第76話

〜〜レモンド〜〜


「運がいいぜぇ〜!!!

これが神様からのご褒美ってやつかぁ!?」

相手を見据えて舌なめずり



俺の相手は、見た目美少女の男の子だ。


「よぉ、おめーさぁ、もう諦めて降参しろ。

それなら、肋骨2、3本で済むぜ?

まあ、ケツ穴は俺のモノでガバガバになるけどなぁ!?」



下卑た笑いを響かせる。

そう、俺は可愛い男好きに加え加虐性欲も併せ持っている。

メンバー内でも知ってるのは『癒神』ぐらいだ。ヤツだけはなぜか俺の性癖を見抜いてやがる。



しかし、俺の忠告に相手は腰を落とし拳を握りしめることで応えた。


「はんッ!そうかよ!

なら、腕と足は諦めるんだな!!バッキバキにしてやっからよ!」



(俺の体格と相手の体格では相手にならねー。

一撃で肋骨を粉砕し、後でゆっくり腕と足の骨を折ってから愉しむとするかっ!)



スキル『ワイルドブレイク』を繰り出すために腰を深く落とし、左手を前に右手を後ろに構える。


『ワイルドブレイク』を防ごうと相手が左足を上げた。

次の瞬間にスキルが発動

目にも留まらぬ速さで間合いを詰め、その左足を目掛けて突きの一撃を加える。


「無駄無駄ムダムダぁぁぁぁぁっ!!

吹っ飛ばされてその細い左足がバッキバキになるだけ……」


「えっ…あれ……?」


相手は『ワイルドブレイク』を後方に2、30cm下がっただけで耐え切った。

そして、左足の奥では笑みを浮かべていた。

ふいに相手の姿が消えた。と、同時に俺の顔面へ蹴りが放たれた。



「なっ…はやっ…」

顔が後ろにのけ反ってしまう。

そこから連続攻撃を受けることになってしまった。


横腹、足、顔…的を散らしながら相手の攻撃は続く。

しかも、一撃一撃があの細い身体で繰り出されたとは思えないほどの威力だ。



(チッ…!どうなってやがる…!

『ワイルドブレイク』を防がれるなんて初めてだぜ…それにこの強さ。何者だ?

仕方ねぇ、アレやるしかねぇか)


俺は相手の攻撃の一瞬のスキを見逃さず、後方へ跳んだ。

と、同時にスキル『アルティメットディフェンス』を発動させる。



『アルティメットディフェンス』は3分間一切動くことができない代わりに自身の身体を硬化させる。

その硬化はたとえどんな武器を用いようとも傷つけることができない。



相手の追撃の蹴りを顔面で受ける。

だが、当然微動だにしない。続けて腹、足と拳や蹴りを放つが結果は同じ。


(ハッハッハっ!ムダムダ…むだなんだよッ!)

この間に自身の最強スキル『デッドリーインパクト』を発動させる準備に入る。



『デッドリーインパクト』は相手の防御力やらを全て無視でき、どんな相手でも必ず撃死させる最強の技。

だが、スキル発動には2分間、防御すらせずに力を溜めなければならない。



相手も自身の攻撃が効いていないことに気づいた。拳を見つめ開いたり閉じたりしている。


(もう少し待ってろッ!!

その細い土手っ腹に風穴あけてやるッ!!)



相手は俺の目の前に立ちニヤッと笑った後、上半身を後ろへ仰け反らせ右腕を地面につくほど大きく振りかぶった態勢を取った。

そのまま動かない。



(コイツ…『アルティメットディフェンス』が切れたと同時に攻撃を叩き込むつもりか?

バカめ!!こちらの『デッドリーインパクト』発動の方が早い!)



スキル使用者と相手ではどうしてもスキル解除を知るタイミングにズレが生じる。

そして、そのタイミングは圧倒的にスキル使用者に有利だ。更に、今回はその差が致命的な差となる。


そのまま1分が過ぎた。


(あと15秒…)



その時、相手の右腕が真っ赤になり蒸気を放っていることに気づいた。

と、同時に相手のスキルが発動


(ハッハッハッ!!馬鹿バカバカばかめッ!

焦りすぎだ!まだ『アルティメットディフェンス』中。

これを防いで終わりだっ!)


振りかぶった右腕が俺の上半身中央へ命中する。


(よしっ!防いだ!

待ってろッ!すぐに……

あ?なぜ相手があんな遠くに…え?あそこにあるのは、、、俺の下半身?)



相手がはじめて口を開いた。

「中々楽しかったぞ、お前。

俺でなければ勝てただろう。『王の拳』を使ったのは久しぶりだ」


その瞬間、相手の姿が揺らめく。と、同時に現れたのはライオンのような髪、筋骨隆々の身体をした獣人。


(あ、アイツは…獣王…なぜ………?)


『王の拳』によって岩壁に叩きつけられた俺の後ろに獣王家の紋章が刻まれていたことなど知るよしもなく、俺の意識は途絶えた。




〜〜ルナ〜〜

同時刻


「あら、あなた魔族じゃないわね?

私の加護が反応しないもの。何者かしら?」


私は目の前の乳ばかり大きい女に語りかけた。


「ひょっひょっ、さぁすがは『癒神』じゃ」


相手の口から聞こえてきたのは女の声ですら無かった。

そして、相手の姿が揺らめく。


「い、いっぇぇぇぇぇい♪ノってるんご?はっぴーはっぴー☆」


エルフのおじいちゃんの姿が現れたと思ったら同時に両手でぴーす



つい額に血管が浮かんでしまう。

(私ったらいけないわ…お肌に悪いもの)

私は思い直し、現れたおじいちゃんに柔和な笑みを浮かべ話しかけた。


「おじいちゃん、なぜ彼らの格好を?」


エルフのおじいちゃんは更に手でハートを作り出す。



イライラっ


「今、おまえさんイラっとしたじゃろう?

いくら見た目を優しそうに偽っても心の醜さが隠しきれておらんぞぃ」



もはや、我慢の限界を迎えた私は素に戻り対応する。


「オイ!じじい、さっさと質問に答えろ!!

犬のエサにすんぞ」


ようやく相手も満足したらしく、こちらを向いた。

腰をかなり曲げており、今すぐぽっくり逝っても全然不思議ではない。


「いやん♪せっかちなヒト♡」



(もういい…さっさと殺して終わりに…)



だが、次の瞬間身体が強張った。

(どこから?まさか他に誰かいる…?)


「『癒神』などという不埒モノがおるようでな。お灸を据えに来たんじゃよ。」








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る