第46話

街灯もない森の中を僕はたった一人で歩いている。あのメッセージに応えるために




僕はずっと自分の容姿がコンプレックスだった。

この容姿のせいで、みんな普通の友達と接するようには接してくれない。


中学1年生のときだ。一時期男子の間でプロレスが流行った。休み時間になると、男子はみんな技をかけあって遊んでいた。

僕も入りたくて輪の中に入ると、みんな微妙な顔になった。一応は一緒に遊んでくれるけど本気で技をかけていないのが丸わかり。

「本気でやってよ」と言うと「でもさぁ…やっぱ無理だわ」と断られた。

小学生の頃からずっとこうだった。




そんな中で彼だけが普通の友達として接してくれた。


僕が元気がないときには背中をバシッと叩いて「どうしたんだよ?」と声をかけ、

僕が楽しそうにしていると肩を組んで「何がそんなに楽しいんだ?俺にも分けろ!」とニッと笑いながら言ってくれた。

頭をグリグリされたことも一度や二度じゃないし、プロレス技だって骨が折れるかも!?と思うぐらい本気でかけてくれた。

本当に嬉しかった。

僕たちはすぐに親友になった。




だけど、中学2年生のある日急に彼が嫌がらせをされるようになった。

嫌がらせをしているのは一部の女子たち。

その理由は【私たちのひばりくんを奪った!】というわけのわからないものだった。


当然、僕は彼女たちに本気で怒った。けれど、彼女たちは何回何十回何百回言っても聞く耳をもたなかった。

「ひばりくんはアイツに騙されてる!私たちが助けないと!」と見当違いの使命感に燃えていた。


そして、僕は彼と接するのをやめた。

いや、正確にはプライベート以外で接するのをやめた。その関係は高校生になった今でも続いている…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



突然暗闇の奥から声が響いた。


「よぉ!ひばり!生きてたか?遅えから道に迷ったのかと思って迎えに来てやったぞ」


僕はその声に安心し返事を返す。


「生きてると知ってたから【あの暗号】を送って来たんだろ?僕たち2人だけの暗号を」


森の奥、暗闇の中から姿を現す僕の親友、唯人。

僕たちはハイタッチで再会を果たした。




「お〜、これが唯人の要塞?すげー!!僕も入っていいの?」


唯人は何言ってんだ?という顔をして


「当たり前だろ?ひばりが入れなかったら俺以外は誰も入れないことになるぞ」と笑って言った。


唯人と並んで歩いていると、

「それにしてもあの暗号よく覚えてたな。遊びで作って、ちょっと使ったけど高校に入ってからは全く使ってないだろ」と唯人。


「まぁね。でもあれは思い出の暗号だからね。忘れることはないんじゃないかな」

それに簡単だしね。と付け加える。


そう、あの暗号はただ50音を数字に変換しただけ…では余りに簡単すぎるので、その数字を反対にしたものだ。


つまり【あ=01→10 か=06→60 じ=12.→21.】となる。

これに当てはめると、、、


【04 30 11 20 91. 13 81 83 20 02】


【よ う さ い で ま つ ゆ い と】



唯人の案内で唯人の部屋、司令官室の前にやってきた僕は慌てた。


「ゆ、ゆ、唯人…これって……」


「何を慌ててんだ?なんか変なもんでも…」


僕が指さした先には


【ご主人様と肉オナ◯の愛の営み部屋】


と書かれてあった。


「な、な、な、な!!ちがっ……これは誤解だって!!ちょっと待っててくれ!!」


そう言いながら唯人は慌てて自室に入っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る