第85話
「司令官!これは一体何がどうなったんです?」
通信機からルーミルの驚いた声が響く。
こちらでも魔王たちの驚きの声が響いていた。
当面の難を乗り切った俺はサーニャがロストエデンの傘下に入ったことでパーフェクトシールドの効果が付与されたことを話した。
話はそこで終わらなかった。
同時刻に他の国も襲撃を受けていたのだ。
だが、不幸中の幸いでそちらの方は女神?がいなかった為、サーニャほどの損害を出さずにロストエデンの傘下に入ることができた。
それでもかなりの死傷者が出たようだ。
そして、すぐに副官を招集し、敵を探るために城壁へと赴いた。
その頃には敵もすでに攻撃が無意味だと理解しておりただ無言でこちらを見下ろしていた。
話の口火を切ったのはシルバーだ。
「だんな、ありゃなんですかい?さっきの攻撃はアイツらの仕業ですかい?」
「ああ、だが正体は全くわからん。
で、シルバー、単刀直入に聞くが君に防衛は可能か?」
「勘弁して下さいよ。ありゃ普通じゃないのはだんなだってわかるでしょ。
今の状態じゃ120%勝ち目はありませんね」
そういって頭を掻きながらシルバーは率直な意見を口にした。
俺も同意見だ。とてもじゃないが今の状態では勝てそうにない。
そんな中、歓喜に震える者が…
「ああ……女神!!天使!!
一度解剖もとい研究してみたかったのですよ。
アマンダさん、ちょっと行って一匹捕えてきてください。くれぐれも壊さないようお願い致しますよ?」
「全くこの研究バカは…
大体壊さないように飛んでる敵をどうやって捕えるんだい!?」
アマンダは目を輝かせている研究バカとやらに呆れていた。
「あれはワシの手にも負えんな、ガハハハハ」
アレクセイはこんな時でも楽しそうだ。
一息ついた俺はみんなを見渡してから女神へと顔を向けた。
「さてと、じゃあ一応対話してみるか。
さっきの攻撃を見る限り期待薄だけどな」
「俺はロストエデン司令官の三鍵 唯人だ。
君たちは誰でなぜ急に攻撃をしかけてきた?」
女神はなおも俺たちを見下ろし微笑を浮かべていた。そしておもむろに口を開いた。
「私は天界を統べる戦の女神『エリス』
今の世界は私の役に立ちません。ですから、全ての種族を抹消し一から新しい生命をつくりなおします」
聞く者を安心させる心地よい声で女神エールは恐ろしい言葉を口にした。
「そんなっ!あなたの都合でそんなことっ…許されると思っているのですか!?」
珍しくひばりが怒りをあらわに叫んだ。
女神は憐れな者を見る目でひばりへ言い放つ。
「許される?許してもらう必要などありません。私は神なのです。全ては私の望むまま…」
(ん?この声最近どこかで…)
女神エリスの無慈悲な言葉を聞きながら俺は記憶を探る。
しかし、あと一歩というところで出ない。もどかしい。
なので、俺は話を繋いだ。
「ふ〜ん、それで後ろのやつらは?全員女神というわけではないんだろ?」
すると、全ての天使が揃って抑揚の無い声を放つ。
『我は、神の代弁者。貴様らを滅すべき存在なり。滅せよ、神に仇なす不届き者ども』
「その神とやらに仇をなした覚えは全くないんだが…」
そこで一旦下を向き言葉を区切る。
そして、再び顔を上げた。
俺の表情を見た魔王と麻奈が一歩後ずさった。
「ロストエデンを攻撃したってことはお前らは敵ってことでいいな!?
必ず報いを受けさせてやるッ!」
その時、全ての代弁者の顔が森の方へと向けられた。
俺もすぐそちらを確認する。
「くそっ!まずいぞ!」
代弁者が見つけたのは採取に出かけていたと思われる幼いエルフの兄妹
その兄妹は一刻も早くサーニャへと戻るため無我夢中で駆けていた。
だが、妹の方が何かにつまずき転んでしまった。
兄が妹を助けようとしたその時には代弁者は既に攻撃態勢に入っていた。
俺は考えるより先にスキル【雷剣】発動させていた。
パーフェクトシールドの外に出てしまうともちろんその効果は得られない。
兄妹の手を取り更に雷剣を発動させロストエデンへ帰還する。
二度目の雷剣発動直後に代弁者の攻撃が兄妹のいた地を撃つ。
間一髪助かった。
だが、この時俺は致命的なことを見落としていた。そう、女神エールも攻撃態勢に入っていたことを。
気づいたときには俺に向けて攻撃が放たれた後だった。
(くそっ!あと数瞬、数瞬あれば…帰り着くのに…)
死を覚悟したそのとき3つの手に背中を押され門の中へ入った。
振り返ったさきに麻奈・ひばり・奈美が笑顔で女神エールの攻撃に撃たれていた。
そして、3人は灰すら残さず跡形もなく消失してしまった。
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