第18話
〜ノーザイア城〜
衛兵の一人が息を切らせ部屋に飛び込んできた。
「大変ですッ!!」
たった今、軍事会議中であった王たちは苛立った声で闖入者を睨みつける。
それでなくても、さきの戦いでわけのわからない要塞のせいで3000もの兵を失ったのだ。全員が苛立つのも無理はない。
「騒々しい!何事だ。」
衛兵は息を切らせたままだ。よほど急いでいたのだろう。
「ハッ!ウェル城と…ウェル領が!!………アーガイア国に占領されましたッ!」
その場の者たちは驚嘆する。室内ががやがやと一気に騒々しくなった。
「なんだとっ!!バカな…アーガイア国が攻めてきたのかっ!?」
「アーガイア国の領土奪還の為とありますが、実際は要塞の部隊が指揮を執った模様です!」
王は苛立ちで叫んだ。
「クソッ!!また要塞か!どこまでも邪魔をしてくれるっ!!
えぇい、こうなったらノーザイアの最高戦力で…」
そこに一人の小さな老人が口を挟んだ。
宰相ボレスである。
「お待ち下さい、王よ。
今は『サーニャ』に専念されるが得策かと。戦力を分散しすぎると痛い目を見ますからな。それに、『サーニャ』がおちればエルフどもの秘法も手に入れることができましょう。」
王はカッとなりやすい性格だが、ボレスの提言だけは耳を傾けてきた。それで何度救われたことかわからない。
「そう…だな。ボレスの言う通りだ。だが、『サーニャ』は最後の抵抗が厳しいようだ。エルフどもめ!さっさと諦めればよいものをっ!」
ボレスはヒヒッと笑い、王へと提案する。
「『彼ら』を使ってみるのはどうでしょう?」
「あぁ、ヤツらか。しかし、こちらに来たばかりで使えるのか?」
「えぇ、今回使えそうなヤツを6人ほど選んでおきました。彼らなら『サーニャ』の息の根を止められるかと…」
王はニヤリと笑い、その後全員に向かって宣言した。
「ボレスの選定した異世界者を同行させサーニャの息の根を止めよっ!!エルフどもを根絶やしにしろ!」
「「「「「ハッ!!」」」」」
軍事会議の後、ボレスはノーザイア城の一室に選定した6人を招集した。
『佐藤裕一』・『堂島涼太』・『森保大地』・『木嶋愛』・『橘遥』・『三木島麻奈』の6人だ。
彼らがテーブルに着いたのを確認すると、ボレスは話始めた。
「さて、あなた方は『サーニャ』をご存知ですか?」
堂島がすぐさま答えた。
「あぁ、確かノーザイアの西にある森に住むエルフの国だったよな?」
ボレスはその通りでございますと頷いた。
「そのサーニャをあと一歩のところまでこぎつけたのですが、最後の抵抗が厳しく落とすことが出来ておりません。」
「あと一歩ならもっと兵を送りこめばいいんじゃないの〜?そしたら落ちるっしょ。」
木嶋が軽く言う。彼女はいつもこんな調子だ。
「そうできれば一番楽なのですが、、、ノーザイアは【ヒト絶対主義】を掲げておりましてな。他の種族の国と敵対関係にあり、そちらにも注意を払わなくてはならないのですじゃ。
特に最近、魔族の国アーガイア国が勢いづいておりまして。兵力をそちらに割きすぎると足元を掬われる可能性もありますでな…」
佐藤が納得した様子で
「なるほど、サーニャを落としたとしてもノーザイアが落とされてしまえば元も子もないということか。」
ボレスは頷き
「その通りでございます。やはり異世界の方々はスキルだけではなく知能も並外れておられますな。」
「そこで、次のサーニャ攻略を手伝っていただきたいのですじゃ。
無論!タダとは申しません。成功した暁には望む報酬が王より与えられることを保証致しましょう。」
堂島が「おい、どうする?」と他の5人と相談し始める。
ボレスは更に続ける。
「あなた方は私が選定した英雄でございます。スキルも強力ゆえ必ず勝てるでしょう。」
「オイ!報酬は本当に何でもなんだろうな?なら、エルフの女を2、3匹だな。」
と、森保。
「匹って…アンタねぇ。しかも報酬が女ってサイテーじゃん。」
と橘が森保を非難の目で見る。
「えぇ、そんなので宜しければ豪華な邸までついてきますじゃ。」
とボレスが付け足す。
森保が一番に
「俺は乗ったぜ。俺のスキルでエルフどもを殺りたいしな。お前らはどうすんだ?」
木嶋は考える素振りをし(多分考えてない)
「私もいっかなー。私のスキルは前に出るタイプじゃないしぃー。遥もやるっしょ?」
話を振られた橘は
「そうだね、やってもいいかな。報酬も欲しいしね。佐藤と堂島はどうすんの?」
佐藤と堂島は
「みんながやるなら俺らもやるよ。ノーザイアには世話になってるしな。」
ここまで全く発言のない三木島。彼女は大人しいタイプで木嶋や橘とはタイプが違う。その為、クラス女子カーストの位置はかなり低い。
「私は…」と言いかけると、木嶋と橘が睨みつけながら「あんたには聞いてないから!あんたに選択肢とかないし。」
「どうやら決まったようですな。では、出発の時間まで装備など好きなものを選んで下さいませ。それと、食事なども最高級のものをご用意させていただきますじゃ。」
三木島以外の5人は決意を固め、深く頷いた。
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