第79話
「ふっふふ〜んふ〜ん♪
こ〜れでわったしはビッチをだっしぬいて〜♪は〜れてけっこんできまする〜♪」
坑道の入口からアホな歌とともにマーリーンが機嫌良く現れた。
隣では麻奈が「チッ…惜しい…」と舌打ちをしている。
(こいつらちょっとは仲良くできんのか…それにしても、ひばりと奈美がこの場にいなくて助かった。いたら、もっとうるさそうだ)
マーリーンは俺を見つけると猛ダッシュで走ってきて俺の腕を掴むと同時に背中で隣の麻奈をドンっと突き飛ばした。
そして、片腕は俺を掴んだまま残った片腕であさっての方向を指差し
「あなたぁ〜♡
さっ、新居を決めましょ!指輪もこのとおり準備済み♪
魔神やっつけちゃったからわたしたちで新しい魔神誕生させちゃいましょ!」
俺が何かを言うより早く麻奈があいてる俺の腕を掴み額に血管を浮かべて割り込んでくる。
「はぁぁぁぁぁぁ!?
魚風情がッ!調子に乗りやがって…ご主人様と六つ子を成すのは私ですぅ〜。ハイッ!残念!!」
毎度毎度のやりとりにうんざりしながら
(えっ!?六つ子ってなに…?麻奈の中で何がどうなってんの!?)
とりあえず、2人につかまれた腕を振り解いた俺はマーリーンの頭をポンポンして労ってやった。
「それにしてもよく魔神に勝てたな。ただのアホな魚じゃなかったみたいで安心したぞ」
マーリーンがぷくっと頬を膨らませながら
「アホでも魚でもないですぅ〜!
わたし水中戦は得意なんですよ。水魔法も得意です」
そして、辺りを見回したマーリーンはうってかわって地面に膝と手をついて項垂れた。
「お、おじいちゃんに負けた…獣王さんはともかく、おじいちゃんに負けた…」
気の毒なほど落ち込んだマーリーン
俺はそんなマーリーンの肩をポンと叩き
「まっ、その、なんだ…あまり気にするな」
と慰めてやった。
(これで後は魔王だけか。俺の姿をかしてやったのに負けるなど許されんぞ!)
その後数時間が経過しても魔王は戻ってこなかった。
日も暮れ始め、いよいよダメかと思われたとき満身創痍になった魔王が姿を現した。
全身ズタボロのようで坑道に落ちていたと思われるきったない棒で体を支えている。
そして、出てきたと同時に前のめりに倒れてしまった。
「麻奈ッ!グレーターヒールだ!急げ!」
「はいッ!」
駆けつけた麻奈がグレーターヒールを発動。
ズタボロだった魔王の傷がみるみる癒えていく。
だが、全快には時間がかかりそうだ。グレーターヒールでも時間がかかることがものすごい傷だということを物語っていた。
「おいっ!魔王しっかりしろッ!!
剣神はそんなにヤバいやつだったのか!?」
うっすらと目を開いた魔王は弱々しく口を開いた。
「いや、剣神はあまり苦労せず倒したんだが……」
「ッッッッ!そうか、わかったぞ!罠だな!?」
俺は独り合点し、拳を握り締めた。
「いや…ちがっ…」
「帰り道に罠が仕掛けられてそうなったんだなっ!?
ノーザイアのヤツらえげつないことをッ!」
まだ回復途中の魔王が急に上半身だけおこした。と同時に叫んだ。
「だーかーらー違うっつてんだろッ!
あんたんはほんに話聞かんなぁ!」
叫び終わった後、魔王はまた元の態勢に戻った。
「あぁん!?てめぇにだきゃ言われたくねぇ!!
おっ、痛いのはココか?ココだな?」
魔王の治療途中の傷を指でグリグリする。なんか魔王が呻いているが容赦はしない。
一通り魔王の反応を楽しんだ。
「で、剣神でも罠でもなければなんでこんなズタボロになったんだ?」
魔王は目を閉じ語り始めた。
なんか嫌な予感しかしない。
「剣神と対峙した俺は華麗なるパーフェクト剣技で難なく剣神を撃破した」
(うぜぇ…さっさとその傷のこと話せ)
「その後だ。想像するだけで今でも震えが止まらない……
坑道の先からドワーフのおっさんらが『魔王様ステキ〜!カッコいい!!抱いてぇ〜!!』とものすごい人数出てきたんだ。
逃げたんだが追いつかれてしまってな。その後は………」
魔王の絶望の表情がどれほどの地獄だったかを物語っていた。
「そ、そうか。シューベルト君、モテモテで良かったじゃないか。おめでとう!
で、ヤったの??」
「やるわきゃねーだろ!!!
それだけはなんとか死守した……」
悲壮感漂う魔王にその場の全ての者(俺を除く)が同情しないわけにはいかなかった。
俺はというと……
(ヨシッ!これでまた一つネタができたぞ!!)
と心の中でガッツポーズをかましていた。
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