第17話

ニックの周りから青い光が湧き上がる。

目を開く。その目は先ほどの黒から碧に変わっていた。



「さぁて、ぶちかますぜッ!!『乱爆』!!」


ニックが高らかに発動させると、ウェル城の上空に無数の黒い穴が開く。


「なんだ…あれはッ……!?」

魔王が身を乗り出して叫ぶ。



そこから無数のロケット弾が発射され、ウェル城目がけて飛んでゆく。その数は300をゆうに超える。

300ものロケット弾がほとんど同時にウェル城へ着弾し、轟音を轟かせる。



敵部隊は慌てふためきながら城壁の中へ引き返してゆく。おそらく領主とやらを守る為に。



俺はニヤリと笑い

(無駄なことだ…)と内心思う。


なぜなら、『乱爆』は一度では終わらないからだ。


黒い穴からまた無数のロケット弾が発射される。そして、轟音を轟かせウェル城へ命中。

これが計10回繰り返された。



先程はこの位置からでもウェル城を確認出来たが、今は爆煙の為見えない。しかし、確実に崩壊しているだろう。

敵兵もほぼ全滅しているはずだ。



俺とナターシャにとっては乱爆が発動された時点で当然の結末なのだが、他の者にとっては予想外だったようだ。



隣を見ると魔王とフェルトの2人が放心していた。なんか笑える。

ムーアはというと、膝から崩れ落ち地面に突っ伏して絶望していた。



魔王がこちらを向き、これでもか!というスピードで俺に詰め寄ってきた。


「こ、こ、こ、こ…」


「どうした?魔王から鶏に進化したのか?」


魔王はからかわれたことに言い返す余裕もなく喚く。正直ちょっとうるさい。


「これが乱爆!?こんなのが副官一人一人に備わっているだとッ!?」


俺はあっさり肯定した。


「あぁ、そうだ。ちなみにアマンダのはもっと凄いよ?」


ナターシャが同調して続く。


「彼女のは、、、ちょっと使いどころが…『乱爆』なら城のみ…というわけにはいきませんが街への被害をある程度抑えられます。しかし、彼女のは全てを破壊してしまいますからね…そのかわり威力は申し分ないのですが……」


魔王が俺の胸ぐらを掴んで喚き立てる。

(こいつさっきからうるせーなぁ。)


「これより威力があるだと!?あぁ…神よ、我々を助け給え…」


「お前魔王だろ。神は助けてくれないんじゃないか?」


フェルトはナターシャに泣きついていた。

「お姉様ぁ!アレをアーガイア国に向けませんよね……?あんなの……アーガイア国は一瞬で消滅してしまいます…うぅぅぅおねがいじまずぅぅぅ…」


(ほんとにこいつらがアーガイア国のトップで大丈夫なのか…?)



(とりあえずコイツら無視して進めよう。)



瓦礫の山となったウェル城を占拠すべくニックとアマンダに指示を出した。

当然街にも被害が出てるだろうが、なるべく民は殺さないようにとも指示を出しておいた。




その後、ロストエデンの部隊と魔王軍が抵抗されることなく街と城跡を占拠。

結局、領土奪還戦は一方的な破壊と虐殺で幕を閉じたのだった。



(実験は成功。これなら戦略の幅が広がるな。あとは…もうめんどいな…)


くるりと魔王の方を向き笑顔で言い放つ。


「あとの事後処理はアーガイア国に任せたぞ!よろしくネ♪」


魔王とフェルトがまたあんぐり口を開けている。フェルトさん、綺麗な顔してるのにちょっとマヌケだ…


魔王が唾を飛ばしながら喚く。

こいつさっきからうぜー。


「なぜに!?どうしてそうなった?」


俺はしれっと笑顔で言い放つ。


「だって、君たちの領土じゃん。事後処理は当たり前じゃないかぁ〜何を言ってるんだい魔王君。ハハハハ。」


ナターシャの方を向き、これまた笑顔で


「さて、我々はそろそろ帰ろうじゃないか〜もうちょっと眠くなってきたし。」


フェルトが足に縋り付いて泣きついてくる。


「ぞんなぁ…こんなのどうやって我々だけで処理しろと…?みずでないでくだざぁぃ…」



(ハァ…やっぱこうなるのか…)


俺とナターシャはその後3日間、事後処理に付き合うハメになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る