第84話

ーーとある一室ーー



「あれだけ支援してやったというのに……

あの要塞のせいですべて!!すべて台無し!

もうこうなったら仕方ない。最終手段を使うしか…」



ヤツらがダメだったときのためのプランβ

スマートな手段ではないがこうなっては仕方ない。そのための手筈も整っている。



「私が…!私こそが◯◯の頂点に立つ!!

楽しみに待っていなさい。ふふふ…」


私は計画を実行にうつすために部屋を後にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ドワーフとの会談から約1か月、俺たちはロストエデンで平穏な日々を過ごしていた。

ルーミル・マーリーン・グリックスは自国へ帰りそれぞれ忙しくしているようだ。

なので、今暇そうなのはコイツだけだ。



「おい、魔王お前も自分の国に帰ったらどうだ?暇そうなのはお前だけだぞ」


俺の部屋で自室か!とツッコみたくなるほど寛いでいる魔王がこちらへ顔だけ向けた。



「お前も暇そうではないか。

国のことはフェルトに任せてあるので問題ない。

それよりこれからどうするんだ?帝国の至宝を打ち破り、さらに五大国の連合も出来た。さすがにこれ以上ノーザイアも侵攻はしてこないだろう」



(そうだな、このままのんびり妹たちの成長を見守って過ごすのもいいかもしれないな)



天井を見上げてそんなことを考えたときだった。警報アラートがけたたましく鳴り響いたのは。

俺と魔王が顔を見合わせたと同時にナターシャが慌てて部屋へと飛び込んできた。


「司令官!敵襲ですッ!!」


「落ち着け。警報アラートが鳴ってるんだ。それぐらいわかる。ノーザイアか?」



だが、俺はナターシャの様子がおかしいことに気づいた。ノーザイアの戦力ははっきりいって相手にならないのだ。ここまで慌てる必要はないはずだ。なのに…


「それが……わかりません」


魔王が俺より先に反応した。


「わからないとはどういうことだ?」


言葉に詰まるナターシャ


「レディ、聞いているな。敵が確認でき次第画面に映してくれ」



「ハイ。敵すがたをカクニン……画面を切り替えマス…」


そのとき、麻奈・ひばり・奈美も揃って部屋へと慌てて飛び込んできた。

そして、画面上に映し出された敵の姿を見てその場にいた全ての者が一瞬声を失った。


「…………これって、、、天使か?」



先頭に立ち悠々と飛んでいるのは真っ白な緩いローブを纏い純白の羽を携えた女神に見えた。その女神は見る者を安心させる微笑を浮かべていた。

そして、その後ろには同じ顔をした天使の集団。こちらは全くの無表情だ。まるでロボットのように…



見た瞬間に震えた。これはヤバいヤツだと。

そして、もっと驚くべき事態が起こる。


「敵の到達予想時刻はいつだ?」


「ハイ…到達予想時刻は……8秒後デス」


聞いた瞬間、考えるより先に言葉が出ていた。

「レディ!!パーフェクトシールドだ!!急げッ!」


画面上には手を掲げて攻撃態勢に入った女神の姿が映し出されていた。


「パーフェクトシールド展開……完了…現時刻ヨリ1週間すべての攻撃を無効化しマス」


ゲーム中と同じ決まり文句をレディが告げたと同時にもの凄い轟音が鳴り響いた。


(今のをモロに食らってたら、、、、)



ほっとした俺だったが麻奈の一言で我に返った。


「ご主人様……サ、サ、サーニャが…」


画面の端に映っていたサーニャは今の攻撃の余波で炎上していた。

エルフ自慢の多重結界魔法が意味をなさなかったのだ。



「ナターシャ!今すぐルーミルと連絡を取れ!!早くッ!」


はいっ!と駆け出したナターシャ


画面ではこちらに攻撃を加える敵の姿が映っていた。

だが、すぐに気づいてしまう。パーフェクトシールドの存在に。そうすれば次は、、、、


ものの1分もしないうちにナターシャが通信機を持って戻ってきた。

と、ほぼ同時に敵もこちらへの攻撃が無駄だと気づいたようだ。攻撃が中止された。

そして、方向を変えた。

その方向はもちろんサーニャだ。



通信機に向かって叫ぶ。

「ルーミル!聞こえるか!?無事か!?」



通信機からルーミルの声が聞こえた。

「はい、なんとか、、、ですが、今ので相当数の死者が…なんなんですか!?今の」


「いいか!理由を説明している暇はない。俺が今から言うことをサーニャの長に言わせるんだ。

『ロストエデンの傘下に入る』これだけだ。

敵はそちらに方向を変えた!急げッ!」



(間に合ってくれよ…)


だが、ロストエデンの隣だったことが災いし既に攻撃態勢に入った敵の姿が映し出されていた。


そして、再び轟く轟音

今は煙で見えないが、サーニャはもう…


「そんな…こんなことって…」

ひばりがその場に崩れ落ちた。



「サーニャが傘下ニ入ったことにヨリ、パーフェクトシールドの効果が付与されマシタ」

部屋に響いたレディの声


煙がはれると半壊してはいたが炎上もおさまったサーニャが画面に映っていた。



「よっしゃぁぁぁぁぁぁァッ!!!」

部屋に俺の叫びがこだました。




※新しい章に突入しました。

ここからコメディ要素は当分の間少なくなる予定ですが応援のほどよろしくお願いします。






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