第58話

「あーあ、釣れねぇなぁ。こりゃだんなにハメられたな。明らかに不自然だったからなぁ」



今、俺(シルバー・マーシュ)はアーガイア国南東の海岸で釣りをしている。

近くには『ギルファー』という都市があり、ここより南はノーザイア帝国領となっている。

その『ギルファー』は最近、アトランティスとの交易で栄えており街の中には魔族とマーメイドが溢れていた。


すると、急に竿が大きくしなった。


「キタキタァッ!絶対逃さねえ!」

俺は竿を手に勢いよくリールを巻いていく。

こりゃ、すごい大物だぜ。サメか?クジラか?カジキか?



ところで、なぜこんなところで釣りをしているかって?

それは3日前に遡る。


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「シルバー君じゃないか!!奇遇だね。調子はどうだい?」


俺が自室でスナイパー・ライフルを磨いているとだんなが入ってきて声をかけられた。

(いや奇遇も何もここは俺の部屋…)と思ったがスルーした。


「だんな、こっちは暇すぎて死にそうですぜ。なんかありませんかね?」


だんなはわざとらしくポンと手を叩いた。


「そうかそうか、じゃあちょうどいいじゃないか」


全く理解できない俺


「何がちょうどなんです?」


だんなは俺の肩に手を置き


「シルバー君、ちょっと魚釣ってきてくれないか?」


突拍子もない頼みに驚いたが「えっ…?魚ですかい?まあ、暇ですし構いませんが…」


「おっ!さすがシルバー君!

じゃあ場所はココだね」


もう既に地図まで用意していただんなはその地図を広げて指差す。


「えっ…?ここですかい?だいぶ遠…」


てっきり近くの海だと思っていた俺は慌てて近くの海に変更してもらおうとした。

しかし、だんなは俺の肩をポンポンと叩き


「いやぁ、さすがシルバー君だ。頼りになるじゃないか。ココはすごくいい魚が釣れるらしいんだよ。

まあ少し遠いけど、バトルバイクを飛ばせば2、3日で着けるさ。

それに先日、君の友人のアレクセイは巨大な魚(マーリーン)を釣ってきたからな。シルバー君も負けてられないだろう。

そうだ!善は急げというじゃないか!今から出発しよう!そうしようじゃないか!な!な!な!」


明らかに不自然だ。

だが、めっちゃ笑顔で押してくるだんなの頼みを断りきれなかった俺は準備にとりかかった。



出発直前、だんなから「通信機は持ったか?立体映像も持っていくといい」と無理矢理持たされた。

釣りに行くだけなのになぜ必要なのかさっぱりわからなかった俺だが言われるまま持って出発した。


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「あー!すごい上手いこといったぞ!どこも不自然なところは無かった。もしかして俺って役者の才能があるんじゃないか?」


俺は自室で大きめの独り言を呟いていた。


シルバーを『ギルファー』の近くに派遣した俺。シルバーは俺の完璧なる演技に騙されていたようだが、釣りは本当の目的ではない。

これには事情があるのだ。


シルバーを送り出す更に1日前


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その日司令官室には、俺、魔王、麻奈、ひばり、奈美の5人が集まっていた。

さすがに5人もいると狭く感じる。


俺がふと気になったことを魔王に聞いたのがことの発端だった。


「そういえば、アーガイアの友好国はどこなんだ?」


ギクッとする魔王


「あー…えーと…」妙に言い澱む魔王


「最近サーニャと友好を結んだらしいじゃないか。他の友好国も把握しておいた方がいざというときの役に立つだろ?」


「……ニャと…………スだ」

めっちゃ小さな声で魔王が答える。


「なんだって?」


魔王が今度は叫んだ。

「サーニャとアトランティスだ!」


「ということは、サーニャは最近ってことだったのでアトランティスだけだったのですか?」とひばり


「アトランティスも最近だ……」と魔王


俺は驚いて

「ってことはお前んとこ元々友好国ゼロ!?あぁ、やっぱりな。ロリコン&おっぱい魔人が王のとことか誰も友好関係なんて結ばないわなぁ」



「あんたんだきゃーいわれとーない!!ロリコン&おっぱい伯爵め!!」


「あんだと!?無駄に高い爵位与えやがって」


奈美が自分の胸に手を当ててしょんぼりしている横で麻奈が勝ち誇った顔をしていた。



「それでだな、最近『ギルファー』の街でアトランティスとの交易が盛んでな。

そこの警備隊長に『ガース』を任命した」


それで、最近ガースを見なくなったのか。前はちょくちょくリンの様子を見に来ていたんだが。

ん???ガース???



「オイ、ちょっと待て!ガースを任命したのか?なんか嫌な予感しかしないんだが…なんかアイツは毛利小五◯的な…」


「も、もうりなんだって?」

最後の名前はもちろん魔王が知るはずがない。


「いや、いい。嫌な予感しかしないってことだ」


魔王は「ふむ」と頷き「!!」と笑った。


(なにわろてんねん!!笑いごとかー!!)



麻奈が横から口を出した。

「ご主人様、そのガースって人がいると何か厄介なんですか?」


俺は真剣な顔で「ああ、事件の匂いしかしないぞ」




※御礼※

星が1500を突破しました!

ところで、ひばり君人気が高すぎてちょっと思ったんですが『星がたくさん集まらないとひばり君が変態化します』って言ったら星たくさん集まるんじゃないかと…

ハハハ!も、もちろん冗談ですとも。

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