第83話
魔王の叫びを聞いたトールは頭をかいた。
「ああ、その節は国の女共がすまんことをした。
最後に残った剣神を倒したことで感極まったこともあってあんな行動に出てしまったのじゃろう。多分…きっと…そうだとよいなぁ…」
(なんか最後の言葉が不吉なんだけど…
じゃあなにか?街で見かけたおっさんドワーフの中には女もたくさんいたってことか?
そらなら、ドワーフの性別ってどうやって見分ければいいんだ?)
トールと奥さんをまじまじと観察してみたが全く違いがわからない。
何度眺めてもやはりおっさんにしか見えん。
頭を抱えた俺だったが周りを見渡すと他の面々も同じく頭を抱えていた。
この話題は後で考えるとして、話を前に進めなければならない。
「では、とりあえずこちらの五大国で友好関係を結ぶということでよろしいでしょうか?
獣人とドワーフは犬猿の仲だと聞いておりますがそちらの方は問題ありませんでしょうか?」
トールは大きく頷いた。
「犬猿の仲なのは大昔からの悪しき風習じゃ。この風習は正さねばならん。
それに、復興の為には争っている場合ではあるまいて」
グリックスも同調する。
「同感だ。俺様の代で争いが起こったわけでもねえからな。
国民には俺様から説明しておこう。
それより唯人お前話し方キモいぞ」
ルーミル・マーリーン・フェルトさんまでがうんうんと大きく頷いていた。
「なん…だとっ…!?普通こういう場では丁寧な話し方するのが一般的なんだよ!
もういい、いつもの話し方に戻す」
トールはガハハハと笑った。
「こっちもそっちの方が話しやすいわい。ところで何か礼をせねばならんな。
何が良いか…」
「それなら、ドワーフの小さな…もごもご…」
言いかけたルーミルの口を光の速さで塞ぐことに成功した俺
(あっぶねぇ!!目の前の女ドワーフの子ども版…絶対ヤバいの出てくるやんけ!
うん、、、どう考えても無理無理)
俺はルーミルの口を塞いだことで油断していた。
「では、ドワーフの女の子でどうでしょうか?
ロストエデンではヒト、魔族、エルフ、マーメイド、獣人の女の子が友達になって楽しく暮らしてるんですよ〜♪
ですよね?あ・な・た♡」
(こいつ…どうでもいいところで心は読むのに重要なところで読んでないだとっ…)
愕然とする俺には一向構わず『手柄をあげたった!』ぐらいの勢いでマーリーンがドヤ顔で俺を見た。
それを聞いたトールは身を乗り出した。
「おおっ!!それはよいのう!
ぜひ、ドワーフも参加させてもらおう!
ダグナルを呼んできてくれぃ」
(女の子なのにダグナルだとっ!?
もはや筋骨隆々のドワーフしか想像できん。いや、もしかするとヒゲさえ生えてる可能性も…)
「あっ、いや、、、もう部屋が」と言いかけたところで奥さんが俺たちに一礼をして会談場を後にしてしまった。
トールは上機嫌だ。
「ダグナルはのぅ、ワシの娘でなワシに似てとってもキュートなんじゃ♡
それに頭も良いし、全てが完璧でのう」
(ここだ!!ここしかないッ!)
「そんなに大切な娘さんならやはり手元に置いておいた方が…」
俺の最後の抵抗もむなしくトールは首を振った。
「いやいや、やはり娘には広い世界を見てほしいからのぅ。
これからは五大国が協力するんじゃ。次の世代の為にも涙をのんで親元を離れさせよう」
隣ではグリックスが笑いを必死に堪えていた。
(くっそがー!!
グリックス、なにわろてんねん…また毛刈るぞ)
そうこうしているうちに扉が開き奥さんが入って来て「さっ、皆様にご挨拶なさい」と促した。
おそるおそる奥さんの後ろから顔を出したのはTHEロリっ娘。メイ・リン・ユイ・ジェシー・ライムの誰より幼く見える。
「あのっ、、ダグナルです。
その、、、よろしくお願い…します」
トールが誇らしげに言う。
「どうじゃ?ワシにそっくりでキュートじゃろ?」
俺は思わず叫んでしまった。
「どこにお前の要素が!?カケラもないやんけ!!」
「何を言う。目とか鼻などそっくりではないか!」
そう言ってダグナルの隣へ並んだトール
(うん、、、絶対お前の子ではない。
それより、このTHEロリっ娘が成長すると奥さんみたいになるのか?
完全変態どころの話じゃないぞ…)
これ以上はぶっ倒れそうなので細かい話は今度ということで俺たちはダグナルを連れてロストエデンへと帰還したのだった。
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