第80話〜閑話1〜

帝国の至宝との激闘から1週間後、俺たちはロストエデン内で祝勝記念と称した宴会を開いていた。


皆が思い思いに歓談しながら料理や酒に舌鼓をうっていた。

そんな中、、、


「グリックスさん!さぁ飲んでくれ!

今日は君たちの為のお祝いだからな」


すでにだいぶデキあがっている更に酒を勧める俺



「おうッ!

俺様の活躍を間近で見れなくて残念だったな!!はっはっは!

いやぁ、それにしてもココの酒は美味いッ」


ぷはぁっと一気に酒を飲み干したグリックスにすかさず次の酒を用意する。


「そうかそうか、それは良かった。

僕もグリックスさんの活躍を間近で見たかったなぁ〜」



赤ら顔で気を良くし、更に酒をあおるグリックス


魔王はこちらをチラッと見てグリックスに同情の目を向けていたが、当の本人はそんなことに一向気づいていない。



そろそろ頃合いだなと思った矢先、グリックスは酔い潰れて寝てしまった。

補佐のおばさん獣人に今日はこちらで部屋を用意するので泊まっていくように伝えると、恐縮しながらも受け入れてくれた。



早速俺はでナターシャにグリックスの部屋を用意するよう伝え、さらにアンドロイドたちに運ぶよう手配する。


そして、アンドロイドたちに運ばれていくグリックスについて俺も会場を後にした。



(フハハハハハ!これでこの祝勝会の目的を果たしたも同然だ。大勝利!VICTORY!)




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぁぁぁぁぁぁ

なんだ、寝てしまったのか。それにしても昨日の酒は美味かったな。宴もまたやりたいものだ」


気分良く目覚めた俺様はベッドから体を起こした。


(やけにスースーするな)


ここでは温度を調節できるから間違って低く設定してしまったのだろうと思い部屋の外に出ると既に補佐の獣人が控えていた。


「おはようござい…ます…??

あの…失礼ですがどちらさまでしょうか?」



(何言ってるんだ?コイツは。昨日の酒がまだ抜けてないのか?)



「俺様だ!グリックス様に決まっているだろう!まだ酔っているのか?」


明らかに様子がおかしい。何か言いづらそうにもじもじしている。

その様子に俺様は苛立った。


「何だ?何かあるならハッキリ言え」


すると、もじもじしていた補佐は意を決したように


「あっ、、あのそうですよね。

そろそろ暑くなってきますから、、いい、、と思います。

その御姿もお似合いだと、、、」


あん?俺の姿?

そう言われてはじめて自分の体を見た。



「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁっっ!!!」


俺様のふさふさで威厳溢れる毛が残らず全て無くなっていた。



俺様の枕元に『ちょっと毛貰うね( ✌︎'ω')✌︎ by唯人』という手紙を見つけたのはそれから少し後のことだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


祝勝会の翌日未明に俺はこっそりアーガイアへ向けて出発した。


(まっ、ちょっと毛貰っただけだしへーきへーき!また生えてくるしな!無問題!)


そして、アーガイアへと無事に着いた俺は早速目的の店へと向かった。

そこは前の祭りで世話になった民族衣装の店だ。今回はちゃんとした店舗のほうである。


「やぁ!久しぶりだね。元気にしてるかい?」


俺に気づいた店主


「あら、まぁ司令官様ようこそお越しくださいました。

今日はおひとりですか?」


「そうなんだよ、ちょっと頼みごとがあってね。今、大丈夫かな?」


もちろんです!と言いながら俺の前へとやってきた店主に一枚の紙を取り出し、前へ広げる。


「これなんだけど、、作ってもらえないだろうか?」


紙に書かれた絵をマジマジと見つめた店主は、これだとここをこうして、、なるほど、こっちはこうして、、と既に仕事モードに入っていた。


「見たことない形ですけど、これはどこかの国の衣装なのですか?」


「あぁ、実は俺たちの国の服なんだよ。で、こっちなんだけど…」

と言い、もう一枚の紙をその横に広げた。


「これは、私では難しいですね…

ですが、私の妹の店ならできると思います。材料はお持ちなんですか?」


大きく頷き、例のモノを取り出す。


「まぁっ!立派ですね。

こんな立派なものをどこで手に入れられたのですか?」


俺は店主から顔を逸らしながら

「あぁ〜、その、なんだ。

うん、そうだ、友人から快く貰ったのだよ。持つべきは友人だな。ハッハッハ!」


店主は目をキラキラさせながら

「そんな親切な友人がいらっしゃるなんてさすがは司令官様ですね、うふふ」と尊敬の眼差しを俺に向けていた。



それから俺は店主の妹の店へと案内してもらい、姉の紹介で先のものを最優先で作ってもらえることになった。


どちらも爆速で1週間で仕上げる!と張り切っていたのでその間はアーガイアに滞在することにした。

ターゲットもアーガイアにいるのだからちょうどいい。

俺の部屋には『ちょっとの間留守にします。探さないでください by唯人』という置き手紙を残したしへーきへーき!



そして、俺はアーガイア城へと向かい、例のターゲットに1週間の寝床と食事を頼んだ。

それと、このことはロストエデンには内緒にしておくことも。



ロストエデンには内緒の部分でかなり渋っていたターゲットだったが最終的には認めてくれた。

なんでも極秘国賓扱いにしてくれるんだとか。



後から聞いた話だが、、

一方、その頃のロストエデンではてんやわんやの大騒ぎになっていた。

魔王、マーリーン、ルーミルがグリックスを見た途端に笑い転げ、麻奈やひばり、奈美も肩を震わせて笑いを隠しきれない。


獣王は俺に騙されたと知り、血眼になって俺を捜していたがもちろん見つかるはずもない。


魔王が『あいつがいつもと話し方が違うときは何か企んでるときなんだよ!

騙されたお前が悪い笑笑笑笑』と。


マーリーンは『涼しそうでヒヒッ…お似合いぷふっですよ』と。


ルーミルは『なんだか親しみやすさ…ちょっ待ってください笑

失礼しました。親しみやすさが増しましたね。ちょっ、、、やっぱ無理笑笑』と。


最終的にはナターシャがジョー博士に『ハイパー毛生え薬V』を作ってもらい、それを持って国へと帰ったらしい。

ジョー博士の説明では1か月ほどで元の通りに戻るようだ。



その後はいくら捜しても見つからない俺にロストエデン中が更に大パニックになった。

そして、麻奈が俺の部屋で例の手紙を見つけ、半狂乱になった麻奈と奈美の号泣がずっと止まらなかったのだとか…




そんなことは全く知らない俺はアーガイア城で極秘国賓扱いでのんびり寛いでいた。


(あぁ…1週間後楽しみだなぁ…)




※今回の閑話はぜひ書きたかったので無理矢理ぶっこみました!

相変わらず主人公は鬼畜の所業ですね!いや、俺が書いたんだけど…





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