第55話

鳥井犬が出発した朝、麻奈が今にも死にそうな顔で俺に報告をしてくる。


「ご主人様…大変申し訳ございません…

あの雌犬が逃げました。私の監督不行届でした…」


(あっ!こいつに言うの忘れてた…やっべー)


「今すぐに捕らえてきます!

そして、私と雌犬の命をもって……」


「あ、あのな麻奈。一旦落ち着くんだ。とりあえず深呼吸をしてくれ」


律儀にすーはーすーはーと深呼吸する麻奈


「じ、実はな……かくかくしかじか…」


俺はを麻奈に話した。




「話はわかりました。

あの雌犬もご主人様のお役に立てるのであれば私も嬉しいです」


ホッと胸を撫でおろす俺。これで一安心だ。



だが、話は終わっていなかった。

麻奈はにこっと笑顔になって続ける。


!!一つ確認させてもらってもよろしいですか?」


(ま、麻奈さんの笑顔が怖い…サーニャのときと似てる気がする…)


「は、はい。どうぞ」

前の体験から自然と敬語になる俺


「あの中古とヤりましたか?ヤりましたね!?いつ!どこで!何回!ナカですか!?」


「ヤってるわけないだろ!!」


麻奈はホッとした顔をして


「この反応は本当ですね、安心しました」



(これは、風呂やブロー、お尻の件は言わない方が良さそうだな…要点だけを伝えた俺、偉いぞ!褒めてつかわす!)



「それでだな…」


「えぇっー…」非常に嫌そうな麻奈だが渋々「わかりました」と部屋を出て行った。


さてと、、、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ノーザイア城から約1km離れた街の中

細い路地に身を隠した私は『索敵ヴィジョン』を発動させた。

そして、元仲間のいる部屋を素早く探し出した。

更に反応のうちのひとつを『ヴィジョン』に映し出す。その途端、部屋の中が目の前にあるかのように映った。



(必ず貴方のお役に立ってみせます!)




この5日間、私は貴方が来る深夜だけが楽しみだった。貴方は毎日来てくれて髪まで乾かしてくれた。そして、何より私に話しかけてくれた。

それがどれだけ嬉しかったか、言葉には尽くせない…

貴方は私に優しさをくれた。ぬくもりをくれた。

だから…必ず!!



これは…私が選んだ反応は『土谷 楓』のものだったようだ。

彼女は酷く何かに怯えておりうずくまって頭を抱えていた。

しかし、彼女に焦点が合いすぎていて彼女が何に怯えているのかわからない。



『索敵ヴィジョン』の欠点は3つある。

1つ目はヴィジョンによる拡大・縮小ができない点

そして、2つ目はヴィジョンは視覚のみで音声は拾えない点だ。




(あー!もうっ!!周りの様子がわからない!)


私がイライラしたそのとき、彼女の腕が誰かの手により乱暴に引きあげられた。


(これは……ウザ井!?アイツ、生徒に何して……)



ウザ井は彼女の顔を力任せにあげさせ、もう片方の手で思いっきりビンタをした。

大人の男の力でビンタされた彼女の頬は赤く腫れあがり痛々しい。

そして、ウザ井はそのまま手を離した。



(何がどうなって…アイツ狂った?)



ヴィジョンに集中しすぎたせいで私は致命的な過ちを犯した。

気づいたときには2人に取り囲まれていた。



『索敵ヴィジョン』の3つ目の欠点は1つ目と2つ目をかけあわせた結果によって生じる『周囲の警戒を怠ること』だ。




「あれれ〜?

これは鳥井殿ではござらんか。いなくなったはずの貴殿がここで何をしておいでで?」


オタ岡がわざとらしい声をかけながら近寄ってくる。

『谷岡 雅也』通称:オタ岡

気持ち悪い話し方のアニメオタクだ。クラスの女をいやらしい目で見ており盗撮疑惑もあるほどだ。



「副委員長の『索敵ヴィジョン』を使っていた様子。これは敵に相違ありません!」



タラ吉がもう一方から迫ってくる。

『鈴木 章吉』通称:タラ吉

オタ岡とつるんでいるこちらもアニメオタクでたらこ唇が気持ち悪いヤツ。

こちらも盗撮疑惑がある。



「アンタらが何でここに…」


タラ吉が嫌な笑みを浮かべながら答えた。


「向井教官の指示通り見回っていたところ敵を発見したであります!

さて、谷岡三曹どうするでありますか?」


問われたオタ岡は下卑た笑みを浮かべ


「鳥井殿が敵であることは明白!敵ならてしまって問題はナッシング!!我々の童貞卒業といきましょうぞ!」


タラ吉が歓喜に震えた。

「おぉっ!!!

ですが、敵は『亜空間ロック』を所持している模様です!」


オタ岡はまたもや下品な笑いを浮かべて


「『亜空間ロック』は単体のみ。どちらかが閉じ込められてもどちらかがボコボコに犯し、最悪殺してでも解除させれば問題ナッシング!!

鳥井殿はどちらの童貞を卒業させるのが希望ですかな?ゲヒヒヒ」



(ここまでか…貴方のお役に立てず申し訳ございません。貴方に捧げたかった…)



2人が下卑た笑いで私の胸に手を伸ばし、私は目を閉じて隠していた暗器を自分の首に当てた瞬間



パンパンパン…ッ!と6発の銃声が響き渡った。



「「手、手がぁぁぁぁぁ!手に穴がぁぁぁぁぁ!」」



目を開くとオタ岡とタラ吉が手を押さえてうずくまっていた。



「誰に断って俺のに手を出そうとしてんだ?お前ら」





※御礼※

総PVが50万を突破しました!

たくさんの方に読んでいただき感謝の言葉しかありません。

皆様のコメントに個別に返答したいのですが、しか出そうにないので💦

ですが、必ず拝見させていただいております。

コメント下さっている方本当にありがとうございます!!

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