第74話

「では、以上のことを締結するということで宜しいでしょうか?」


ナターシャがみなを見回して確認をとる。


「ああ」「ええ」「私は何でも大丈夫ですー♪」「いいぜ」


最後に魔王、ルーミル、マーリーン、獣王が握手をかわして終了……のはずだった。




そこで突然ルーミルが俺に話を振ってきた。


「ところで、司令官殿は入室の際うかない顔をなさっていましたが何かございましたか?」


さすがはルーミルといったところだ。

今回の件は彼らにも影響があるだろう。俺は正直にノーザイアからの会談要請を話した。




話を聞いたフェルトさんが不思議そうに訊ねる。


「ノーザイアとの会談だけならそんなに悩むことではないような気がするのですが?

無理な要求なら突っぱねれば良いだけですし……

ロストエデンが向こうにつくのは困りますけど、、、司令官がそんな方ではないことは承知しておりますので」



俺は腕組をして『帝国の至宝』が出てくるかもしれないことを話した。

そして、魔王から『癒神』のヤバさを聞いたことも。



獣王、ルーミル、フェルトさんが同時に

「それは確定なのか(ですか)!!?」と前のめりになった。



マーリーンだけは????で全く理解していないようだ。まあ元から期待していない。



「いや、まだ確定ではない。

今、カーミラとその部隊を総動員して探らせているところだ。

ただ、フラグが立ったということは可能性が非常に高いことを意味している」



「ふらぐ???」

三人が一斉に悩んだので、こっちの話なので気にしなくていいことを告げる。



実は会談部屋へ向かう際にカーミラへ今回の会談についてノーザイアを全力で探るように指示を出していた。



獣王が口を開く。

「『癒神』はもちろんだが、『闘神』もやべぇぞ。接近戦ならパーティ内でも随一だ。

『気』をコントロールすることで鉄の鎧だろうがなんだろうが紙屑同然になるんだと」



フェルトさんが続く。

「『剣神』のスピードはおそろしく速く、その速さはもはや目にも留まらぬどころか目にも映らないのだとか…

更に斬撃を飛ばすことすら可能だとか」



次々と出てくるヤバさMAXの情報…

俺は大きなため息をついた。


(コイツらのせいで俺の精神ポイントががんがん削られていくんだが…?)




その時、思いがけない発言者たちによって事態は急変することとなった。


「………………………………」



 (エェェェェ:(;゙゚'ω゚'):いやいやいやいやいや……)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜1週間後ムガ坑道内部〜



「あ〜ッ!いつ来んのッ!!おっそーい!!もう帰っていい?いいよね!?」


右隣でうるさく騒いでいるのは『魔神』である【アリアナ】

半マーメイドだが、今は人型だ。

見た目はザ・美女なのだが、とにかく我儘でこの通りうるさい性格をしている。



「アリアナ!うるさいぞ!!敵に気づかれたらどうする!!」


それを窘めるのは俺の左隣にいる『闘神』である【レモンド】

闘神らしく日に焼けた肌と筋骨が逞しいスキンヘッドの男だ。

よく言えば男らしいが、悪く言えばむさ苦しい。



だが、窘めるレモンドの声の方がよほどうるさい。

俺は微かに眉をひそめただけでわざわざ口に出して注意はしない。

なぜならレモンドの隣には『癒神』である【ルナ】がいるからだ。

栗色の髪ゆるいウェーブ、おっとりした目、まるでエルフのような透き通る白い肌。非の打ち所がない聖女の容貌をしている。

しかし、サイコパスな中身を知っている俺は欲情など決してあり得ない。




彼女は見た目通りおっとりした声で



「お二人方とも落ち着きになって?『剣神』であるルーカス様をご覧になって下さい。

それに…聞こえませんか?」



アリアナとレモンドが口を閉じると微かだがザザッ…ザザッ…という足音が聞こえた。

数は4つ。



「ようやく来たか…」



そうして数分の後、俺たちはお互いが横一列に並んだ形で対峙した。



俺の前にはヒト種である黒髪の青年。歳の頃は17、8というところか。



アリアナの前にはヒト種の少女。恐らく歳の頃は先ほどの青年と同じだろう。



レモンドの前にはこれまたヒト種。美少女の見た目だが、服装から判断して男だろう。

情報と照らし合わせて考えると彼が『神宮ひばり』か。



そして、ルナの前には胸がバカでかく尻から尻尾が生えている女。あれは魔族か?

可哀想に…ルナとでは相手にならないだろう。



となると、俺の前にいるのが要塞のトップである『三鍵唯人』か。

それほど強そうには見えんが…



相手は一言も発することなくただ俺たちの前に立っていた。


俺は作戦通り行動するためにアリアナへと指示を出す。


「やれ!アリアナ!!」



「あいあいさー!」

緊張感のかけらもない声でアリアナが魔法を発動させる。



すると、坑道全体が揺れた。その揺れはすさまじく立っていることすら難しい。

岩壁に3つの穴が開く。

そして、俺と俺の獲物である要塞のトップを残してそれぞれがお互いの獲物と共に3つの穴の中に消えたと同時に穴が塞がった。

そして、揺れもおさまる。




「さてと、自己紹介しておこう。

俺は『剣神』ルーカス。

君が要塞のトップ『三鍵唯人』だな?

言っておくが俺に精神支配スキルは通じない。そういうスキルを常時発動させている。

名は覚えてもらわなくて構わない。

どうせ君はすぐに死ぬことになる。」



スキルを発動させる。

超速からの一太刀で相手の首を目にも映らない速さで刎ねる『神剣』



そして、相手の首と胴は切り離される………はずだった。


ガギィィィィィィッン!!

剣と剣がぶつかる鈍い音が辺りに響く



バカなッ!『神剣』が防がれただと…?


黒髪の青年はやれやれの仕草でようやく口を開いた。


「こちらはまだ名乗ってすらいないのだがな?

あんなロリコンと一緒にしてもらっては困る」

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