第56話

まだ呆然としている鳥井の前に飛び降りる。

そして、首に暗器を突きつけたままの鳥井の頭を撫でて声をかけた。


「ご苦労だったな、とりあえずその暗器を下ろせ」



そして、叫び、手を押さえて膝をついているオタ岡の穴のあいた右手を足で思いっきり踏みつけた。


「い、いいいたぁぁぁぁ…や、やめっ…」


「オイ、まだ返事聞いてないぞ。

俺は仲間に手を出されて黙ってるほど温厚じゃないんだ」


その隙にオタ岡を見捨てて一目散に逃げ出すタラ吉




しかし、次の瞬間壁に張り付いていた小さな蜘蛛がタラ吉へと飛びつく。と、同時に蜘蛛から煙が上がりヒトへと姿を変えた。


地面に押し倒されたタラ吉は訳もわからず必死でもがいているが、背中に乗ったヒトをはねのけることができない。


「ふぅ〜上手くいったよ。ぶっつけ本番だったから。

さてと、鈴木君大人しくしてくれるかな?」


そう言いながらタラ吉の後頭部に銃口を突きつけたひばり

そうしてようやくタラ吉も観念した。



俺はもう一方の通路に向かって


「麻奈、コイツらに注射器を」


すると、通路の先から膨れっ面の麻奈が現れた。


「……もうっ!なんでこんな雌犬の為に」

ぶつぶつ言いながらオタ岡とタラ吉の首に乱暴に注射器を刺してスキルを奪い取った。




「でも、唯人。この2人をどうするの?

このままってわけにはいかないしロストエデンに連行するにしても鈴木君はともかく谷岡君は手に負えないよ」


ひばりが最もな質問を口にする。


「ああ、その辺は問題ない」


俺は襟につけた小型マイクで指令を下した。

すぐに隠密部隊が現れオタ岡とタラ吉を拘束し運んで行く。

俺は作戦が失敗したときの保険としてすぐに動けるように隠密部隊を50ほど展開させていたのだ。




全てが終わり、撤収しようとしたとき


「も…もうじわげございません……わだじなどのために……」


鳥井が地面に突っ伏して泣き出した。


麻奈は不機嫌なまま鳥井に向かって吐き捨てるように言い放った。


「全くです!なぜこんな雌犬の……」


「麻奈ぁ!!!!!!!!!」


俺の辺りに一体に響くバカでかい声に驚き硬直する麻奈。それはひばりにしても同様だった。


俺は鳥井の方を向いたまま麻奈に宣告した。


「それ以上言うようならお前をここに置いていく。二度と戻ってくるな」



「じ、じつれいじましたぁぁぁ!どうかおゆるじぐださい!!」

涙と鼻水をヤバいほど垂れ流しながら麻奈は地面に額を擦り付けて謝罪し始めた。



「なんだ?なんの騒ぎだ?」

さきほどのバカでかい声で人が集まりつつあった。


俺はふぅと一息ついてから麻奈と鳥井に「さて、帰るぞ」と手を差し伸べた。



「「はいっ!!!」」


ひばりはやれやれという顔をしてから「たくさん野次馬来てるよ!急いで!!」とまだ人があまりいない方の通路を指さした。



俺たちは全速力でその場を離脱し、バトルバイクに乗ってロストエデンへと帰還した。




さて、全員で帰って来たのはいいがただいま絶賛修羅場っている。


(最近多くないか?このパターン……)



「私は唯人様のお世話をする為にこちらの部屋を希望します!!」と奈美


「はぁ!?犬っころが偉くなったもんだわねぇ!!お世話は私の役目よ!あんたなんかこの辺のすみーっこの方で充分よ、全く図々しいッ!」と麻奈



(おっ!雌犬から犬っころに呼び方が進化したぞ…ってほとんど変わらないが…)



「まあまあ2人とも…じゃあ僕より少し遠いココってことでどうかな?」とひばり



俺はその様子をお茶を飲みながら見ていた。


(もうどうでも良いじゃん部屋の位置とか…このやりとり毎回すんの?はぁ……)



「いいえ、唯人様はお風呂上がりの私のブローやブラッシングをしてくださいました。今度は私がお世話をしてさしあげる番です」


(あっ…麻奈がキレ……)


「へ、へぇー…でも、それは犬、そうペットとしてお世話してくださったのでしょう。

ご主人様はお家でも犬を飼ってらっしゃったみたいだし放っておけなかったということだと思います」



(おっ!!偉いぞ麻奈!1つ大人になったぞ。まぁ、動揺は隠しきれていないが…)


うむうむと頷き、お茶を飲む俺


だが、ここで奈美から爆弾が投下された。


「それに……唯人様が叩いてくださったお尻の痛みが忘れられなくて…」と赤くなる奈美



「ブフゥー!!ゲホゴホ…」

盛大にお茶を噴いてむせた。


「どどどどどどどどどど、どーいうことでしょうか!!!?(なの!!!!?)」


麻奈だけでなくひばりまで俺に掴みかかりガクガク揺する。



「あ、いやあのな…落ち着くんだ君たち。これには深い事情があってだな…」


「どんな事情ですかー!!!!今すぐ私(僕)のお尻もぶって下さい(よ)!!さぁはやく!!」



(なんのカオスだコレ……)

結局、麻奈とひばりのお尻も叩くことになってしまった。

コトが終わると2人とも恍惚の表情を浮かべていた…


(まともなヤツいねーのかここ…)




※御礼※

祝フォロワー3000達成!!

皆様本当にありがとうございます!

次回はまだ鳥井編ですが、次はここまで空気だったシルバー・マーシュが活躍するです!!

シルバー今までゴメンね…

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