第54話

ロストエデン法を制定したあの日から一週間が経っていた。


色々あったが(ほとんど麻奈に関してだ)俺たちは変わらない日常を過ごしていた。




深夜ーある一室ー



最近深夜にここへ来ることが日課となっている俺。

5日前に深夜に目覚めてしまい『そういえばどうなってるんだろう?』と気になって覗いてみると食事はとっていたようだが他は世話されておらず見た目と匂いがヤバいことになっていた。



そう、鳥井犬だ。



まずは、風呂へ入るように指示してやると四つん這いで風呂へ入っていこうとしたので、『風呂へ入るときぐらい別に良いよ、麻奈には内緒にしとくから』と言ってやった。

すると、嬉し涙と鼻水の両方をあらんかぎり流しながら立って入っていった。


風呂からあがった鳥井犬は律儀にまた犬に戻っていたので俺がブローとブラッシングをしてやった。


(一応女の子だもんな、風呂無しはキツいよなぁ)


そう考えた俺はその日から深夜にこっそり鳥井犬を風呂へ入るように指示し、ブローとブラッシングしてやっているというわけだ。



今日も独り言を呟きながらブローしてやっている。


「うーん…あっちから何もアクションがない。アテが外れたかな?」



俺の予想だとクラスのヤツらが何かしらアクションを起こしてくるだろうと考えていたのだ。


「2、3人ぐらいは他のヤツらを裏切って土下座でもなんでもして許しを乞いに来ると思ったんだがなぁ…」


だが、俺の予想とは裏腹に何も起きていなかった。


「カーミラに探らせるか…?

いや、カーミラは残しておきたい。うーん…」


「くぅぅぅぅぅぅん」となきながら俺に頭をこすりつけてくる鳥井犬に「こら!動くな!ブローしづらい」と注意する。





俺は突如頭に電球が現れピコン!と閃いた。

俺は鳥井犬に訊ねる。


「ヒトに戻りたいか?」


「きゅぅぅぅぅぅん??」首を傾げる鳥井犬


「俺の役に立てばペットから仲間にしてやる」


鳥井犬は驚愕に目を見開き、涙を浮かべた。


「本当に?私、仲間としてここに居れるの?」


大きく頷く


「ここの司令官は俺だ。麻奈には俺から説明しよう。どうだ?やるか?」


首が取れるんじゃないかという勢いで縦に首を振る鳥井犬


「そうか。じゃあ………」と俺が言いかけると鳥井犬は急に四つん這いのまま俺に尻を突き出した。



「お、お尻は処女だから…」

そう言って顔を赤らめる鳥井犬


頭を押さえた俺はその尻を思い切り一発叩いた。『バチーン!』と良い音が室内に響く。


「ひゃんっ!優しく…して…」


「こっちを向け。お前にやってもらいたいことはそういうことじゃない」



どうしてうちのクラスの女というのはこう極端なのだろうか。

?????な鳥井犬は俺の方を向く。



「お前にやってもらいたいことは、クラスのヤツらの調査だ。

ヤツらが何を企んでいるか調べて俺に報告してくれ。そうすれば、ヤツらに相応しい準備ができるからな」


「だが、忘れてないよな?俺を敵に回せばどうなるか…裏切りは敵よりも恐ろしい結末が待っている」


俺はそう付け加えた。


しかし、鳥井犬は顔を赤らめて予想外の言葉を発した。


「愛する人を裏切るわけない…必ずやり遂げる。貴方の為に…」



あれれれ????愛する人????なんか話がおかしな方向に向かってる気が……

俺なんか好かれるようなことしたっけ?



(あっ!足の指がすげー良い匂いだったとか?いや、ないな…ないない)



「そ、そうか。キミには期待している。

だが、その格好とスキル無しではキツいだろう。ついてこい」



鳥井犬を連れてある部屋を訪れた。

寝ているだろうが、一応ノックをする。やはり反応はない。

仕方なしにそのまま部屋へ入る。



その部屋の壁にはありとあらゆる暗器がかけられており一見するとまるで拷問部屋のようだ。

俺は早速入ったことを後悔した。


その部屋の中央にカーミラは座りながら寝ていた。



(怖い怖い怖い怖い…なんでカーミラ暗器持ったまま寝てんの?

しかも寝てるときも仮面つけてんの?外すだろ普通)



次の瞬間カーミラの姿が消え、俺の首に暗器が突きつけられていた。


「お、おはよう…カーミラ」


俺は冷や汗を流しながら挨拶をする。

俺だとわかったカーミラは突きつけた暗器を下ろした。


「司令官……夜這い……来た?」


俺は慌てて


「ち、違うぞ!!

コイツに君の部隊の隠密用の装備を貸してやってくれないか」


カーミラは鳥井犬を一瞥して


「どれでも…剥ぎ取る…」


その答えを聞けた俺は「ありがとう」と言いながら光の速度で部屋を出た。


(し、死ぬかと思ったぁぁぁぁ)


無事にカーミラの許可を取った俺はカーミラの部隊の一人の装備を鳥井犬に与え自室へと戻った。




着替えを終えて出てきた鳥井犬


「よく似合っているじゃないか。

さて、最後にコレを飲むんだ」


俺はどす黒い小瓶を机の上に置いた。

全く何の躊躇もなく手を伸ばして飲む。



(え、、、あ、あれ??嫌がるだろう鳥井犬に飲む必要性をこれから説明するところだったんだが………)



「う、うむ…いい飲みっぷりだ。

もう理解したと思うが、それは嶋崎日向の『索敵ヴィジョン』だ。

そのスキルを使って調査&報告をしてくれ

良いな?」



「はい!!」

そう返事をした鳥井犬は跪いて俺の足の甲にくちづけをした。



(何がどうなってるんだ???)


混乱しながら鳥井犬を送り出した俺であった。





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