!!
邪魔スルナラ……」
怒りで正常な判断ができなくなった俺はナターシャを振り解き、抜き放ったハンドガンを彼女の頭に突きつけた。
「「「「「司令官!!!落ち着いてください」」」」
他の副官の声も今の俺には届かない。
そして、引金に手をかけたまさにそのとき俺の真横からあの忌々しい女神に似た声が聞こえた。
「あの御三方はまだ死んではいません。
どうか落ち着いてください。でなければ、救える命も救えなくなってしまいます」
ナターシャの頭に突きつけたハンドガンをそのまま声の主に突きつける。
そこには女神エールと瓜二つの女が立っていた。
「誰だテメェ…
俺の許可無しでどうやって入った」
ロストエデンは俺が創り上げた要塞
ゆえに普通の状態でも俺の許可無しで入ろうとするなら門の要塞兵器が起動して迎撃する。
更に今はパーフェクトシールドの展開中
何人たりとも俺の許可無しでは入ることは不可能な状態だ。
その女は頭に突きつけられたハンドガンに臆することなく頭を下げた。
「申し遅れました。
私は慈悲の女神『アウル』
前天界の統治者であり、戦の女神エールの姉です。
そして、あなたに……」
(こいつの声もどっかで…)
女神エールは優しい微笑みをたたえた。
「まだお気づきになりませんか?
『あなたが何を為すのか興味あるわね』」
その言葉を聞いた瞬間に思い出したと同時に急速に怒りがおさまってゆく。
あのとき俺に何を持っていきたいのかを聞いた……
一つ大きく息を吐く。そして、俺は女神の頭に突きつけたハンドガンをおろした。
「それで、あの3人が死んでいないってのは本当ですか?」
魔王が待ちきれなかったのか早口でまくしたてた。
「ええ、いくら神といえども何の痕跡も残さずに消滅させることは不可能です。
あの魔法は『ムーヴメント』
対象を指定した場所に移動させる魔法です。
彼らは送られたのです。あの『天界の三冠』のところへ…」
「とにかく中へ」というナターシャの提案でその場を後にした。
そのとき、女神エールを見上げた俺はほんの一瞬ヤツが今までの余裕の微笑みを崩したのを見た。
みなが着席したのを見計らった俺は女神アウルへと質問をしてゆく。
ちなみに各国の王も通信で参加中だ。
その結果の要点をまとめると
①…妹であるエールが天界で革命を起こした
②…前統治者のアウルは力の大部分を制限され幽閉されたがある協力者の手引きで脱出してここへ
③…地界(俺たちのいるところ)の諸悪の根源は五大国のまとめ役であり、こいつは悪魔の所業を笑いながら行う(魔法でそのときの映像を見せたらしい)
④…その結果、現在の天界では97%ほどが全ての種族を滅ぼし一から新しく創造することに賛成している
⑤…その統治は天界(エール)が行う
⑥…そんなことは見過ごせないので私に協力して天界の統治を取り戻させてほしい
「ふんふん、なるほどなるほど……
そのまとめ役とやらとんでもないことやらかしたんやろなぁ?
ったく面倒に巻き込みやがって!!許さんぞ魔王!」
俺が拳を握り締め魔王へと突き出した。
そんな俺を全ての者が冷ややかな目で見つめる。
「いや、どう考えてもお前のことだろ」
(うん、ほんとはわかってたよ…けどワンチャン魔王になすりつけれたらなぁって)
そして、魔王がポンと手を叩いた。
「ってことは、お前を差し出せば丸く収まるんじゃないか?」
「それはいいな!毛を刈られた恨みもあるしな!」と通信機から嬉しそうなグリックスの声
「ほ、ほう…なるほどなるほど…
お前ら俺がヤツらに勝ったらどうなるかわかってんだろうなぁ!!??」
2人は慌てて「「じょーだんだから、じょーだんハハハハ…」」
話を元に戻したのはルーミルだ。
「ですが、司令官。実際ヤツらに勝てる策はあるのですか?」
「ああ、策ならある。
まあちょ〜っとお嬢ちゃんにはツラい目見てもらわなあかんけど…なあに、天井のシミ数えてる間に終わるさかい…ゲヒヒ」
と女神アウルを見ながら告げる。
その言葉を聞き、両手で自身の身体を抱きしめ、ぶるっと身震いした女神アウル
「あ、あのぅ〜…身の危険を感じるのですが…私、頼む方を間違えましたか?」
俺と1名を除いた全ての者が憐れな子羊を見る目で『うんうん』と頷いていた。
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