第75話

〜〜アリアナ〜〜


あーしが発動させた【アースコントロール】で出口に設定した場所。

それは巨大な地底湖


今、あーしは獲物の足を掴みながら水中を泳いでいる。


「ほらほらぁぁぁ、早く上がらないと溺死しちゃうよぉ??

あれ、ごめぇん、あーしが足持ってるから上がれないんだよねぇぇ

あははははは」



私の獲物のヒト種は必死に私の手を振り解こうと踠いていた。

だけど、水中では思うように動けず、その手は水を切っている。



「あはははははっ!!

無駄だってぇ、水中で半マーメイドのあーしから逃れられるわけないじゃん!

陸上だと万一変なスキルで負ける可能性もあるけど水中だと無理だよねぇぇ。

あーし、相手が溺死する瞬間の顔って好きなんだぁ。

苦痛の極みってかんじでゾクゾクしちゃう」



あーしはより深くずーっと深くを目指して泳ぎ続けた。



そして異変に気づく

………おかしい。潜り始めて15分ぐらい経ってる。


普通のヒト種ならとっくに溺死していておかしくない。だけど、相手は必死に踠いているけどまだ死んでない。

半マーメイドのあーしはヒト種よりも長く潜ることができる。ただ、永遠に潜れるわけじゃない。

ずいぶん深くまで来てしまった。まだ余裕はあるけど…



(ここは一旦上がって仕切り直そう)


あーしが上を目指そうと泳ぎ始めた瞬間、逆にあーしの腕が水底へと引っ張られた。


「へっ…なに!?なにが起きてんのっ!!」



驚き、振り返ると獲物がヒト種ではあり得ないスピードで更に深くを目指して泳いでいた。



あーしは瞬時に掴んでいた手を放し、水面へと泳ぎ始める。

だけど、相手のスピードはあーしより速く、すぐに追いつかれた。


(なんでなんでなんでなんで………)


そして、腕を掴まれ水底へと泳ぎ始める。

あーしも必死に上がろうと泳ぐけど全く敵わない。


「くそっ!この…手を放せ!!」


あーしは掴まれていない方の腕で【アクアブリット】を放つ。


相手はそれを難なく泳ぎながら避けた。

だけど、今ので相手が掴んでいた手が離れた。


(今だっ!)

あーしはあらんかぎりの力で上を目指し泳ぎ始めた。


あと半分……!

その時異変は起こった。巨大な渦潮があーしを水底へと押し戻した。


「これ!【メイルシュトローム】じゃないの!!なんでなんでなんで…!」



【メイルシュトローム】は2つある最上位水魔法の1つだ。巨大な渦潮を発生させ、全てを呑み込む。

海上でこの魔法を発動された場合、たとえそれがどんなモノでも抗うことはできず呑み込まれてしまう。



だけど、半マーメイドであるあーしは何とか死なずに引き摺り込まれるだけで済んだ。



「あらぁ、お帰りなさい♪」


あーしは目の前の相手へと捲し立てた。


「あんた何者なのっ!?

ヒト種がこんなに長い時間潜ったり、あんなに速く泳げるわけないしっ!!メイルシュトロームだって!」


相手は悠然と泳ぎながら

「実は私も水中が得意なんですよ♪」



「得意とかいうレベル超えてるし!!

それに最初は苦しそうな顔してたじゃん!!」


相手は自分の頭をこつんと叩き

「忘れちゃってましたっ!」と言った。



(冗談じゃないっ!こんなところで死んでたまるか!あーしは『魔神』なんだ)


だが、水中ではほとんどの魔法が効果を発揮しない。更に【アースコントロール】はディレイで使えない。

必然的に使えるのは水魔法に限られる。

先ほどの【アクアブリット】を避けたのや【メイルシュトローム】を見ると相手に水魔法が通じるとは思えない。



これならっ!!あーしはもう一つの最上位魔法【タイダルウェーブ】を発動させた。


その途端水中にも関わらず、巨大な津波が相手を襲う。



【タイダルウェーブ】2つある最上位水魔法もう一つ。

本来は海面上で発生させ、沿岸部にいるヒト、家屋など全てのものを押し流し一掃する。

この魔法に巻き込まれると生存は絶望的であるため、最も恐れられている魔法の1つだ。




それは相手を軽々押し流して、壁に衝突させ息絶える……はずだった。



だが、相手は悠然とその巨大な津波に乗り、あまつさえこちらに向かって泳いでくる。


「あ…ああ…あ…」

最上位水魔法が難なく敗れたあーしは放心状態


そして、相手がまたもあーしの腕を掴み水底へと引っ張り始めた。


「私ともう少し遊びましょ?」



その時、相手の姿が揺らぎ始めた。

そして、それがはっきりしたときあーしが見たものは…『マーメイド』の姿。


「マーメイドっ!!??」


そのマーメイドはイタズラがバレたような顔で


「あらっ、バレちゃいました?

そーなんです。実は、アトランティスの『マーリーン』でしたぁ」



マーメイドに水中戦はいくらなんでも…

それに、『マーリーン』ってアトランティスの………………



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